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14/32

14:自然


Vatican VCSO headquarters


ベスト16第6回戦、ヘリオス対ニヨルド




二人がいるのは海の上に人工的に作られた足場、50m程の大きな足場。

二人は弾き出された瞬間に確信した、アトランダムにせよ、完全にニヨルドの方に利があると、神徳が海神、つまりヘリオスはニヨルドの手の内ということ。

二人は同時に腕輪に触れた、ヘリオスの得物は片手剣、名はレーヴァテイン、ニヨルドの得物はナイフ、名はティルヴィング。


「ヘリオスには悪いけどコレは僕の勝ちだね」


「俺だってそんな簡単には負けないッスよ、不利だからって負けないのが本当の最強ッスからね」


ヘリオスはニヤリと笑って走り出す、否、技名破棄のベロシティで間合いを一瞬で詰めた、しかしニヨルドもヘリオスの戦いを熟知している、すぐさま飛び上がり、下にいるヘリオスにティルヴィングを投げつけた、ヘリオスはそれを弾き飛ばすと、ニヨルドを追撃するように飛び上がる。

そして二人の凄まじい斬り合い、両手にティルヴィングを持ったニヨルドとレーヴァテイン一振りのヘリオス、遠距離型と近距離型だが力はほぼ互角。

ニヨルドは遠距離型と言えど、恐らく遠距離型の中では接近戦に最も秀でている、それは中距離型とほぼ互角、そして連撃に関してはその身軽さから群を抜くものがある。

二人は着地すると同時に間合いを取った、しかしニヨルドはそれを狙っていた。

着地と同時に大量のティルヴィングを投げるニヨルド、それはお互いがお互いに当たり、完全にヘリオスを包囲した瞬間にヘリオスに襲いかかる、しかしヘリオスは全く動じずに構えた。


「インフェルノ!」


「ツナミ!」


ヘリオスの炎は上昇気流と共にティルヴィングの方向を変えヘリオスを守る、そして勢いを殺さずに足場全体を包もうとするが、凄まじい程の津波がそれを阻む。

お互いが当たった瞬間、火と水は相殺されて大量の蒸気を発生させた、それは二人の視界を完全に奪う結果となった。

蒸気が晴れた時、ずぶ濡れになったお互いが目に映る。


「どれだけ凄い炎だよ?僕の神技を相殺しちゃうなんて」


「俺の炎が消されたのも初めてッスよ、やっぱり海は凄いッスね」


お互いが凄まじい力を持った神技、太陽神が使う火、そして海神が使う水、それは自然界の中では最強クラスの力、無邪気な二人からは想像出来ない力。


「蒸し暑いよぉ」


「火の暑さは大丈夫なんスけど、蒸気の暑さはキツいッスよ」


手で顔を扇いでいるヘリオスとニヨルド、しかしすぐに戦闘態勢に入り、構える。


「まぁ接近戦なら絶対に負けないッスけどね」


「僕も負けないからね!」


「インフォルノ」


ヘリオスがレーヴァテインをぐるりと回すと、レーヴァテインが炎に包まれる。

しかしそれは真っ白な炎、それが意味するのは究極の熱、レーヴァテインが軽く足場に触れると、頑丈な足場は簡単に溶けてしまった。


「それはズルいよ!」


「行くッスよ」


走って近寄って来るヘリオスにティルヴィングを投げつけるが、簡単に溶かされてしまう。

ニヨルドは大量のティルヴィングを投げてあっという間にヘリオスを包囲する、ヘリオスは立ち止まると、軸足だけで素早く回転し、レーヴァテインを振る、その瞬間、ヘリオスを中心に数十メートル程の火柱が出来た、それは軽々とティルヴィングを巻き上げ、溶かす。


「うぅ〜、暑いよぉ」


しかしニヨルドを悩ます事実はそれだけでは無かった、火柱が晴れ、ヘリオスのいた所を見ると、ぼっかりと穴が空いて、そこにヘリオスはいない。

ニヨルドは周りを見てヘリオスを探す、そして気付いた時には遅かった、下から熱を感じて足下を見ると足場が抜けた。

下に落ちると足場の柱から柱同士を繋ぐ骨組みに着地した、目の前にはヘリオスがいる、下に落ちれば海、上に上がるのは難しい。


「こんな戦い辛い場所でやるのは初めてッスよ」


「僕も初めてだよ、まぁ何か海が増えたから有利になったみたいだね」


ヘリオスは今だ燃えているレーヴァテインを手首でグルグルと回しながらニヨルドに近寄る、骨組みを跳ぶように渡ってくるそれは猿のよう。

ニヨルドはティルヴィングをなげて牽制するが、レーヴァテインに当たる頃には溶かされてしまう。


「それずるいよ!当たらないじゃん」


ニヨルドは頬を膨らませながらヘリオスの攻撃を避ける、お互い素早い動きの攻防、猿の様に細い足場に跳び移るヘリオスとニヨルド、とても近距離型対遠距離型の戦いとは思えない、それはニヨルドの強さを示している。

そしてニヨルドはある一つの事に気付いた、それはこの足場が悪く、海の上にあるという本来なら最悪の条件、そう、最悪というのは万人に値する言葉ではない。


「ニヒヒヒ」


ニヨルドはイヤらしく笑う。


「な、何スか?」


ニヨルドは一気に間合いを取った、そして腕を上に向ける。


「ツナミ!」


腕を振り下ろした瞬間、ニヨルドの後方にツナミが発生する。


「一回敗れてる技を使うなんて馬鹿ッスね!」


ヘリオスは一気に炎を強めた、それは周りの鉄骨を溶かしながら肥大する。

そして、ニヨルドのツナミにぶち当たる。


「ファイヤーワークス!ファイヤーワークス!ファイヤーワークス!!!!」


ニヨルドの叫びは津波が蒸発する凄まじい轟音で掻き消され、ヘリオスの耳には伝わらなかった。

膨大な量の水は灼熱の炎により相殺され、お互いは一面の視界を奪いさる蒸気となり、抹消された。

しかしヘリオスの顔は曇る、それはヘリオスの四方八方から聞こえる大量の金属音、同じ神選10階、仲間なら分かるそれが意味する事。

蒸気が晴れた時、ヘリオスが何処に顔を向けても一面のティルヴィング、そう、ティルヴィングによる完全包囲、打開策も逃げ場もない死への包囲網。


「これをちょっと投げればヘリオスはティルヴィングでサボテンになっちゃうよ?」


ニヨルドはティルヴィングをチラつかせながら目を細めて笑う。


「さすがにコレはヤバいッスね。」


ツナミはただの囮、むしろヘリオスに相殺されるのを理解した上の伏線、ヘリオスの気をツナミで奪い、その間にファイヤーワークスを使い、ティルヴィングで包囲した。

そう海神のニヨルド、二つ名は‘反響’、その二つ名は伊達では無かった。


「インフェルノ」


レーヴァテインは炎を帯る。


「最後の抵抗?意味が無いのに。

ファイヤーワークスで大量に放出されたティルヴィングを更にファイヤーワークスで増やす、言わば倍々ゲームみたいなもんだね。

こんな事閃いちゃうなんて僕って天才かも!」


「そんなの良いから早く来ないんスか?」


「じゃあ行っちゃうよ!?」


ニヨルドはティルヴィングを投げた、ティルヴィングは方向を変え始め、暫くすると一気にヘリオスに襲いかかる。













バチカンでモニターを見る阿修羅と帝釈天、阿修羅は先ほどから落ち着きが無く、一緒に見ている帝釈天を飽きれさせるほど。


「もう少し落ち着いたらどうだ?」


「だって兄さん、ヘリオスが………」


「その兄さんというのは辞めろ」


阿修羅は他人の前では帝釈天の事を‘帝釈天’と呼んでいるが、二人だけの時は‘兄さん’と呼んでいる。


「だって兄さんは兄さんじゃない」


「確かにそうだが、如何せん慣れない」


「嫌なら毘沙門天と阿修羅(あすら)に抗議してよ、私達を兄妹にしたのは彼らよ?」


ちなみに本当の両親の事は他人のように扱っている、それはホーリナーになる前にいた養父母が両親であり、実父母は親として見れないからだ。

帝釈天が‘兄さん’なのは阿修羅に兄妹がいないから。


「毘沙門天、やはりいつか殺さなくてはならない相手か」


「今でも恨んでるの?」


「あぁ、私怨で他人の命を踏みにじる程ではないが、奴を許した訳ではない、機会があれば……」


帝釈天は拳を強く握り締めた、それは並々ならぬ恨みの証、しかし今は人並みに仲間というものがいる、一匹狼だったあの頃とは違い、毘沙門天以外に恨みがないためにそこまでの殺意とはならないだけ。


「あっ、ヘリオス!」


阿修羅が叫び、帝釈天がモニターを見ると、ヘリオスがいるであろう炎に向かう大量のティルヴィング。


「終ったな」
















凄まじい金属音、そして数千にも及ぶティルヴィングが雨のように海に落ちる。

炎が晴れた時、身体中にティルヴィングが刺さり方膝をついているヘリオスがいた。


「死ななかっただけ上出来だよ、まぁもう終わりだね」


ニヨルドはヘリオスに近寄った、ヘリオスはニヨルドを上目使いで睨み、肩で息をする。


「やったぁ!コレで終わりだ」


ニヨルドはティルヴィングを握ってヘリオスの首元を掻き斬った、本来ならその瞬間バチカンに吐き出される筈だが、未だに海の上にいる、それどころかヘリオスは揺らいで消えた。

ニヨルドが驚いていると、首筋にひんやりとした何かが当てられた。


「ハァハァ、残念、だったッスね」


上からぶら下がってニヨルドにレーヴァテインを首筋に当てるヘリオス、ヘリオスの体にはティルヴィングが刺さっている。


「まさか陽炎で幻影を作ったの?」


「正解、ッスよ、俺の、勝ち、ッスね」


ヘリオスは肩で息をしながらレーヴァテインに力を入れた。













バチカンに吐き出された二人、無様に二人で顔面で着地する。


『おいおいおい!あんなかっこいい戦いした二人のお帰りがこんな無様だと格好付かないぜ!

でもまぁ!このいつも馬鹿な二人が一度戦いとなると本当に知的になるのはビックリだよな!?

その火対水の戦い!勝者は火を操る‘太陽のヘリオス’だ!

でも忘れるな!遠距離型にも関わらず優勝候補であるヘリオスをココまで追い込めるのはニヨルドくらいだ!二人に拍手を浴びせてやろうぜ!』


ニヨルドは負けたにも関わらず満面の笑みで手を振る、ヘリオスは阿修羅の方へ走って行った、それを皮切りにお姉さん系のホーリナーがニヨルドを囲んだ。


「かっこよかったわよ、ちょっと疲れたんじゃない、コレから癒してあげる」


「私マッサージが得意なのよ?ニヨルド君には個人的にマッサージしてあげたいなぁ」


「まだ子供だけど強さは大人以上なのね、私が本当の大人にしてあげようか?」


「何か楽しそうだね!順番にしてもらいたいな」


後方で明らかに何も知らないニヨルドが良からぬ世界に進みそうなのを、阿修羅とヘリオス、そして帝釈天は苦笑いを浮かべながら見ていた。


「はぁ、助けなくて良いの?」


「何か楽しそうだから良いんじゃないんスか?」


「良くは無いと思うが、楽しみではある」


その塊に近寄る青髪の長髪、彼は得物である大鎌を顕現するとニヨルドを持ち上げた、ニヨルドはそれに驚き、タナトスを見下ろした。


「まだテメェには早ぇよ」


「何だよタナトス!面白そうじゃん!」


「3年経ってからもう一度考えろ、そうすれば俺様の言ってる事が分かるはずだ」


ニヨルドを始めお姉さん系ホーリナーはブーブー言っている、その光景を見て阿修羅達3人は絶句した。


「はぁ、タナトスが……」


「あのタナトスッスよね?」


「あり得んな」


そしてタナトスが向かった先には緊那羅がいた。


「はぁ、そういう事」


「なぁんだ、つまんないッスね」


「尻に敷かれたか」


タナトスは緊那羅の犬と化していた。

ベロシティ

光速

自らが光の速さで一瞬だけ動ける、ヘリオスや阿修羅は技名を言わずに、音速にも匹敵するような速さを出せる。


インフェルノ

烈火

炎を顕現する神技、特にヘリオスは膨大な炎により全てを包み込むように使い、祝融は得物に纏わして溶かす目的で使う。


ツナミ

津波

どのような場所からでも津波を出せる神技、自然系の神技の中でも破壊力、影響範囲共に最強を誇る。


ファイヤーワークス

花火

自身から得物を花火のように四方八方に撒き散らす神技、ニヨルドが使った得物から出すのは昇華型と言えよう。

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