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13:負けない理由

今回から文がマイナーチェンジいたしました。

神技に今までは日本語が付いていましたが、今回からは英語表記のみになります。

とりあえずあとがきに技の解説などを載せておきます、文中ではなるべく分かり易くしていますが、読みづらい点などがありましたら気軽にメッセージを下さい。


Vatican VCSO headquarters


ベスト16第5回戦、モリガン対コアトリクエ


そこは広大な荒れ果てた大地、枯れた木々、ひび割れた大地、空気もお世辞にも良いとは言えない、空は雲が光を遮り暗い、その陰湿な環境が嫌に似合っているモリガン、そして逆に一輪の花のように美しいコアトリクエ、対なる二人、唯一の共通点はお互い中距離型という事。

モリガンの手には鎖から繋がる巨大な鉄球、名はシヴァ、モリガンはそのシヴァの上にあぐらをかいて座っている、コアトリクエの手には棘の付いた鎖の先端にナイフ、名はローズテイル、凛と立つコアトリクエは美しいの一言。

しかし二人の間にあるのは殺気、肌を刺すような凄まじい殺気を放つ二人、いくつもの死線をくぐり抜けて来た二人の放つ殺気は並ではない、モニターを通してバチカンにいるホーリナーにも伝わる程。


「君、辞退すれば?」


「何故でしょうか?私は貴殿のような“お子様”に負ける程弱くはありませんよ」


モリガンの眉尻がピクリと動く、その幼く美少年という形容が似合うモリガン、その顔が若干歪んだ。


「まぁ君みたいな“オバサン”からしたら僕はお子様だろうね」


今度はコアトリクエの眉尻がピクリと動いた、お互い超低レベルなけなし合い。

そして何も言わず、何の前触れもなく二人は動き出した。

先に攻撃に出たのはコアトリクエ、ローズテイルのナイフをモリガンに向かって放つ、しかしローズテイルはシヴァの鎖に巻き付いてしまう、モリガンはいつの間にか常人のそれを遥かに超えたジャンプ力で飛び上がる。

それはグラビテーションを使い、重力を軽くした結果、そしてモリガンが腕輪に触れると、ローズテイルに巻き付いていたシヴァが消え、モリガンの手元に現れた。


「潰れちゃえ」


モリガンがシヴァの上に乗った瞬間、常軌を逸した速度で落ちるモリガンとシヴァ、今度は重力を強くしたからだ。


「厄介ですね」


モリガンはシヴァを投げ飛ばし、フワフワと落ちる、シヴァは凄まじい速さで地面に突き刺さった、それは隕石、コアトリクエは風圧で体勢を崩してしまった。


「しぶといね、君」


モリガンは着地すると走ってコアトリクエに向かい、勢いを殺さず蹴り飛ばした、何とか腕で防いだが、地面に体を擦り付ける形となった。

擦り傷を作っているコアトリクエ、無傷のモリガン、やはり神選10階にはかなわないと誰もが思ったその時。


「油断大敵ですよ」


モリガンが気付いた時には遅かった、ローズテイルが地面から飛び出し、一瞬の後にモリガンの肩を貫く。


「君、凄いムカつくね」


モリガンが無理矢理ローズテイルを引き抜くと、おびただしい量の血が流れ出す、それは棘により抉るように作られた傷故、まともな切り傷ではないために痛々しい傷になってしまう。


「私のローズテイルからは何があっても避けられませんよ、諦めるのは貴殿の方じゃないですか?」


「こんなの2度も当たるのは馬鹿だけじゃないのかい?」


「ではダーリン以外は全て馬鹿になりますね」


コアトリクエはローズテイルを地面から引き抜き、再び振るうと刃はモリガンに向かう。


「単調だね」


モリガンは軽々と横に避けた、しかし何故か生きてるかのように鎖が横に動く。


「気持ち悪い動きだよ」


モリガンは下をくぐりながら避けた。


「この程度じゃないですよ?」


モリガンが寒気を感じてローズテイルのナイフを探すと、モリガンにまっすぐ向かって来ている、それは明らかに方向転換した軌道。


「クソっ」


モリガンはギリギリで避けたと思ったが、ローズテイルが若干軌道を変えたせいで体に痛々しい切り傷を作り、ローズテイルは地面に刺さり止まった。


「的が小さいのでなかなか当たりませんね」


「オバサンのしつこさにビックリしたよ」


再びけなし合い、しかしモリガンのは明らかな強がり、内心焦っていた、確かにコレを避けきるのはダグザでもない限り難しい、自由自在に動け、尚且つ鎖とナイフ、どちらにも当たれないのは辛い。















大画面モニターの前に一人で佇むケツアルコアトル、そこを通りかかったダグザとタナトス、タナトスは肩を組むように横に並んだ。


「テメェの女はどうよ?」


「圧していると言えば圧していますが、モリガンさんが慣れてきたらどうなるかは分かりませんね」


「意外だな、貴様があの支部長の勝ちを公平に見るなんて」


「ハニーは負けませんよ」


ダグザとタナトスは顔を見合わせて笑う、それは何か一つの確信があるから。


「ちなみにモリガンは強い、奴の神技は地味に見えて強力だからな」


「俺様でもモリガンと戦うのはごめんだぜ」


「ハニーの攻撃は絶対に避けられないのに、ですか?」


「貴様もそうだが、それ故の慢心だ、奴のもっとうは肉を斬らせて骨を断つ、余談だがアイツが無傷で帰る事はあまりない」


「それもまた一興ですね、若い彼がどこまで出来るのか楽しみです」


「大事な彼女が負けても泣くなよ」


タナトスとダグザはそのまま去って行った、ケツアルコアトルは内心コアトリクエの勝利を確信していた、それはまだコアトリクエが神技を使っていないから、それにローズテイルは毒のようにじわじわと体力を奪う、長期戦になればモリガンに勝ち目はない。












徐々に、徐々に切り傷を増やしていくモリガン、明らかに圧されている、真っ白だったローブはボロボロになり、血で汚れて見るも無残な姿になっている。

一方のコアトリクエは最初の蹴りのみで、後は無傷、つまり擦り傷のみとなっている。

モリガンの明らかな劣勢にも関わらず、モリガンの嘲笑うような笑みは消えない、コアトリクエはそれに恐怖すら覚えた。


「ちょっとしんどくなってきたね、傷口が塞がらないから意識が飛びそうだよ」


「“鎖蛇”の意味分かって貰えましたか?」


「これじゃあ毒蛇じゃないか」


そう、鎖蛇とは蛇のような動きをする鎖ではない、毒蛇のようにじわじわと相手を弱らせる、つまり消耗戦を意味しているのだ。

コアトリクエはもうそろそろと、地面にローズテイルを突き刺した、こうすれば得物が隠れる故に避けづらい、むしろ避ける事は不可能。


「じゃあ君は“道化”の意味は分かったかい?」


「何がですか?」


「グラビテーション」


「――――!?」


モリガンは重力をかけた、対象はモリガンとコアトリクエの間の地面、それによりローズテイルは圧力で動かなくなる。


「ピエロ、それは玉乗りじゃなくてポーカーフェイスだよ」


モリガンはシヴァを再び権限して根元を持つ、完全に意表を突かれたコアトリクエは判断が遅れてしまった。

モリガンはシヴァをバットを振るようにコアトリクエに打ち付けた、さすがにコレは防ぎきれず、派手に吹っ飛ぶコアトリクエ。

モリガンは圧されていたわけではない、地面にローズテイルが潜るただ一瞬、それだけを待っていた、さらにそれを悟られないためにも、わざとローズテイルにかすっていた。


「やり、ますね」


ボロボロになったコアトリクエが立ち上がる、骨はいくつ折れたか分からない、傷口からおびただしい量の出血、たった一発で形勢が逆転してしまった。


「ただ僕も少し遊び過ぎたみたいだね、思ったより出血が激しいよ」


「………遊び、ですか」


コアトリクエのプライドがズタズタになった、こんな子供に遊ばれていた、今までのはピエロが用意して劇の一つと言わんばかりの表情、立っているのがやっとのはずなのにその不適な笑み。


「悔しいですね、貴殿のようなお子様に本気を出すのは」


「安心しなよオバサン、僕の若い力が勝っただけなんだからね」


「私がいつ負けを認めました?」


コアトリクエは地面にローズテイルを突き刺した、モリガンは警戒する、もう一度あの手を使うわけがない、つまり、まだ何かを残しているという事。


「フロッグ」


「グラビテーション」


モリガンが二人の間に重力をかけたにも関わらず、大量のローズテイルが剣山のように地面から突き出て来た。


「本当にしぶといね」


モリガンは重力をかける対象を変える、ローズテイルを自分から逸らすように重力を操作するが、自由自在に曲がりながら大量のローズテイルがモリガンに向かって来る。

モリガンは回避行動とグラビテーションを使いながらなんとか避けるが、この量はさすがに不可能、徐々に動きが鈍り、最終的には動けなくなりその場に片膝を付いてしまった。


「これで終わりですね」


ローズテイルはモリガンの上空で一つに纏まると、バラの花のようになり、モリガンへと急降下する。

モリガンはゆっくりと立ち上がると再びあの嘲笑うような笑みを浮かべた。


「どっちが先かな?」


コアトリクエが慌てて上を見るとシヴァがそこにはあった、お互い回避行動を取るだけの余力は残っていない、モリガンはローズテイルを避けるのに、コアトリクエはローズテイルを操るのに体力を使ってしまったからだ。


「終わりみたいだね」


「そうですね」


ローズテイルとシヴァ、ほぼ同時に落下してきた。


















バチカンに吐き出されたモリガンとコアトリクエ、そして地響きのような歓声、お互いどちらが勝利か分からない、それはお互いの健闘を讃える歓声だ。


『すんっっっっっげぇ戦いだったぜ!まさに中距離型の戦いがここにあり!お互い最後まで死闘を繰り広げた結果!判定を待つという凄まじい戦いになった!

だがコレは勝つか負けるか!生きるか死ぬかの戦いだ!ドローなんて許されねぇ!勝者と敗者だけしか残さねえ戦いなのさ!

早速お待ちかねの判定結果を見てみようぜ!この熱い戦いに本当のピリオドを打とうじゃねぇか!』


全員がモニターを見る、そこには徐々にモリガンに迫るローズテイル、コアトリクエに迫るシヴァ、そのスピード、距離共に全く同じと言っても良い程。

そしてゆっくりと落ちる二つの得物、最終的に動画は静止画へと変わる、そこには全く同じ高さにあるシヴァとローズテイル、しかしコアトリクエの方が身長で勝るため、シヴァが先にコアトリクエに当たっている。


『コレはモリガンの勝利だぁ!!まさかこんなところで小さいのが役にたつとはなぁ!喜べモリガン!

ベスト16!第5回戦!勝者はモリ――――』


「ちょっと待てよぉ!!」


熱血司会を遮ってモリガンが叫んだ。


「こんなのドローじゃないか!もう一回やらせろ!僕はこんなの勝ちって認めない!」


『おいおい、素直に認めろよ、チビが得って事を示せたんだからよぉ』


「君、チビチビうるさいねぇ!ぶっ潰すよ!?」


モリガンは腕輪に触れてシヴァを顕現しようとしたその時、何故か浮遊感に襲われた。


「ほら、テメェも騒いでないで勝ちを認めろよ」


それはタナトスが片手で軽々と持ち上げたからだ、隣にはダグザもいる。


「離せぇ!僕は認めない!」


「小さいのを認めたくないのは良いが、余計に虚しいだけだぞ」


モリガンは押し黙る、若干目に涙を浮かべながら納得した。


「あら、可愛いじゃないですか」


コアトリクエの挑発に涙目で殺気を放つが、それは可愛いとしか言えない。


「ほら行くぜ、おチビさん」


「メルクリウスみたいに需要があるんだから気にするな」


「確かに小さい美少年は母性本能をくすぐりますからね」


明らかにモリガンを馬鹿にするタナトス、ダグザ、コアトリクエの3人、そして…………。


「君達全員ぶっ潰す!!」








グラビテーション

重力

対象物に対する重力を重くしたり軽くしたり出来る、その対象物に際限はなく、物質であれば全てが可能対象物となる。



フロッグ

剣山

得物を地面に突き刺し、地面から剣山のように得物が突き出す。

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