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12:最強の剣士


Vatican VCSO headquarters



ベスト16第四回戦、緊那羅対ケツアルコアトル




緊那羅とケツアルコアトルは山の拓けた土地、そこは雲の上、地面は石が転がっていて足場が悪い、下は崖のように急で落ちれば死が待っている。

そう、戦場はまさに最悪、しかしココにいる二人はそんな修羅場をいくつもくぐり抜けて来た、剣速は誰もが認めるホーリナーNo.1の緊那羅、避けるのに関してはホーリナーNo.1のケツアルコアトル、全く正反対の二人、だからこそ面白いこの戦い。

一度でも攻撃が当たれば緊那羅の勝ち、全て避けきればケツアルコアトルの勝ち。

二人はどちらからともなく腕輪に触れた、緊那羅の得物は納刀された刀、名は羅刹、ケツアルコアトルの得物はサーベル、名はウェミクス。


「その剣速、楽しみですね」

「私の剣速は並じゃないわよ、避けられるものならどうぞ」


緊那羅は走り出した、ケツアルコアトルは全く構えていない、緊那羅はケツアルコアトルの前で砂利を巻き上げながらとまる、そして抜刀する音が聞こえた、そして気付いた時には納刀されている、その速さは見えない程、しかしお互いニヤリと笑っている。


「やるじゃない」

「貴女もなかなかですね」


その瞬間ケツアルコアトルの服が所々切れ、最後に頬に一筋の切傷が出来、赤い血が静かに流れ出す。

そう、ケツアルコアトルはあの目にも止まらぬ緊那羅の剣撃を見切り、ギリギリで避けたのだ、しかも傷の数を見る限り一回ではない、そして緊那羅も過去に傷を付けた者は誰一人としていないと言われたケツアルコアトルに傷を付けた。

お互いその力は確かなものだった、しかしそれを意図も簡単に打ち崩す相手、自然と本気にならざるおえなかった。

ケツアルコアトルはウェミクスを目線まで持ち上げ、腰を沈める、緊那羅は抜刀して左手に逆手で鞘を持ち、右手にはしっかりと羅刹を握る。


「久しぶりね、この型を使うなんて」

「私もですよ、フェンシングと剣道、お互い同じ剣術であれど国に合わせて昇華された剣術、どちらが本物の剣士かはっきりさせましょう」

「面白い事言うじゃない、まぁ確かに一理あるわね」


一触即発、どちらかが動けば始まる、しかしお互い隙がなくあと一歩が踏み出せない。

その時、どちらかの足下で砂利を踏む音が鳴った、その瞬間一気に走り出す二人。

緊那羅の上段からの振り下ろしを避けるケツアルコアトル、勢いを殺さずにそのまま緊那羅の背後をとった、そして一旦間合いから出た瞬間、一気に止まって一気に踏み込むケツアルコアトル、しかし緊那羅は全く動じず、振り向き様に鞘でウェミクスを弾く、そのまま横薙に羅刹振るうが避けられてしまう、ケツアルコアトルは流れるように間合いを詰めると、突きを放つ。


「遅いわね!」


瞬時に鞘を袴に刺し、羅刹を両手で握った。

上段から全力で振り下ろしてウェミクスを弾く、そのまま素早く切り上げた。


「甘いですね」


ケツアルコアトルは流れるように横に避けるとウェミクスを下から掬い上げるように振る、緊那羅は上体を後ろにずらすが間に合わず、頬を斬られてしまった。

緊那羅はバックステップで間合いを取り、鞘を左手に握った。


「へぇ、なかなかやるじゃない」

「貴女もなかなかですよ、実に速い切り返しでした」

「コレは‘燕返し’っていうのよ、何なら他のも見せるけど、いかが?」

「それは実に興味深いですね、ぜひともお目にかかりたい」

「後悔するわよ」


そして緊那羅は走り出した、ケツアルコアトルは緊那羅が最後に言った言葉が聞こえず、意識をそちらに取られてしまったが、戦いに支障が出るほどではない。

緊那羅は鞘を再び袴に刺すと、羅刹を両手で握り切っ先を下に向ける。


「下段ですか?という事は突きですね?」


緊那羅は軽く口角を上げた、それには苦笑いというものも含まれている。

そして緊那羅は一刀一足の距離に入ると沈めていた腰を若干浮かせる、そして思いっきり右足を踏み込む、そのまま下腹に素早い突きを放つ、ケツアルコアトルは軽々と横に避けた。

しかし緊那羅の攻撃は終わらない、羅刹を軽く引くと再び右足を踏み込み、左手を羅刹の柄を押すように当てる、そのまま腰をグッと沈めて羅刹を緊那羅の目線に合わせ、刃を上に向けてケツアルコアトルの胸部に突きを放つ。


「くっ、速い!」


ケツアルコアトルはウェミクスで羅刹を弾く、緊那羅は再び羅刹を引くと左手を完全に離して羅刹を右手だけで持つ、そのまま大きく踏み込んで半身になりながら首元に突きを放った。


「ハァっ!」


ケツアルコアトルは避けようとしたが、肩口を深く切り裂かれてしまった。


「コレは‘三段突き’よ」

「やりますね、この私に傷を付けるなんて」

「これだけじゃないわよ、私、アンタと同じで避けるのも得意なの」

「それは面白い、試してみたいですね」


ケツアルコアトルはウェミクスを構える、緊那羅は切っ先を自分の目線に持って来て、正眼の構えにしてはやや高い構えを取る。


「行きますよ!」


ケツアルコアトルは踏み込んで一気に間合いを詰める、そのまま無駄のない動きで緊那羅に突きを放つ。

しかしその突きは牽制程度、緊那羅が軽く弾けるレベルのものだ。

だが緊那羅は羅刹を傾けてウェミクスを弾こうとはしない、そしてウェミクスが緊那羅に当たる寸前、目の前から緊那羅が消えた。


「なっ!?」


そしてケツアルコアトルが気付いた時には緊那羅に腹を殴られていた、緊那羅は寸前で深く沈み、そのまま胴を打ち抜く容量で殴ったのだ。

つまり、羅刹でケツアルコアトルを殺せたという事。


「まさか、避けるというのは、‘音無し剣’の、事ですか?」


ケツアルコアトルは腹を抑えて苦悶の表情を浮かべながら立ち上がる。


「避ける事に関しては何でも知ってるみたいね、でも‘音無し剣’は避けるんじゃない、得物同士を当てないの、つまり、受け太刀すらさせない、まさに戦い自体を支配する最強の技よ」
















バチカンでは出店で食べ物を買って来た阿修羅とヘリオスとタナトスがいる、モニターでは緊那羅とケツアルコアトルが戦っている、しかし足音と風斬り音しか聴こえない静かな戦い。


「凄い戦いッスね!音が鳴ってないッスよ!?」

「まるで踊ってるみたいだな」

「緊那羅は剣士としてなら最強よ、60に及ぶ流派、100に及ぶ技を熟知してる、緊那羅と同じフィールドで真っ向勝負したら誰も勝てないわよ」


それがホーリナー最強の剣士、阿修羅が何とか勝てるのは阿修羅の得物が長いから、あれだけの長さに加えて我流の剣筋は緊那羅からしたら最悪の相性。


「何かタナトス嬉しそうッスね?」


阿修羅がタナトスを見ると何故か興奮している。


「次に当たる相手がコイツだと思うと、いてもたってもいられないんだよ」

「まぁお互い神技を使って無いから何とも言えないけどね」

「そういえばケツアルコアトルがどんな神技使うか気にならないッスか?」

「確かにな、でも今の状況を見る限り、緊那羅が戦いを支配しているように見えるけどな」
















一見すれば緊那羅が戦いを支配しているように見える、受け太刀すらさせていない、しかしケツアルコアトルに当たっていないのもしかり、お互い一進一退の攻防という事。


「ラチがあかないですね」

「そうみたいね」


二人は同時に間合いを取った、緊那羅は一度納刀する、そしてケツアルコアトルは………。


「ディスアピアランス【雲隠】」


その瞬間辺りに雲が立ち込める、凄まじい濃霧、視界が殆ど無くなるような雲、そして緊那羅はケツアルコアトルを見失ってしまう、しかし神技発動者であるケツアルコアトルには手に取るように、目で見ているかのように緊那羅の居場所が分かってしまう。


「コレをやるのは何年ぶりでしょうか、久しぶりです、ココまで本気になったのは、しかしコレで貴女も終わりです」

「そんなベラベラ喋って良いの?」


緊那羅は納刀した羅刹の鞘を持ち、鍔に親指をかける、そして親指で羅刹を弾き飛ばした、鞘走りを利用して羅刹は弾丸の様に放たれる。


「甘いですね」


ケツアルコアトルがいつの間にか後ろにいた、音からの位置把握は人並み以上に出来るはずの緊那羅、緊那羅の耳が確かならケツアルコアトルは全く動いていなかった。


「クソ!」


緊那羅が避けるのと同時に肩口をウェミクスで斬られる、しかし緊那羅は瞬時に羅刹を顕現してケツアルコアトルを斬った。


「無理ですよ」


確かにケツアルコアトルを切り裂いた、肩口から脇腹にかけての確かな一閃、しかしケツアルコアトルは雲のように霞んで、消えてしまった。


「まさか、あんた自身が雲に?」

「ご明答、今の私は無敵、貴女に勝目はありませんよ」


そして再び緊那羅の後ろに現れるケツアルコアトル、今度は脇腹を刺される、緊那羅はケツアルコアトルに斬りかかるが、やはり雲の様に消えてしまう。













バチカンにいる阿修羅達はケツアルコアトルの勝利を確信した、現れては斬られる緊那羅、緊那羅に成す術はなく、無情にも体を切り裂かれていく。


「…………緊那羅」

「ケツアルコアトル強いッスね」

「アイツも終わりだな、アレじゃあどうしようもねぇ」


そう、誰もが緊那羅の敗北を予想した、否、緊那羅でなくとも勝利は難しい。













緊那羅はケツアルコアトルを斬ろうと、必死になるが、相変わらず斬れない、羅刹が当たらない、斬れども斬れども雲が晴れるのみ。


「クソ、雲と一体化されたらどうしようもないじゃない」

「さて、もうそろそろ終わりにしてあげましょう」


緊那羅はボロボロになりながらケツアルコアトルの気配を探す、雲の中のどこかにいるであろうケツアルコアトルを、そう、雲に…………。


「そういう事、『かくれんぼ』ね、それなら………」


緊那羅は羅刹を納刀して地面に突き刺す、そしてニヤリと笑った。


「シンパシー【共振】!」


その瞬間、凄まじい音の波が辺り一帯を覆う、それはまるで衝撃波のよう、緊那羅の耳からは鼓膜が破れて血が流れ出す、しかし、あっという間に雲は衝撃波により消え、耳から血を流したケツアルコアトルが現れる。


「見つけた」


緊那羅の声はお互い全く聞こえていない。


「ディスアピア――――」

「ベロシティ【光速】!」


ケツアルコアトルが再び神技を発動する前に緊那羅が一閃と化し、ケツアルコアトルの横を通りすぎた。



















バチカンに吐き出された二人、当然の如く耳は確りと聞こえ、会場の歓声が確りと鼓膜を揺らしている。


『終了だぁ!この凄まじい剣士同士の戦い!勝者は侍の緊那羅の勝利だぁ!でもお互い剣士としては申し分ない!むしろ今回は神技で決まった!つまり剣士としての決着はついていないはずだ!』


ケツアルコアトルは緊那羅に歩み寄る、緊那羅は自然とは笑みになり手を差し出した、ケツアルコアトルも笑顔になって手を差し出した。


「久しぶりに痺れる戦いをした、ありがとう」

「私こそ己の力に溺れていました、剣士に傲りは命取りですね、貴女のお陰で再確認しました、次に剣を交える事があるのなら、充分精進した私が今回の結果を覆すでしょう」

「一人だけが精進してるわけじゃないのよ、追われてる方が緊張感があって私は好きだからね、まぁ次は更に楽しく戦えると思うとうずくわね」


二人は手を離すとお互いに帰るべき場所に向かって歩を進める、それはお互いを認めた証、そして強き剣士を見つけた喜び。

更新が大変遅れてしまい申し訳ありません。

なんか小説を書き溜めしておかないと怖い性格でして。

後は色んな布石を散りばめようと練っていたらそれだけで満足してしまい、何故か執筆しないという愚かな作者です。


一応ダラダラと書き続けます、次回作で完結なので絶対に終わらせます!

なので最後までお付き合い下さい。



あと、メッセージなど読んでくれてる人の声が頂けると作者の意欲が増します、良かったら何かお言葉が頂けたら嬉しい限りです。

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