反省会&振り返り
倒れた俺は地面に付く前にブレストに受け止めて貰い、上級マナポーションを飲んだことによってすぐに回復したが頭痛はすぐには消えてくれない。眉間に皺を寄せながらブレストにおぶってもらい結界の外に出ると、凄く心配そうにテセウが駆け寄ってきた。そして、用意された椅子に座って観戦していたリリー夫人も駆け寄って来てくれた。
「クロガネ、大丈夫か!?」
「おー魔力切れしただけなんで大丈夫っすよー」
「大丈夫そうな顔をしていないが」
「頭痛が消えなくてな」
「それならば・・・・アイシアのお茶を持ってきて」
「畏まりました」
リリー夫人は俺の症状を聞くと侍女に指示を出し、俺をブレストから受け取りメイド達に地面にラグを敷かせ寝かせる。遅れてララ様とルウ様も来てくれた。
「少しの間横になっておいた方が良いかと」
「クロ、びょうき~?」
「大丈夫~?」
「おう、少し休めば治るから大丈夫だぞ」
魔力切れからは回復しているしあとはこの頭痛が無くなればすぐに動けるようになる。横になって楽な姿勢になったのを見た後リリー夫人は立ち上がると、気まずそうに立っているブレストとシュナイザー様に向き合う。
「貴方達は何をやっているでしょうか?」
「いや、その」
「ついと言うか」
「ブレスト様はまだお若いですが、旦那様はもういい大人なのですよ。それなのに戦いの熱に乗せられ模擬戦であることも忘れあのような戦いをするとは何事ですか?」
「あ~・・・えっと」
「ブレスト様も強大な力と言うの周囲に多大な影響をもたらすことを理解しているはずですよね?三級冒険者であろうお方があのような力をこのような場所で使うなんて言語道断です」
「・・・・すみません」
「そもそもこの模擬戦はテセウの為に開かれたものだと言うことお忘れのようでしたね。お二方共自分の力を遠慮なくぶつけることが出来ることが、楽しかったようですけどそれで周囲に迷惑を掛けるなど領主と三級冒険者がするようなことではありません」
「「はい・・・・すみません」」
「全くこんな小さな子が止めに入らなければ、止まらないなど頭を冷やしなさい」
リリー夫人は淡々と二人に詰め、反論する余地のない二人は肩身が狭そうに頭を下げ大きい筈が小さく見えてしまう程落ち込んでしまった。その様子を見たリリー夫人は溜息を吐き、丁度やって来た侍女から水筒のような物を手渡されると俺の横に座った。
「クロガネ様、お茶は飲めますか?」
「えぇ、大丈夫です」
「それならこちらをお飲みください。頭痛によく効くお茶です」
「ありがとうございます」
俺は体を起こし水筒を受け取り口を付ける。中に入っていたのは、とても不思議な飲み物で薄い水色がかった爽やかでミントのような味がするお茶を飲み込むとスーッと、清涼感が全身に行き渡り頭が冷え痛みが和らいでいく。
「凄いですねこれ・・・・何のお茶なんですか?」
「アイシアと言う綺麗な水色の花を咲かせる植物の葉を使ったお茶です。アイシアは食べると体を冷やし鎮静作用を持つ植物で、お茶にすると不思議な味わいですが痛みによく効くのです」
「そんな植物があるんですね・・・・」
「クロガネ、もう大丈夫なのか?」
「大分良くなりましたよ」
眉間の皺が少なくなったのを見て心配そうにテセウが俺の顔を覗き込む。
「リリー夫人ありがとうございます」
「いえいえ、元はと言えば私の旦那様が起こしたことですからお礼は不要です」
そういって凛とした顔立ちでシュナイザー様を凍えるような視線を向けるリリー夫人。それを見たシュナイザー様はビクッと肩を揺らし目に見えてしおらしくなってしまった。
「その~俺もやり過ぎたというか」
「私に言わずクロガネ様に言ってください」
「はい・・・・本当にすまないクロガネ殿やり過ぎてしまった」
「まぁ本気になる可能性を知っていて二人を戦わせましたから、そんな気にしないでください」
「クロガネ、本当にすまない!」
シュナイザー様に続いてブレストも俺の横に座ると頭を下げてきた。俺はブレストの頭に手を載せ
「珍しくしっかりと戦ってたな。新しい魔法が見れて俺は結構楽しかったぜ。シュナイザー様の動きも参考になる所が沢山あったし悪い事ばかりじゃないからそんな謝らなくて良いですよ」
「クロガネ・・・・」
「後で報酬を増やしておこう」
「はぁ、ご本人が許されていますので私はこれ以上何も言いませんが、しっかりと反省してくださいね」
リリー夫人は最後に一睨みすると、いつもの穏やかなリリー夫人へと戻った。切り替えの速さ凄いな~あ、感心してる場合じゃ無かった。しっかりと記憶に残っている間に振り返りをしないとな。
「さて、大分頭痛は収まりましたから、忘れないうちに今日の感想をテセウに聞きましょうよ。今なら戦った本人達が全員揃ってますから分からなかったことや知りたい事が聞きたい放題ですよ」
「それは良いな。おっと、その前に」
復活したシュナイザー様は集まっている観客達に堂々と
「これにて今日の模擬戦は終わりだ。各自持ち場に戻るなりして解散するように」
「「「「「はーい」」」」」
「これで良しっと」
控えていた従僕たちはシュナイザー様とテセウ、そしてブレストが座るためのラグを地面に敷き各自座り今日の振り返りが始まった。
「まずは、クロガネ対俺の試合から聞くとするか。テセウどうだった?」
「とても素晴らしい戦いだと思いました。ブレスト殿に常に解説をして貰った故だがクロガネの戦い方がどのようなものなのかがしっかりと分かりましたし、的確に隙をつくり魔法やあの動きは相手にする厄介ですね。こうやって俯瞰的に見ている俺ですら途中で気配を消したクロガネを見つけられませんでしたし、自分の実力不足を感じました」
「戦っている俺ですら一瞬見失うくらいには凄いからな」
「それと、クロガネの手数の多さに驚きましたね。次から次へと新しい魔法を使い通用しなければ少し変更を入れ試す。そして、相手の動きに合わせた攻撃手段。俺との模擬戦では全く本気を出していなかったのだな・・・・」
「実戦では不意打ちに搦手、罠に毒にと何でもござれだからな」
「気配を消した攻撃と言うのがどれほど恐ろしいのか理解できました」
「実戦で一番怖いのはクロガネ殿みたいな気配を完全に消し致命傷となる一撃を叩き込んでくる奴だからな。乱戦の時にあんなのやられたら、たまったものじゃねーよ」
俺の戦いは手数と速さが売りだからな。それに、一切気配を悟せず一瞬の内に首を落とすのも結構得意だぜ。
「正々堂々とした一体一の状況なんて実戦じゃほぼ無い。常に相手の動きを警戒し周囲を警戒し、こっちを騙す攻撃に気を付けなきゃいけないってのが伝わった様で良かったぜ」
「クロガネは罠をいくつも作っていたな・・・・よくあの視界が晴れた場所で仕掛けられるものだ」
「魔法に混ぜて闇魔法で気配を消してますからね」
「そうやって仕掛けているのか」
「最後の鎖の魔法は中々だったぜ」
「戦いの中で沢山の魔法が見れたが・・・・あの宙に浮く魔法はどうやっているんだろうか」
「あれは浮いてるんじゃなくて宙を歩いてるんですよ」
「歩く?」
俺は立ち上がり風の足場を作り出すと、テセウの手を引き足場に乗せてあげた。
「なるほど、風の障壁のようなものがあるのか」
「そうです」
「それ便利だよな~俺も風属性があれば絶対習得する」
「空を歩けるようになったシュナイザー様とか恐ろしいな・・・・俺の空中での素早い方向転換や軌道の変更はこれを使ってるから出来ることなんです」
「ふむ、あの魔法の矢の操作はどうやっているんだ?」
「あれは普通に全ての矢を意識化に置いているだけですよ」
「それは・・・・普通なのか?」
「俺も驚いたがあの速さでよく制御できるよな器用なもんだぜ」
「そうですか?ブレストも同じような事してますし」
「それはお前らが特殊なだけだからな」
「え~」
数が増えると大変にはなるが魔法の一つ一つを制御し操るのはそこまで難しいとは思わないんだよな~俺とブレストは同じ気持ちだったか顔を見合わせて首を傾げるのだった。
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