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最後の地球人♂、仙女や魔女と月の海を航る ~ルナマリアノーツ~  作者: 和泉 健星
3章 混沌からの侵略者 ―遥かなるトゥオネラ―
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余談 『どんなトコが好きなの?』

オマケ。元日更新ということで主人公の巫女さんフェチに関する話です。あくまで余談なのでいつもより短め&しょーもない話となっております。 




「あっ! おかえりなさいませ、イサリさま☆」


 果樹園を後にし、マリナの家の近くの泉で入浴を済ませ、一足先に『トゥオネラ・ヨーツェン』へ戻ったボクを真っ先に出迎えてくれたのはルーナだった。


 甲板デッキの片隅で淋しそうに夜の海を眺めていた金髪の幼女がこちらに気付いて顔を輝かせる様子、駆け寄ってくるいじらしい姿に、思わず頬が緩んでしまう。


 ホント可愛めんこいなぁ、このコ。


「ただいま、ルーナ」


 ぴょんと跳ねるようにこちらの胸に飛び込んできた十歳の令嬢を優しく受け止める。


「カグヤちゃんとツバキさんはまだマリナさんのお家ですか?」


 ボクの首に両腕を回し、ぶら下がるようにすがり付いたまま、可愛らしく小首を傾げるルーナ。


 なんか、ここのところ朝から晩まで伐採作業にかかりきりであまり構ってやれなかったせいか、このコの甘えん坊さんぶりに拍車が掛かっている気がする。


 今日は特に距離が近いような……。


 まあ、いいんだけどね別に。


 流石にあの『セイラー服のえりがついたスクール水着モドキ』で抱き着かれるのはちょっとアレだけども、このコ、ここに辿り着いてからはツバキが用意してくれたディアンドルみたいな衣装を常用しているし。

 いや、相手は十歳の女の子だし、如何いかなる格好で抱き着かれようとも邪念を抱くことはないけれど……ほら、周囲の目がね。


「カグヤたちなら今お風呂に入ってるよ。女性のお風呂は長いからね、ボクだけ一足先に戻ってきたんだ。……もしかしてルーナ、ずっと甲板ここで待っていてくれたの?」

「はい! 少しでも早くイサリさまにお会いしたくて」

「そっか。ありがとね。……でも、風邪を引いちゃったら大変だから、次からはちゃんと船内なかで待ってるんだよ?」

「ごめんなさい……お訊きしたいことがあったものですから」

「訊きたいこと?」


 はて。なんだろう?


「昼間イリヤさんがおっしゃっていたのですけれど、」

「イリヤが?」

「なんでもイサリさまの幼馴染に、お家が神社な娘さんがいらっしゃるとか」

「ああ……うん。幼馴染というか、従妹いとこだけどね」


 それがどうしたというのか。


「イサリさまは毎日その従妹さんのお家、神社にびたっていたと聞きました」

「い、入り浸…………いや、まあ、そう言えないこともないけども。でも、叔父さんと叔母さんに心身を鍛えてもらうためであって、別に遊びに行っていたワケじゃないよ? ボクが従妹目当てに入り浸っていたみたいな言いかたはヤメてほしいな」


 あと、確かに平日は毎日学校帰りにお邪魔していたけれど、休日は家業……漁の手伝いがあったからお邪魔しない日もあったし。


「でもイリヤさんが言うには、イサリさまと従妹さんはとても仲が良かったとのことですが。連日イチャイチャされていたと聞きましたが」

「イリヤとは一度膝を突き合わせてじっくり話し合う必要があるな」


 何ルーナにあることないこと吹き込んでくれてんの、あのヒト。


「それと、」

「?」


 他にも何かあるというのか。


「イサリさまは巫女さんたちによく鼻の下を伸ばしていたとも聞きました」

「!?」

「イリヤさんが仰ってましたよ。『イサリはね、修練が終わったあと巫女さんにマッサージしてもらうのが大好きだったのよ。きっとあのマッサージもイサリが従妹の家に入り浸っていた理由のひとつだったんでしょうね』、と」

「………………」

「大好きだったんですか? 巫女さん。……の、マッサージ」

「い、いや、その、」


 とっくの昔にバレていたというのか……。ボクの巫女さんフェチが……。昔、巫女さんの格好でよくマッサージをしてくれた憧れのお姉さんに……。


 え、何? ってことはボク、小1の時点でアルバイトのお姉さんたちにデレデレしてたってこと? イリヤに「まーた鼻の下を伸ばして……」と呆れられちゃうくらいに?


 ……マジで?


 小1の男の子すら惑わせるとは……巫女さん恐るべし(責任転嫁)。


 というか、ルーナはなんでまたこんなことを訊いてきたんだろう……。こちらをジッ……と見上げているつぶらな水色の瞳からは、彼女が何を思い、何を考えているのか、イマイチ読めないぞ……。


 そのとき。ふと脳裏にマリナの言葉が甦った。



 ――『そもそも、ですよ? 赤の他人である自分を命懸けで助けてくれて――右も左もわからない世界に来てしまってからも自分をずーっと支えてくれて……そして自分のために今も頑張ってくれている……そんな強くて優しくて格好良いお兄ちゃんに惹かれるなというほうが無理な話です。――恋だってしちゃいますよ』



 ………………考えすぎ、だよな?


「イサリさまは巫女さんのどんなトコがそんなにお好きなのですか?」

「全部だ(キッパリ)」


 ……思索にふけっていたせいで、気付いたら馬鹿正直に答えていた。

 巫女さんが好きなことを認めてしまっていた。


「ぜ、全部ですか?」

「……そうだよ」

「そ、そんなに?」


 こうなったらもう開き直るしかない……。


「いいかい、ルーナ。この世にはね、二種類の女性しかいないんだ」

「二種類?」

「そう。――巫女装束が似合う女性と、似合わない女性だ」


 ボクは何を言っているんだろう。

 それも十歳の女の子相手に。


「イサリさまにとって巫女さんはそこまでの存在なのですね……」


 ルーナがこんなに戦慄しているトコ、初めて見た気がする……。


「まあね。ボクにとって一年で最も心躍る日は誕生日でもなければ聖夜でもなく、大晦日や元日だったくらいさ。――従妹の家の神社にバイトの巫女さんたちが勢揃いするからね」


 そこまで白状ゲロする必要があったのかボク。


「……わたくしは? 似合うでしょうか?」

「え?」

「ですから。仮にわたくしが巫女さんの服を着たら、似合うと思いますか?」


 ど、どうだろう……。まだ十歳とはいえルーナは超絶的なまでの美少女だから、普通に考えたら似合わないってことは無さそうだけど……。


 でも偏見かもしれないけれど、巫女さんってやっぱ黒髪のイメージが強いんだよな……。現にアズサの家の神社でバイトしていたお姉様がたはみんな(少なくともバイト中は)黒髪だったし……。


 亜麻色の金髪(フラクスンブロンド)のルーナが巫女さんの格好をした場合、コスプレ感が出ちゃうかも……。


「う、う~ん……」


 適当に「似合うに決まってるじゃん」とでも言っておけばいいものを、馬鹿正直に悩むボクを見て、ルーナはぷうと頬を膨らませると、


「試しにカグヤちゃんの服を借りて着てみます! 絶対似合うはずですから!」


 ……何やら突拍子もないことを言い出した。


「カグヤちゃんはまだマリナさんのお家ですよね!? ちょっと借りてきます!」


 そしてボクからパッと離れると、そのまま駆けだしてしまう。


「えっ!? ちょ、ちょっとルーナ!?」


 たぶんだけど、カグヤのあの服って他人ひとに貸せるようなモノじゃないと思う!

 あれ、マリナから分けてもらった『星核構築』デイジーワールド・プログラムのチカラを使って形成したモノのはずだし!


 ……ん? 待てよ? 自分が着る服しか形成できないなんてことはないだろうし、マリナが形成したモノを借りれば、ルーナも巫女さんの格好を出来ないことはないのか?



「巫女さんに、わたくしはなります!」



「待ってルーナ! 落ち着いて! お願い! キミにこんなしょーもない話をしたことがバレたら、ボクがみんなに白い目で見られちゃうから!」


 海賊王に、俺はなる! みたいなノリで宣言し、一目散に駆けていく金髪幼女を、ボクは慌てて追いかけたのだった……。



 あ、ちなみにルーナの巫女さん姿はメチャクチャ可愛かったです。



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