♯48 頼れる仲間たちと、運命の地に足を踏み入れた
第48話です。本作の3大ヒロイン最後の一人がようやく登場……。
<遺跡>はちゃんとある――カグヤのその言葉が正しいことは、すぐに証明された。
――ギンッ!
突如、世界そのものが軋むような甲高い音がして、何もかもが凍り付いたようにその動きを停止したのだ。
陽光を反射し眩く煌めいていた海面の漣も。
海面を舳先でナイフのように切り裂いて進んでいたこの船も。
与えられた餌を喜んで食べていた家畜たちも。
甲板の上で汗水垂らして働いていた男衆も。
……そしてアデリーナさんとサシャちゃんも。
気付けばみんな、彫像のように固まり、微動だにしなくなっていた。
何より、世界のすべてがその色彩を失って、古い写真のように灰色一色と化している……。
「同じだ……第十一<神域>ロストワールドに引きずり込まれたときと……」
「ね? 言ったでしょう? <遺跡>はちゃんとあるって」
思わず緊張し身構えるボクと、ニッコリ微笑むカグヤの傍らでは。
「あ……アデリーナさん!? サシャちゃん!? どうしちゃったんですか!?」
「な、なんじゃこれは!? 動けるのは妾たち四人だけか!?」
ルーナとツバキがプチパニックになっていた。
どうやら甲板にいた人間で動けるのは、ボクとカグヤを別にすれば、この二人だけのようだ。
「あ、そっか。二人はあのときは船に残っていて、あの場にいなかったから……。この現象を目にするのは初めてなのか。そりゃあビビるよね」
あのとき――第十一<神域>ロストワールドに無理矢理引きずり込まれたときは、リオンさんたちが動かなくなってしまったいっぽうで、アリシアとシャロンだけは動けていたワケだけれど……。
「動かなくなってしまう者とそうでない者の基準が、イマイチわからないな……」
とか言っていたら、海図室の扉がバン! と勢いよく開いて、誰かがが飛び出してきた。
「ねえ! 船内のみんなが突然動かなくなっちゃったんだけど!?」
「こ、これ、あのときと同じ現象じゃないでしょうか!?」
「あ……あの! お父さんたちの様子が変なんですが!」
飛び出してきたのはアリシアとシャロン、そしてクロエの三人だった。
三人は紫水晶を塗したような菫色の髪と紅玉のような色合いの瞳のカグヤを見て、「そ、その姿は!?」と息を呑む。
特にカグヤのこの姿を初めて見るクロエは、ポカンとし目を丸くしていた。
「前回も動けていたアリシアとシャロンはわかるけど、クロエも動けるんだ……。で、オリガやサシャちゃんはダメ、と……」
これはこれで基準がわからないな……。
ただ、やはり、『<魔女>か否か』が基準というワケでは無さそうだ。
「ボクの他に動ける者は、カグヤを含めても六人だけか……」
…………ん?
なんだろう?
『六人』と口にしたときに、何か引っ掛かるモノを感じたような……。
「……はて……?」
わからん……。気のせいかな?
「あの、イサリさま。ふと思ったのですけれど、シロちゃんはどうなんでしょうか?」
「あ。」
ルーナに言われて、ボクは「その発想は無かった……」と唸りつつ、彼女と一緒に船尾甲板へ移動。『トゥオネラ・ヨーツェン』のあとを付いてきていた白鯨の様子を確認する。
「あっ。わたくしたちを見て、潮を吹きました! どうやらシロちゃんも動けるみたいですよ!」
「本当だ……。でも、周囲の海が固まっているから身動きが取れず困っているっぽいな……」
あれ、「動けないよー。助けてー」って訴えてるんじゃない?
てか、海面すら固まったこの世界で、どうやって潮を吹いているんだろう。理屈がわからん。
まあ、でも、そのへんを深く考え始めたら「ボクたち、なんで呼吸が出来るの? 大気は固まっていないってこと?」って話にもなってきそうだしな。
考えたところでそれが正解かどうかは確かめようがないんだし、深く考えるのはヤメておこう……。
あるいはカグヤなら説明できるのかもしれないけれど、あのコ、基本的に秘密主義者だから、その時点で説明をしなくても支障が無いことは極力説明を避ける傾向があるし……(たぶん説明されてもボクたちには理解できないから、ってのもあるんだろうけど)。
ボクが先日戦った『何か』の正体についても、彼女は知っていることがありそうな雰囲気だったのに、訊いても「そのうち説明するから」としか言ってくれなかったもんなぁ。
――なんてことを考えていたら。
「! あれを見て、船長!」
アリシアに呼ばれた。
「どうしたの? って……えっ!?」
船首楼甲板へ戻り、アリシアが指さす先、この船の上空へと視線を向けて、ボクは絶句する。
「雲が……!」
蒼穹にひとつだけ浮かんでいた鯨の形をした雲が、空気の抜けた風船のようにゆっくりとこちらへ降りてくる……!
「わぷっ」
そして『トゥオネラ・ヨーツェン』は、あっという間に雲に呑み込まれてしまった。
「な、なんも見えん……」
まるで海霧に覆われてしまったかのようだ。視界不良を通り越して視界ゼロ。近くにいるはずの仲間たちの姿すら見えない。
みんなは大丈夫だろうか……と心配になり、「みんなー、大丈夫ー?」と呼び掛けようとしたその瞬間、
「イサリさまぁ! 怖い!」
ルーナがひっしとしがみついてきた。
「スゲエ」
この状況でよくボクの正確な位置がわかったなこのコ……。このコ、今さっきまで船尾甲板にいたはずだけれど……。
ていうか、まだ十歳だし、怖いのはわかるけれど、そのスク水みたいなぴっちりした衣装で異性にしがみつくのは正直どうかと思うよ?
「だんなさまぁ! わたしも怖い!」
カグヤまでしがみついてきた。
……うん。キミの場合100%嘘だよね。
ルーナに便乗しただけだよね。
ニッコニコだし。
「こらぁ! 妾たちもいることを忘れてイチャつくでない!」
「そうよ! 私のことも護ってよ船長!」
「わ、わたしも怖いですぅ……どこですかぁ船長さん」
ツバキ、アリシア、シャロンもやはり怖いのか、ボクを捜してそのへんをウロウロしている気配がする。……けど、マズいなぁ。
「ルーナとカグヤはともかく、えちえちな身体つきをしたあの三人に密着されたら、理性を保っていられる自信は正直無いぞ」
……って、うわっ! 言ってる傍から誰かが背中に縋りついてきた!?
「だ、誰だ!? ツバキか!? アリシアか!? それともシャロンか!?」
慌てて振り返る。
するとそこでは、
「…………っ」
艶のある黒髪を足元まで伸ばした眼鏡っ娘が、きつく目を閉じてブルブル震えていた。
「クロエ……」
あの気丈なコがこんなに震えて……。その上、あんなに警戒していたボクに縋りつくなんて……。
この異常事態に、それだけ怯えているってことか。
……こうしていると可愛いのになぁ。
「大丈夫だよ、クロエ。カグヤが動じていないってことは、これは恐れるような事態じゃないってことだから。ほぉら、よしよーし☆」
頭を撫でてやるも、
「! さ、触らないでください!」
怒りで顔を真っ赤にしたクロエに、パン! と手を払い除けられた。
……ひどくない?
そっちから縋りついてきたのに……。
「一生の不覚です……っ」
そ、そこまで邪険にしなくても……。
……いや、でも、確かに今のは馴れ馴れしかったかもしれないな……。反省。
「失敗したなぁ」
ますますクロエに嫌われてしまった。
この先、クロエがボクにデレてくれることはあるんだろうか……。
イリヤ姉ちゃんには申し訳ないけれど、このコがボクを『お兄ちゃん』とか『兄さん』とか呼んでくれる日が来るとはどうしても思えないよ……。
まあ、いいや。気を取り直そう。
「カグヤ。もしかして、これが<遺跡>なの?」
「そのとおりだよ、だんなさま」
ボクの推測を、カグヤは(ボクにしがみついたまま)アッサリ肯定した。
「第七<神域>トゥオネラ。その入口は鯨雲というカタチをとっていてね、普段は遥か高空を漂っているあの雲のほうから迎えにきてくれないと、第七<神域>に足を踏み入れることは出来ないんだ」
「へえ……」
鯨雲って、そういう種類の雲があるワケじゃなくて、鯨に見える雲がそう呼ばれているだけだったと記憶しているのだけれど。あの雲は常に一定の姿を保っているってこと? 不思議なこともあるもんだなぁ。……今更といえば今更だけど。
「……って、あれっ!? カグヤ、キミ、髪と瞳の色がまた黒に戻ってるよ!?」
「ああ、あれは<遺跡>に反応し、<遺跡>を起動させるために、自動で変わっただけだから」
「へ?」
「あの姿にならないと<遺跡>がわたしを第七<神域>の住人の一人だと認識してくれないからね。一種の色彩認証ってヤツだよ」
「色彩認証を知ってるんだ……。――って、え? キミ、ここの住人だったの!?」
「元々はね。わたしは一年くらい前までは、妹やここの管理者と一緒にここで暮らしてたんだ」
「一年くらい前まで……? 確か男衆の話じゃ、ツバキがキミを拾ってきたのもそれくらいの時期だったらしいけれど」
「うん。だんなさまを見つけるためにここを出たあと、最初に『ヤポネシア』を訪れて、そこでツバキと出逢ったんだよ。――あ、ほらっ、雲を抜けるよ! ようこそ、第七<神域>トゥオネラへ☆」
カグヤが言ったとおり、まるで霧が晴れるように視界を覆っていた雲が後方へと流れて消える。
まさに雲散霧消というヤツだ。
同時に、灰色一色と化していた世界がその色彩を取り戻し、固まっていたアデリーナさんとサシャちゃん、そして男衆の時間もまた再び動き出した。
「あらっ? わたくしはいったい……。それにここは?」
「ママー、おっきな樹ー!」
「「「「「「「なんじゃこりゃあああああああっ!?」」」」」」」
アデリーナさんや男衆は突如目に飛び込んできたその光景に、揃って目を丸くする。
いや、それは彼女たちだけではない。
「わぁ……! すごいです!」
「し、信じられん……。カグヤから軽く説明はされていたが……。これは本当にこの世の光景なのか!?」
「いや、『この世の光景』とは言えないんじゃない? 亜空間? とかいうヤツなんでしょ、ここ」
「お、お母さんたちを呼んでこないと! お母さんたちにもこの景色を見てもらわないと!」
「これ……本当に現実なんですか……? それとも夢……?」
ルーナ、ツバキ、アリシア、シャロン、クロエもまた、その神秘の光景を前に息を呑んでいた。
そして――ボクも。
「これ……は……」
それはツバキも言ったとおり、この世のモノとは思えない光景だった。
第十一<神域>ロストワールド――大昔の地球、白亜紀末の荒野を再現したあの世界も中々のインパクトだったけれど、美しさという点では、今目の前に広がっている世界の足元にも及ばない。
竜の鱗の形をした雲が伸びる蒼穹。
イルカやトビウオ、トビイカが海面からジャンプしている、果てしなく広がる蒼い海。
その中心にたったひとつ浮かぶ、巨大な島……。
「……いや、違う」
それは島ではなかった。
かといって、岩礁というワケでもない。
それは『樹』だった。
地上ではなく海底に根付いていると思われる、「あれは世界樹だ」と言われたら信じてしまいそうなほど大きな樹……。
汽水域のマングローブみたいに海面下から海上へと飛び出し、天高く聳えるその幹の太さは、ギアナ高地のテーブルマウンテンの威容を彷彿とさせる。天を劈く幹の先端、頂点は、下手な山よりも高く、ところどころ雲がかかってしまっているほどだ。
そしてそこから四方八方に伸びる無数の枝もまた相応に太く、目に鮮やかな緑をふんだんに蓄えていた。
「でっか……」
あまりに大きいから、ここからあの樹までさほど遠くないように見えるけども、距離にしたら30kmはあるよな……。なのに、ここからでもこれほど大きく見えるなんて……。どんだけ大きな樹なんだ……? これ、もっと近づいたら全容が視界に納まらなくなるよな、間違いなく。
「えーと……念のため確認するけれど、あの樹が目的地なんだよね?」
「う、うむ」
眼前に広がる光景に圧倒されながらもボクの問い掛けに肯くツバキ。
「妾たちの航海にはふたつの目的があった。ひとつは『カグヤのだんなさまの発見及び保護』。これはカグヤからの依頼じゃな」
「もうひとつは?」
「旦那様が言うところの『不思議な樹の実シリーズ』の一種を、あの地……あの樹? から採取することじゃ。これは妾の母上から賜った勅命でな、なんとしても果たさねばならん」
ツバキのお母さんから……?
「『バビロンの実』や『桃仙郷の実』は元々カグヤが持っていたモノなんだよね? その実は持っていなかったの?」
「うむ。以前だんなさまが食べた……なんじゃったっけ……『でいじぃわぁるどの実』じゃったっけ……あれと同じくらい稀少な実らしくての。持っとらんかった。じゃから、直接ここに取りに来る必要があったんじゃ」
「へー……。ちなみに、なんて名前のどんな効力を持った実なの?」
「…………内緒じゃ」
むう……。何か大っぴらに出来ない理由でもあるんだろうか。
「で、」
と、ボクは(ツバキが黙り込んでしまったので)再度カグヤへ水を向ける。
「あそこにキミの妹さんと、ここを管理している造物主サマがいるんだよね?」
「そうだよ」カグヤは肯いて、「わたしたちが来ていることに、向こうももう気付いてるんじゃないかな」
「樹上生活を送っているってこと? 枝の上で暮らしているの? 確かにあれだけデカい樹の枝なら、人間が生活できるくらいの幅はありそうだけれど」
「それは着いてのお楽しみ☆ とりあえずは上陸ポイントへ向かうよ。ツバキ、わたしの指示どおりに針路をとって」
「承知した」
「…………もうひとつだけ訊いてもいい?」
これだけは今のうちに確認しておきたい。
「あそこに着いたら――キミの妹さんやここを管理している造物主サマと逢ったら。これまで回答を保留されていた様々な疑問に答えてもらえるのかな?」
「…………そうだね」
何故だろう。
そう言って振り向いたカグヤは、ひどく辛そうな顔をしていた。
「全部は無理かもしれないけれど、だんなさまが知りたいことに、いくつかは答えられると思うよ。……だんなさまが『知らないままでいたかった』って思うだろうことも含めてね」
カグヤが言った『上陸ポイント』。
それは幹の途中、海抜100m近い高さから、海面下まで垂れ下がるように伸びている枝の先端のことだった。
……まあ、『枝』とは言っても、幅50m、幹から先端までの長さが200mはありそうな巨大な枝なワケだけれど。
でもって、これでもこの樹の枝の中では小ぶりなほうみたいだけれど。
更に言うと、『先端』とは言っても本当の先端は海面下なため見えず、この場合の先端は『海面よりも上に出ている部分の端っこ』という意味なのだけれど。
で。その『枝』には、明らかにヒトの手が加わっていた。
あるいは神様の手かもしれないが。
というのも、歩きやすいよう『枝』の上半分が開拓されて、緩やかな坂道になっていたのだ。
しかもその坂道には石畳が敷設されており、途中5m間隔で朱塗りの鳥居が建っていた。先述のとおり幹から先端までの長さは200mほどだから、この鳥居は単純計算で40本近くある計算になる(あとで聞いた話によれば、正確には46本あるらしい)。
「……なんか、京都の伏見稲荷大社を彷彿とさせる景色だなぁ」
あれから二時間ほどかけてようやく辿り着いた『枝』の先端に、『トゥオネラ・ヨーツェン』と、曳航してきたロウガさんの漁船を停泊させて、舷梯を使って『上陸』を果たしたボクは、連なる鳥居を見上げ感嘆の溜め息をつく。
ボクの背後では、ボクに続いて『上陸』を果たした仲間たちが「わぁ……!」とか「ひぇー……」とか「ふぇぇぇぇ」とか驚嘆の声を上げていた。
ちなみに『上陸』を果たしたのは、カグヤやルーナ、ツバキといったお馴染みのメンバーだけではない。ボクがアリシアやシャロンと一緒に『秩序管理教団』の船から救出した面々もだ。あとはイリヤ姉ちゃん・クロエ・ロウガさん・オリガ一家も。要は男衆以外の全員である。
では男衆は今何をしているのかと言うと、ツバキの指示で一生懸命荷下ろしをしていた。
どんどん『枝』の上に積み上げられていく食糧や雑貨、衣類などの入った木箱の量を見るに、どうやらツバキは『トゥオネラ・ヨーツェン』の積み荷の大半をここに置いていくつもりのようだ。
「……んん?」
「どうしたんじゃ、主計長」
「あ。すみませんお嬢。今、ロウガ殿の漁船の甲板で何かが動いたような気がして……」
「なんじゃと!? …………誰も乗っておらんではないか」
「ですね。すみません、気のせいだったみたいです。疲れで幻でも見えたのかな?」
「長旅じゃったからの。そうかもしれんな」
「……じゃあちょっとばかし横になってもいいですか?」
「荷下ろしが全部終わったらの」
「鬼!」
背後のそんなやりとりを聞き流しながら、ボクは傍に侍る仙女様へと問い掛ける。
「ねえカグヤ。以前、ボク、『秩序管理教団』に捕まっていた<魔女>たちの移住先について相談したことがあったじゃん? あのときキミ、『心当たりがある』って言ってたよね?」
「うん」
「……あの荷下ろしの規模から察するに、その心当たりってのはもしや……」
「ご明察。『ここ』のことだよ☆」
やっぱり!
「<魔女>とその身内でも安心して住める地がこの蒼き月の海にもちゃんとあったんだなぁ」って驚いてたら、まさかの亜空間かい!
「いいの!? 『ここ』にヒトが住んじゃっても!?」
「ダメな理由は何も無いね」
無いんだ……。仮にも<神域>の名を冠してるのに……。
「ちなみにだんなさまたちが『シロ』って呼んでいるあのコも、元々は『ここ』の住人だったんだよ?」
「マジでっ!?」
今日一番の驚き!
さっきからずーっと沖合の同じ場所を無意味にグルグルと泳ぎ回っているシロを「初めての亜空間に怯えているのかな?」って心配してたのに。久しぶりの帰郷でテンションが上がっていただけなんて……。
「さて。荷下ろしは彼らに任せて、わたしたちはそろそろ出発しようか☆」
「イサリさまっ、転んでしまわないよう手を繋いでください☆」
「え? あ、ああ……うん」
ロリコンビと手を繋ぎ、ボクは坂をゆっくりと上り始める。
それを見たツバキが、
「よし。荷下ろしは任せたぞ、男衆。――他の皆はだんなさまについていくぞ! 出発じゃ!」
と号令をかけた。
「「「「「「「はーい!」」」」」」」
元気のいい返事があちこちで上がり、男衆を除く全員がボクのあとをゾロゾロとついてくる。……のはいいけれど、
「……うーん。石畳のお陰で歩きやすいとはいえ、この坂道はお年寄りにはちょっとキツイかもしれないな……」
<魔女>の身内にはお祖父さんやお祖母さんもいるのに……大丈夫かな?
「いざとなったら息子さんに背負ってもらうしかないか……」
……って、うおっ!? 何気なく振り返ったら、船から降ろされた家畜たちが最後尾についてきてる!?
すげえ……。逆方向は海だから他に行き場が無いとはいえ、よく大人しくついてきているな……。牛や山羊はまだわからなくもないけれど、豚や鶏まで……。
………………。ふと思ったのだけれど、今のボクたち、傍から見たらかなり珍妙な集団じゃない……? 先頭がロリを両脇に侍らせた少年で、そのあとにスク水みたいな衣装を着た少女とか幼女を抱っこした未亡人とかお爺さんとかお婆さんとかオッサンとか牛とか山羊とか豚とかが続いて、最後尾が鶏の群れって。何この集団。チンドン屋でももう少し統一感があると思うぞ……。
そんなとりとめのないことを考えながら石畳の上を歩き続け、連なる鳥居をいくつもくぐり、坂の中腹くらいまで来る。
……と、そこで。
ボクは、鳥居の傍に佇む一人の少女を見つけた。
「…………キミは…………」
気付けば歩みを止めて呟いていたボクを――ボクだけを、少女は潤む瞳でじっと見つめ、淡く可憐な微笑を浮かべる。
そして、鈴の音のように澄んだ声……いつかどこかで聞いた声で、こう呟いた。
「ようやく……また逢えましたね」
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