穏やかな日々
結婚式が終わってからの日々は忙しくもあるけど穏やか。4月に入ると本格的に春の陽気でぼーっとしていると眠くなってしまうくらい。
「眠い?」
「え、そ、そんなことないよ!!大切な日だもん」
「良いお天気だから眠くなっちゃうよね」
「ね、眠いけどせっかくのピクニックなんだから寝ないよ!!」
クスクスと笑っている隼人さん。今日は大切な日、隼人さんの誕生日だ。木曜日だから2人で有給を取ってどこか出掛けようかと聞いたらピクニックが良いと言われた。もっと特別なことをしたい気もしたけど隼人さんはささやかな幸せが良いそう。だからお弁当を持って桜の咲いている公園に来てレジャーシートを敷いてお花見をしながらピクニックをしている。
「綺麗だねー」
「うん、綺麗だね。桜ってこんなに綺麗なんだね」
「そうだよー。お花見久しぶりだもんね」
「小学生の時にしたけど母さんが騒ぐから桜見てなかったよ」
「賑やかなお花見だったんだねー」
「いや、だから騒がしかったんだってば」
「うん」
「まあ、いいや。楽しいね」
「楽しいねー!!隼人さん、はい。おにぎりだよ」
「ありがとう。うん!!美味しいよ!!」
「桜の下で食べるといつもとはまた違うねー」
ほのぼの。隼人さんとお花見ピクニックなんて素晴らしい幸せだ。自然と口角が上がる。
左手を見ても笑みが溢れてしまう。結婚式の日から薬指には婚約指輪と結婚指輪両方がつけられている。お揃いの結婚指輪が隼人さんの左手の薬指についている。それをただ見るだけで幸せで笑ってしまう。私の視線に気付いた隼人さんも笑ってくれる。
「幸せだね」
「うん、幸せだよー」
今日も幸せな1日だなー。そう思っていると隼人さんが私の腕をつん、とする。
「見て、椿。小さい子だよ」
「本当だね、可愛い」
斜め前の方でお父さんお母さん子供2人の4人で来ているご家族がいた。男の子と女の子の兄妹が楽しそうに遊んでいる。
「良いなあー」
「そうだねー」
「全然桜見てないね」
「ふふ、子供はお花より遊びの方が良いみたいだね」
「ピクニックでは子供たちはなにして遊ぶんだろ」
「そうだねー……バドミントンとかフリスビーとか?」
「楽しい?」
「楽しいよー!!私は苦手だったけど楽しいのは楽しかった」
「椿は運動ダメだもんね」
「で、でもフリスビー投げるくらいはできるよ」
「あー良いなー良いね、それ」
「うん、良いねー」
隼人さんが目を瞑って言うから私も目を閉じて想像する。私と隼人さんの子供が広い公園で元気にフリスビーを追いかけてる。
想像の中の隼人さんが子供に投げたフリスビーを取って私に手渡して子供が拗ねてしまった。
「もう、隼人さんフリスビー奪って意地悪しちゃ駄目」
「え、なに……って想像か」
「あ、ごめん口に出してた?」
「うん。ふふ、楽しいね」
「楽しいね」
そしてご飯を食べたあと私は来る前に隼人さんに車で待っててもらってコンビニで買ったものを袋から取り出す。
「隼人さん、はい」
「え、これって……」
「うん。高校生の時コンビニで買って食べたよね。どっちから食べる?って……片方だけにしよっか」
さすがに2つとも開けても食べれないかもしれないと思って苦笑いする。隼人さんはやっぱり思った通り優しく笑ってくれた。
「じゃあこっちを食べようか。もう1つは明日食べよう」
「そうだね」
そう言ってピザ味のポテトチップスを袋にしまってハバネロ味のスナックを開ける。
「はい」
「ありがとう」
同時に食べてみると辛いというか痛いというか……。
「辛いね……」
「でも癖になるよね……」
「本当にね」
「お茶飲んでね」
激辛だけど癖になるスナック菓子を食べながら喋る。
2人で過ごす初めての隼人さんの誕生日はそうしてのんびり過ごし4月の最終週、ゴールデンウィークの前半は若菜と昴くんが遊びに来た。
「タコパタコパタコパー」
「若菜変な歌歌うな」
「む!!変じゃない!!」
「昴くん、これで大丈夫かな?」
「うん、大丈夫だよ。じゃあ隼人くん、僕が1回やるから見ててね」
「ん」
タコパ経験者の昴くんがやって見せてくれると隼人さんは一度見てこうだね、って言って上手に作ってくれた。
「あつあつー美味しいー!!次はこれを入れてみよー」
「おい、チョコなんて入れるのか?」
「隼人くん、ツナマヨも入れようよ」
「ウインナーも美味しそうだよ。隼人さん、焼いて焼いて」
「う、うん」
こうして私たちが自由にこれ入れてというものを隼人さんが焼いてくれて食べるというのを繰り返す。隼人さんにはチョコ以外のたこ焼きをあーんしてあげたりして、すごく楽しそうにしてくれた。
「タコパって楽しいね」
「良かったー隼人さん楽しめたんだ」
「明らかにあーんが嬉しかっただけだと思うけど」
「椿ずるい!!私には2回しかしてくれなかった!!」
「だ、だって隼人さん手が塞がって食べれないって言うから」
食後のデザートだと言って余ったチョコを食べながらお喋りする。隼人さんはコーヒーだけだけど。
「明後日出るの早いの?」
「ううん、そんなに早くないよ。7時くらいかな」
「新婚旅行だよ、楽しみだね」
「わくわくするねー」
「あーあ、私と旅行する方が楽しいのにー」
「わ、若菜がくれたんでしょ」
「そうだけどもー」
明後日から一泊二日で旅行に行く。新婚旅行だ。若菜と昴くんがくれた宿泊券で近くの観光地まで行って温泉があるホテルに泊まる。今からドキドキわくわく。
「クリスマスの時とはまた違って楽しみだよー」
「椿食べ物ばっかりだけど」
「……そ、そんなことないよ。美術館も行くよ」
「良いなー良いなー」
「若菜、僕たちも旅行中だよ」
「椿とが良いのー」
「若菜とはいつも行ってるでしょ。隼人さんとは初めてだからすごく楽しみだよ」
「むー!!私より隼人が良いんだ!!」
「そういうことじゃなくて……」
「羨ましいでしょー。椿は俺が大大大好きだよ」
「は、隼人さん煽らないで……」
「むきゃー!!私は大大大大好きだよね椿!!」
「え、大大だ……い……とりあえず愛してるのは隼人さん1人で若菜は一番大切な親友だよ」
私がそう言うと隼人さんは顔を両手で覆って若菜は私に抱きついた。
「大切ー!!一番!!」
「う、うん、友達の中でね」
由紀と愛ちゃんと千恵も大切な友達だけど。みんなは若菜みたいには言わないし、まあとにかく若菜が嬉しがってくれてるから良いか。
「昴どうしよう、明後日から新婚旅行なのに今日で俺の人生終わるかも」
「大丈夫だよ隼人くん100才くらいまで生きてずーっと椿ちゃん椿ちゃん言ってるよ」
「そっか、ずーっと椿と一緒で幸せだね」
「え、私100才まで生きれるかな……」
「椿ちょっとでも運動しようよ。明後日アスレチック楽しみだね」
「運動するの嫌だけど長生きするには体を動かした方が良さそうだもんね……」
「そうだよ」
「難しそうだし筋肉痛になりそうだなって思ったけど……頑張ろ」
「俺が手取り足取りこうしたら良いよって教えてあげるよ。マッサージもしてあげる」
「普通にやってね、普通に」
「椿がいやらしいよ。普通に教えるし普通にマッサージするだけだよ」
「昴……なんで2人の世界になっちゃうのー」
「んー仕方ないよ。新婚だし」
「新婚じゃなくてもやってそうだよー!!」
「仕方ないよ、この2人だもん」




