クリスマスデート(2)
17時半に植物園に着いた私たちはイルミネーションと綺麗な花を見ながら歩く。
「椿椿……大変だよ」
「え、どうしたの?」
綺麗だなーと思いながら眺めていると隼人さんが慌てた声を出す。
「見てよ、妖精が写ってるよ」
「……写ってないよ」
隼人さんが見せてくれた携帯を見ると私の横顔と花が写ってるだけ。
「花の妖精さんだよ」
「若菜みたいになってるよ。現実に戻ってきて」
「はっ……若菜みたいは嫌」
「もう……ただの私だよ」
「でも妖精みたいに可愛いよ……どうしてこんなに可愛いの?」
「可愛くないから。隼人さんは褒め上手だね」
隼人さんにそうやって言われると私はすごく満たされた気持ちになる。これが翠さんたちの言ってたことなのかな。
「思ってることを言ってるだけだよ。椿は可愛いし綺麗だし魅力がありすぎる」
「恥ずかしいけど嬉しい」
「恥ずかしがって赤くなってる椿も可愛い。どうしたら良いかな……」
「どうしたらって?」
「もうホテルに行っちゃう?」
「だからー!!すぐそうなっちゃうの駄目!!」
「2人きりでイチャイチャしたかったけどまだまだ楽しまないとね」
「そうだよ、楽しむよ!!ほら、隼人さんも写真撮るから」
「え、俺は撮らなくて良いんだけど」
「良いから良いから」
イルミネーションのそばの隼人さん映える。どこから撮っても美しい。
「見て椿、イルミネーションがカーテンみたいだよ」
「綺麗だねー」
「一緒に撮ろ」
「うん!!」
隼人さんに肩を抱かれて隼人さんの携帯で撮る。ドキドキ。インカメラで撮っている携帯の画面に写ってる自分が不思議な感じ。こんなに密着してたんだ。肩を抱かれるのにはちょっと慣れた気がしたけどやっぱり恥ずかしい。
「椿?」
「ツーショットって恥ずかしいね」
「そう?じゃああそこでもツーショットで撮ろ」
隼人さんが指差したのはハートの形をしたオブジェ。もちろんキラキラに光ってる。その前のベンチに座ってみんなが写真を撮ってた。何人か並んでいる人もいる。
「隼人さんってベタなのが好きだよね」
「よく言われるよ」
「昴くんに?」
「間宮さんとかにも」
「ああ、間宮さんね。そうだ、間宮さんといえばね、隼人さんが教えてくれる間宮さんと私が知ってる間宮さんが違って不思議だなーって思ってたんだけど、青木さんが間宮さんに私の前では好青年でいるようにって言ってたんだって」
「あーうん……」
「でもね、やっぱり間宮さんは面白いお兄さんって感じだよ。キャバ「ひゃー!!」ひ、ひゃあ?」
「そんな話は聞いちゃ駄目!!」
「だ、大丈夫だよ。そういう話が苦手な女の人もいるから人が少ない時にこっそり教えてくれるの」
「そういう問題じゃない」
「そうなの?ちょっとどういうところなのか興味があったから聞くの面白いのに」
「しまった、椿の知りたい欲求は満たしてあげなきゃ……」
「隼人さんから聞いたお店にも行くんだって」
「もー!!間宮さん!!1回だけ!!1回だけだから!!」
「お仕事だもん、行くことはあるんだろうなって思ってたんだけど間宮さんが教えてくれたの。隼人さん1回行ってくたくたになってから二度と行かないってなったんだって」
「あの人はペラペラ喋りすぎる……っていうかクリスマスなんだからそんな話よりもっと別の話をしよ」
「うーん……あとは今週は誰ちゃんと遊んで来週はまた別の子と遊ぶんだって」
「いやいや、間宮さんの話じゃなくて」
「あ、そうなの?」
「もう、全然良いお兄ちゃんじゃないよ。真似しちゃ駄目だからね」
「間宮さんは男の人だもん。真似できることないよ」
「間宮さんはただのチャラチャラした人。ほら、ちょうど順番だよ」
フォトスポットだからなのか、職員さんらしき人がいて隼人さんがその女の人に携帯を渡そうとして私は思わず自分の携帯をその人に手渡す。
「どうしたの?」
「え、ううん、なんでもないよ」
女の人は撮りますねーと明るく言って写真を撮ってくれた。
「わー!!綺麗!!ありがとうございましたー」
隼人さんを見てうっとりしてる女の人にお礼を言って隼人さんの手を握ってすたすた歩く。
「椿?怒ってる?」
「怒ってないよ」
少し歩いたところでスピードを緩める。握っていた手が緩められて恋人繋ぎになる。夫婦だけど。
「椿、どうしたの?」
「……さっきの人隼人さんに見惚れてた」
「そんなことないよ」
「そうだよ」
「猿が見惚れてるのは面白そうにしてたのに」
「うー……それとこれとは違うよ」
「こっち来て」
どうしたんだろう。隼人さんに手を引かれて少し歩くと大きな池があった。さっきまでのキラキラした賑やかな雰囲気の場所とは変わって落ち着いた青いライトが当たっていて幻想的な雰囲気になっていた。池の周りの木には白いイルミネーションが飾り付けてあってそれもとても綺麗。
「ここ来ようと思ってたんだー綺麗だね」
「うん、綺麗……すごく」
「ここなら人も少ないし抱き締めて良い?」
「え……」
辺りを見ると3組くらいカップルがいるだけ。私が頷くと隼人さんはそっと抱き締めてくれた。
「俺には椿しか見えてないよ」
「うん、わかってる。だけど隼人さんはかっこよすぎて女の人みんな隼人さんに夢中になっちゃうんだもん」
「どうしてほしい?顔は変えられないよ」
「変えちゃ駄目。顔も好きだから」
「じゃあどうしたら良い?」
「んー……パウパウばっかり構わないで」
「え、パウパウ?人の話じゃないの?」
「と、とにかくパウパウじゃなくて私を膝に乗せて撫でてほしい。私もパウパウ好きだけど」
「く……可愛いな……あとは?」
「女の人に笑いかけないで」
「してないと思うけど……」
「さっきの人に携帯渡そうとした時も植物園の入場券買う時も動物園の入場券買う時も売店でご飯買う時も女の店員さんに笑いかけてたよ」
「無愛想にするものでもないでしょ」
「わかってるよー……」
「わかったわかった。どうにかするよ」
「本当に?」
「うん」
「ごめんね、面倒なこと言って」
「そんなことないよ。椿俺と言ってること同じだよ」
「あ……本当だね」
「面倒?」
「ううん」
体を離して隼人さんが鞄から袋を取り出した。
「もっとムードがある時の方が良い?」
「今が良いよ」
お互いにプレゼントを交換し合おうと話していた。私も鞄から袋を取り出す。
「じゃあ俺からね」
そう言って隼人さんがくれた袋を開けてみるとシルバーのシンプルな形をしたバレッタが入っていた。
「可愛いー!!」
「どう?気にいってくれた?」
「もちろんだよー!!隼人さんにはこれだよ。マフラー」
「ありがとう」
私がプレゼントに買ってきたのは紺色の無地のマフラー。隼人さんはくるくるとその場で首に巻いてくれた。
「どう?」
「すごくかっこいいよ」
「ありがとう。椿、クリスマス楽しめてる?」
「うん、楽しいよ」
「それなら良かったけど」
「7年前のクリスマスのことは忘れないけど今年のクリスマスも特別な日だよ」
「うん、俺も忘れないけど今年のクリスマスも来年のクリスマスもその先もずっとたくさん思い出を作ろう」
「そうだね」
「外だけどキスしても良い?」
「えっと……良いよ」
恥ずかしいけどキスをしてから私たちはホテルへ移動した。25日は予定通り家でパウパウは私の腕の中、私は隼人さんの膝の上で映画を観たりしてのんびり素敵なクリスマスを過ごした。




