クリスマスデート(1)
今日は特別な日。世の中にとってもだけど私たちにとっても。
「椿、よそ見して転ばないでね」
「こ、転ばないよ。どこから見ていこっか」
12月24日クリスマスイブ、私たちは動物園に来ている。クリスマスに動物園なんてロマンがないとかなんとか若菜に言われたけど。でもクリスマスどこに行きたいと隼人さんに聞かれた私は動物園に行きたいと答えた。結婚してからそういうデートをしてなかったからお出かけしたいって。こういう時は水族館とかの方が良いかなと言う私に隼人さんも動物園が良いよと言ってくれた。
「椿、うさぎがいるよ。パウパウは元気かな……」
「……パウパウはちゃんと元気にお留守番してるよ」
パウパウは村岡さんと関さんがくれたパンダうさぎのぬいぐるみだ。長いから名前を考えた。パンダのパとうさぎのうを取って繰り返しただけだけど。若菜がアルを可愛がってるのと同じように隼人さんもパウパウを可愛がってる。家で映画を観ながら膝に乗せてるほどだ。なんとも可愛らしいけどモヤモヤはする。でもぬいぐるみだしと思って我慢。隼人さんがいない時は私がパウパウと遊んでるというくらい私もパウパウを可愛がってるし。
「本物のうさぎも可愛いね」
「そうだねー触れるよ、写真撮るから隼人さんうさぎ抱っこしてみて」
「え、なんで俺が?椿が抱っこしてるとこ撮るよ」
「それじゃあ動物園に来た意味がないよ」
「どういうこと?」
「動物と戯れてる隼人さんかわ……かっこいいんだもん」
「可愛くないよ」
「……言い直したのに」
「可愛くないよー」
その言い方が可愛いんだけど……というとさらにムキになっちゃうから止めておく。
「わかったわかった。隼人さん人と話してるみたいに動物に話しかけてて優しい顔しててドキドキするの」
どうしたんだろう。隼人さんはなにかぶつぶつ呟いてる。ライアン……?
「ライアンってなに?」
「わー!!なんでもないよ!!男は肉食動物だって話!!」
「ライアンじゃなくてライオンの聞き間違い……?なにかやらしい話?それなら聞かない」
「うん、それが良いよー」
隼人さんはすぐそっちの話になっちゃう。恥ずかしいからやめてほしいけどそれだけ大好きってことだと思うと喜んで良いのかなんなのか複雑な気持ちになる。
「じゃあ撮り合えば良いよね、椿」
「え、うん」
私は真っ白のうさぎを抱っこする。
「わーもふもふで可愛いー」
「可愛い……」
携帯をこっちに向けて写真を撮る隼人さん。
膝に乗せて撫で撫で……。撫でてるだけで癒される。私も隼人さんに頭ポンポンされたり頭を撫でたりされるとふわふわした気持ちになるけどこの子もそうなのかな。撫で撫で……。
そしてうさぎを下におろして私も写真を撮ろうと携帯を出す。
「隼人さんはなにお喋りしてるの?いい天気だねーとか?」
「へ?えー違うよ。椿の方が可愛いよって言ったらほらほら、怒ってくるでしょ」
隼人さんの周りにたくさんのうさぎたちが集まってきた。なんだろう、これは単に隼人さんがかっこいいから寄ってきてるんじゃないかな。そう言うと隼人さんは笑う。
「それはもっとないよ。うさぎだし」
「うさぎも隼人さんが好きなんだよー」
「そうかなー……あ、ほら、乗ってこようとするでしょ。椿には負けるけどお前も可愛いよー」
そう言ってうさぎを優しく撫でてる隼人さん。
「うーん……他にはどんなお喋りするの?」
「肉食動物なら椿は俺のだから媚びうるなとか?」
「んー楽しそうにお喋りしてると思ってたのに……」
「だから動物園に行きたいって言ったの?」
「だって昔行った時動物とお喋りしてていつもとはまた違って可愛い……かっこいいなーって思ったんだもん」
「そうなの?でも可愛くないからね」
「ごめんごめん。昔は可愛いじゃなくてただドキドキしてただけだよ。あ、向こうも触れるよ。行こ」
そして私たちは羊やアルパカに触ったり餌をあげたり赤ちゃんのライオンを抱っこしたりした。ライオンとだけ隼人さん喧嘩してたみたいだけど遊んでるみたいで可愛かった。あ、また可愛いって言っちゃった。
「椿、見て。猿が固まってる」
「わー可愛いねー寒くてくっついてるのかな」
「かわいそうに」
「ほら、やっぱりみんな隼人さんに注目してるよ。動物も隼人さんがかっこいいと思ってるんだよ」
柵のところで見ていると猿たちがこっちをじっと見てきた。
「動物も隼人さんに見惚れるんだねー」
「椿……そんなわけないでしょ」
「えへへ、今度はどうする?」
「もうお昼だしなにか食べようか」
「あ、もうこんな時間なんだ。そうだね」
「お腹すいてる?」
「そうでもないかも」
「じゃあ軽食で良い?」
「うん、良いよ」
そして売店で買って座って食べる。
「隼人さんがハンバーガー食べてるー……」
「え、なんで?椿ハンバーガーの方が良かったの?」
「ううん、そうじゃないよ。なんだか新鮮な気がして」
「そう?」
「あんまりハンバーガーとか食べてるイメージなくて」
「頻繁に食べないけど食べるよ、普通に」
「そうなんだ」
フライドポテトを食べながら私は続ける。
「ドレス決まって良かったねー」
「うう……綺麗すぎた……世界一のお姫様だった……結婚式で他の人に見せるのがもったいない」
「い、言いすぎだってば」
この前試着しにいったら隼人さんが驚くほど私好みのものをチョイスしてくれてすぐに決定した。
「若菜の下見も良かったのかなー」
「まあ、あれでイメージがついたのもあるけど」
「ほら、若菜のおかげだね」
「若菜と仲良くしないよ?」
「駄目かあ……。似てるし実はお互いのこと大切に考えてるんじゃないかなって思ったんだけど……」
「えー……」
あのあと昴くんに詳しく聞いたけど若菜は入院してる隼人さんにリンゴを届けて1つ自分で食べてから帰ったり折り紙で鶴を折って寝ている隼人さんの周りに置いて帰ったりしていたらしい。隼人さんが若菜のクッキーを食べてあげたり優しいのは知っていたからやっぱりお互い大事に思ってるんだ、でこぼこな感じだけどと思った。
「仮に俺が若菜が好きって言ったら嫌でしょ」
「大切な従妹でしょ?」
「椿……それで長い間すれ違ってたのに」
「そ、そうなんだけど……。えっと、終わったらやっぱり思い出になるんだね」
「まあ椿が良いなら良いけど。でも若菜とは相容れない」
「惜しかった」
「全然惜しくないよ。椿、残念だけど椿は俺が好き、若菜が好き、だから俺と若菜は好き同士って法則はないんだよ」
「えーなにそれ。わかってるよ。友達の友達は友達とは言い切れないもんね」
「それじゃあ若菜の話はおしまい」
「もー……いつまでも私を挟んで喧嘩しないでほしいんだけど仕方ないか」
若菜と昴くんとは頻繁に電話で話してる。家のこととか他にも色々。だけどすぐに隼人さんと若菜が喧嘩しちゃって結局ぐだくだになって終わってしまうからもうちょっと落ち着いて話せれば良いのにと思うけど難しい。まあ、昴くんでも諦めてるんだから難易度は最高ランクなんだと思うけど。
「椿、もう少し見てから植物園に行こうか」
「うん、そうだね」
私たちはこのあと植物園のイルミネーションを見に行く。少し遠くまで行くから今日はホテルに泊まって明日の日曜日は家に帰ってのんびり映画を観ようということになってる。




