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「勘違いですれ違った恋」番外編  作者: 柏木紗月
新婚生活スタート
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待望の


 村岡さんのお店がある場所はお洒落で高級なお店が立ち並ぶ。初めて来た私はついあちこち見てしまう。


「お店見ていく?」

「え、ううん。大丈夫。物珍しくて」

「俺も落ち着かないよ。関さんと向井さんと村岡さんの所に行くだけですぐに立ち去るようにしてる」

「ふふ、そうなんだ」

「ここが関さんのお店だよ」

「わー高そう……」

「実際高いからね」

「そっか」

「で、向こ……わかると思うけどあれが村岡さんのお店だよ」


 隼人さんが指さして教えてくれたお店の前に満面の笑みで手を振る村岡さんがいた。


「隼人くん椿ちゃん待ってましたよ」


 お店の前に行くと村岡さんに手を差し出されて握手をする。すぐに隼人さんに離されてしまうけど。


「わざわざ外に出てこなくても良かったじゃないですか」

「それだとその他と同じになってしまいますから」

「え……その他……?」

「ここは俺の店だから俺が出迎えるのが筋ですと言って出てきました。さ、どうぞ」

「えっと……ありがとうございます」


 ドアを開けてもらって中に入るとオレンジ色の照明で洗練された落ち着いた雰囲気の店内がとても素敵。思わず小さくわーと言ってしまう。


「すごく高級なのに思っていたのと違います」


 店員さんがお客さんと話していたりお客さんもみんな話しながら楽しそうに食べてる。ほとんど喋らずに音を立てないように気を付けて食べたのとは全然違う。


「なにが変わったんですか?」

「見てください。カウンター席が増えました。でも隼人くんできる限り急いで個室に行ってたのであまり見てなくて覚えてないと思います」

「そういえば言われるとそんな気もしてきますけど……」

「こっちですよ」


 村岡さんのあとに続いて奥に歩いていくと個室がいくつかあった。


「ここも変わってる……」


 改装していろいろ変わったんだな。隼人さんはきょろきょろしながら見ていて村岡さんがドアを開ける。

 広々とした個室にテーブルを囲んでお義父さんと竜二さんを含めて6人……お義父さん?


「なんで親父がいるんだよ」


 そう、お義父さんは来る予定ではなくお義父さんの友達6人とお食事会という話だったんだけど。


「だって椿ちゃん知らないおじさんいっぱいだと緊張しちゃうかなって」

「あ、心配してくれたんですね。ありがとうございますお義父さん」

「椿違うよ、親父はただ来たくて来ただけだよ」


 なんで怒ってるんだろう。隼人さんはなんだかイライラしてるみたい。もしかしてこの前怒られたからギクシャクしてるのかな。大変、私のせいで仲が悪くなっちゃうなんて……。


「椿ちゃんはここに座ってね。僕と竜二さんの間だよ」


 私が緊張しないように気を使ってくれたみたい。だけどお義父さんと隼人さんを仲直りさせなくちゃ。


「えっと、お義父さんは隼人さんの隣が良いと思います」

「へ?どうして?」

「隼人さんの席は……」


 私が座る向かい側が隼人さんの席みたい。その隣は空いてるから村岡さんかな。その反対側の隣はなんだかダンディーなおじさまっていう感じの渋い人が座ってる。私と目が合うとにこりと笑った。


「椿ちゃんこっちに来る?俺は関。翠からいろいろ聞いてるよね」

「関さん!!」


 この人が関さんかあ。素敵なおじさまだな。


「みんなから椿ちゃんの話を聞いてるからなんだか初めましての感じがしないよ。隣で話そ」

「私もたくさん聞いてます。本当に初めましてじゃないみたいですね」


 あのあとも翠さんたちから関さんが外ではスマートだけど家ではだらしないとか家事が全然できなさすぎて萌香ちゃんに怒られてるとかいろいろ話を聞いてるから初めましての感じがしない。


「ちょっと待って椿ちゃん。お義父さんの隣の方が安心だよね」

「お義父さん心配してもらって嬉しいですけど私奥さんたちに話を聞いてるので知らない人って感じがしなくて緊張しませんよ。大丈夫です」

「そ、そっか……大丈夫……」

「でも会うのは初めてなんだから俺と琉依の隣にいたら?」


 竜二さんが言ってくれる。竜二さんも心配してくれてるんだな。


「俺とはテレビ電話で話してます。俺の隣なら問題ないですね。じゃあこっちにどうぞ」


 村岡さんにそう促される。なんだかみんな早口だな。急いでるのかな。なんでかな。


「ちょっと待った!!それなら木村以外誰の隣でも良いじゃねえか」

「ガラが悪い……わかった、昇さんですね」

「そうそう。ってクイズじゃねえ」

「面白いね。俺は自分で言っちゃったから小林と木村をあててごらん」


 関さんに言われて名前のわからない2人を見る。1人は黒縁眼鏡をかけた人でもう1人は童顔の人。


「んー……眼鏡をかけてる情報はなかったです。でも真面目そうなので小林さんですか?」

「うん、正解。小林です」

「余ったのが木村です。余り物です。さすが存在感ない男ですね」

「なんだと!!」


 あわわ、どうしよう。村岡さんの言葉に木村さんが席を立って詰め寄る。


「だいたいなんでテレビ電話するんだよ。美織使って卑怯だぞ」

「そんなことないですよ。でも独身の木村にはできないですね。独身で奥さんがいないから椿ちゃんに木村の話はなにもされないです」


 ど、どうしよう。どうして喧嘩になってしまったんだろう。


「あ、あの……木村さんの話も聞きますよ。明るくてムードメーカーだって」

「ほら見ろ村岡。卑怯な手を使わなくても僕みたいに日頃の行いが良いとこうやって好印象持ってもらえるんだよ」

「馬鹿ですか?そういう話を聞いたというだけで良くも悪くも思われてません」

「ちょっと2人とも、椿ちゃんが困ってるからやめな」

「関さんの言う通りだよー。自己紹介も終わったし椿ちゃんが座る席を決めようよ」

「琉依さんなに言ってるんですか!?全然自己紹介してないですよ!!」

「俺なんてガラが悪いでクイズじゃねえって言っただけだろ」

「また僕たち琉依の会社仲間組の立場が低くなっちゃうね」

「隼人くんの時もそうですが特筆すべきことがないんです。冴えない社長と謎な副社長と馬鹿な経理部長で」

「冴えない……」

「謎かなあ……」

「馬鹿馬鹿ってお前に言われたくないんだよ!!」

「ねえ、とりあえず椿ちゃんはここで良いよね」

「え?」


 急に竜二さんに話を戻されて戸惑う。竜二さんはこの口論みたいなのをまったく気にしてないみたいに椅子を引いて私に座るように促す。


「もう1回考え直しましょうよ!!椿ちゃんがよく知らない人だと緊張するからってこういう席順にしたのに関係ないじゃないですか!!」

「決めたんだからこのままで良いだろうが」


 木村さんの言葉に竜二さんは大学に講義しに来てくれた時みたいに喋る。普段の優しい竜二さんも素敵だけどこういうのも素敵だなあ。


「そうだよ。椿ちゃんお義父さんの隣嫌なの?せっかく直前まで席順決まらなくてお義父さんと竜二さんで押し通したのに」

「え、そうなんですか?で、でも隼人さんと仲直りしてほしいと思って……」

「俺と?誰が?」

「だから隼人さんとお義父さんが」

「琉依さん隼人くんと喧嘩してるんですか?ざまあみろですね」

「え、僕隼人と喧嘩してるの?」

「椿、なんでそう思ったのか話して」


 隼人さんはそう言いながら私の頭を撫でる。なんだかやっぱりピリピリしてるみたい。そんなに嫌悪になってるのかな。


「つばきー」

「あ、ごめん。えっと、この前のせいでお義父さんが隼人さんに怒ったから仲悪くなっちゃったのかと思って」

「え?そんなことないよ」

「そうなの?でも隼人さんイライラしてたよ」

「親父に怒られて俺が怒るわけないでしょ」

「昔怒られて拗ねたけどね」

「そんなことないですよ」


 関さんが言うのはあの誘拐未遂事件のことかな。隼人さんは首をかしげて不思議そうにする。


「じゃあどうして隼人さんピリピリしてたの?」

「言ったでしょ。親父が来たくて来たからって」

「良いんじゃないの?」

「親父面倒でしょ」

「なんで?」

「お義父さんがお義父さんがって」

「お義父さんでしょ?」

「親父椿にお義父さんって呼ばれるのが嬉しいからって普段自分のこと僕って言ってるのにお義父さんだから椿にこれしてあげるんだとかお義父さんだからってうざくて面倒なんだよ。明日会うのにお義父さん面して椿が心配だからって」

「面って……。本当のお義父さんだよー」

「わかった。隼人さんお義父さんが私のことばかりだから寂しくなっちゃったの?」

「そうなの隼人!!」

「ちがーう!!」


 違ったのか……。やっぱり隼人さんの考えを理解するのって難しいな。


「これは厄介だな……」

「ただのド天然馬鹿の美香さんとは違った厄介さですね」

「これは勘違いしやすいのもわかる……」

「よし、ここは僕の出番!!」

「木村はやりすぎるから余計なことをするな」

「ん、やりすぎは良くないね。椿ちゃん、とりあえず琉依と竜二の間に座って。隼人くんはこっちね。村岡はもう料理出して良いって言ってきて。椿ちゃんに隼人くんの考えがわかるようになるコツを教えてあげるよ」

「え!?コツがあるんですか!?」

「うん。知りたい?」

「知りたいです!!」


 いくら話をしてもなんだか噛み合わない感じがする。コツがあるなら知りたい。関さんに言われて私はお義父さんと竜二さんの間に座った。




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