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「勘違いですれ違った恋」番外編  作者: 柏木紗月
新婚生活スタート
29/62

未来の家庭像


 金曜日に私は人生で初めて専門店で下着を買った。その前にもう一度由紀たちに聞いて、もらったアドバイス通りに店員さんに、夫にドキドキしてもらえるような清楚だけどイケイケな下着を探してますと言ったらすごく爽やかな笑顔でお手伝いさせていただきますと言われあれよあれよという間にいろいろ試着させられ結果レースの下着を2つそれぞれ微妙にデザインの違う、黒いのと白いのを買ってくたくたになりながら家に帰った。買ったは良いけどいつ着ようと考えて今日は土曜日。和食メニューを詰めたお弁当を2つ作って私は隼人さんと小学校に来た。


「椿、あいつらが生意気なこと言ったらすぐ叱るからね」

「もう、何度も言わないでよ。良い子たちなんでしょ?」

「違うよ、生意気な悪ガキなんだってば」


 そう話しながら体育館に入ると、あーという声と一緒に3人の子供たちが走ってきた。


「「「こんにちはー!!」」」

「あ、こんにちは。元気だねー」

「僕和哉!!」

「僕琢磨!!」

「亮!!」

「和哉くんと琢磨くんと亮くんだね。隼人さんからお話聞いてるよ」

「僕たちも椿ちゃんの話たくさん聞いてるよ!!」

「ほんとー?どんな話だろー」


 拓哉くんが言ってくれる。小さい子ってやっぱり可愛いなと思いながら隼人さんを見るとなぜか口を少し開けてぼんやりしてる。


「あのねー!!隼人くん椿ちゃんのこと考えていつも笑ってるよー」

「琢磨くん、ほんと?」

「ほんとほんと!!だけど僕たちが遊んでって言うと付き合ってくれるんだよー」

「そっかー優しいねー」

「ねー」

「おい、おま「隼人くん僕隼人くんのロングシュートできるようになりたいから今日も教えてねー」……どういうつもり?」

「なにがー?椿ちゃん見ててねー。隼人くんとっても上手なんだよ。僕も練習してるから見てほしいな、ね?良いでしょ」


 亮くんの無邪気さにあわあわしてしまう。可愛い。


「うん、見てるよ。頑張ってね」

「ありがとう!!じゃあねー!!」


 亮くんはそう言うと隼人さんの手を引いて和哉くんと琢磨くんと一緒に走っていった。良い子たちだな。可愛いなと思っているとお母さんたちに声をかけてもらった。下にいると危ないからと上に上がらせてもらった。

 和哉くんと琢磨くんは6年生、亮くんは5年生。隼人さんはいつも低学年の子たちに教えて高学年の子たちが試合形式の練習を始める時に指導に入るみたい。プレーをしてるわけじゃないけどその姿は高校生の時と重なる。これは隼人さんも知らないだろうけど私が隼人さんのバスケをしている姿を見たのは練習試合を見に行った時だけじゃない。放課後に若菜が先生に捕まって怒られてる時とか若菜が昴くんと早く家に帰らないといけないんだって別々に帰ることになった時とかほんの少しだけ体育館のそばで遠目から隼人さんの姿を見ていたことがあった。今思えば私も初めて隼人さんに会った時から隼人さんに夢中になってた。

 そんなことを思い返しながら亮くんの頭をわさわさと撫でながら褒めてる笑顔の隼人さんを見る。そしてボードを使ってなにか真剣な顔で話してる隼人さん。

 うーん……。なにしててもかっこいいな。あんなに素敵な人が旦那さんだなんてやっぱり不思議だ。ぼーっとしながら見ているといつの間にか練習が終わったみたいだ。下に降りようと思っていると小さな男の子が駆け寄ってきた。


「椿ちゃんお昼一緒に食べよ?」

「あ、うん。えっと、なに君かな?」

「俊也!!」

「そっかー俊也くんかー」


 俊也くんは3年生。隼人さんの話でもよく聞いてる子だ。私は俊也くんの小さな手に引かれて下に降りる。


「俊也、勝手に椿のとこ行かないで」

「どうしてー?呼びにいってあげたんだよ?」

「俺が行くから良いの」

「だって隼人くん話してたよ」

「話終わったら呼びに行こうとしてたの」

「は、隼人さん俊也くん来てくれて嬉しかったよ。休憩なの?」

「そう「椿ちゃんこっち来てー」琢磨……」


 琢磨くんに手招きされて体育館のステージの上に行く。


「隼人くんにお弁当って聞いたよ!!見せて見せてー!!」


 亮くんは女の子みたいに可愛い顔をしてるしなんだか可愛いなと思いながら鞄からお弁当箱を取り出す。


「はい、これだよ」

「わー美味しそう!!卵焼き食べ「和哉、自分のがあるでしょ」良いじゃん、椿ちゃんお願い!!」

「ふふ、良いよ」


 そう言って和哉くんのお弁当箱に卵焼きを入れる。するとすぐ隣に身体を寄せて隼人さんが座る。


「減るもんじゃないんだから怒んないでよー」

「馬鹿。減ってるだろ椿のおかずが」

「卵焼き1つくらい別に大丈夫だよ」

「じゃあ椿ちゃんに僕のコロッケあげるよ、はい」

「わーありがとう!!これ美味しいよね」


 和哉くんにもらった冷凍食品のコロッケを一口食べる。


「学生の時みたいだよ。うちのお母さんほとんどこういう冷凍食品でお弁当作っててね。冷凍食品は冷凍食品で侮れない美味しさがあるよね」

「椿ちゃん僕もハンバーグあげるよー」

「じゃあ琢磨くんにはどうしよう、選んで良いよ」

「椿ちゃん僕もー」

「あ、待って待って。僕も」


 そうやって琢磨くんと亮くんと俊也くんとお弁当のおかずを交換した。


「えへへ、なんだか懐かしい。若菜ともお昼交換こしてたんだよ」

「若菜のとこはお弁当なんて作れないよ」

「そう、お総菜パンとか菓子パンとかね。一口ちょうだいって言って私のおかずを渡してたり」

「拗ねるなら隼人くんも交換するー?」


 和哉くんが提案してくれるけど隼人さんはムッとする。


「俺は椿のが良いの。初めてのお弁当なんだから。次いつ食べれるかわからないんだから味わって食べないと」

「朝のと同じなんだけど」

「朝ごはんは朝ごはん、お弁当はお弁当だよ」

「……これから平日お弁当作ろうか?」

「え!?本当!?」


 期待の込められた瞳に思わずびっくりしてしまう。


「ま、毎日は難しいかもしれないけど」

「作れる時だけで良いよ!!」

「本当?こういう冷凍食品混ぜて良い?」

「冷凍食品レンジで温めたりするんだから椿の手料理だよー」

「そ、そっか。じゃあ月曜日から作れる時作ってみるね」

「やったー!!」

「きも「あーあー!!」」


 喜んでくれる隼人さんに嬉しいと思うのと同時に和哉くんが大きい声を出して驚くと和哉くんが琢磨くんの口を手で塞いで亮くんが琢磨くんにのし掛かってる状態になってる。


「ど、どうしたの?」

「い、いや、琢磨が肝を食べたいって」

「そう、砂肝をね!!」

「砂肝?しぶいね」


 小学生も砂肝食べるんだな。そのあとも琢磨くんたちと賑やかに話しながらご飯を食べて午後の練習を再開するというから私はまた上にあがる。

 隼人さん楽しそうにしてるなあ。子供たちと一緒にいる隼人さんは普段とはまた違ってる。コートでもさっきのお昼の時でもなんだか私に見せるのとは違ってる。


「椿ちゃん」

「え、あ、はい?」


 ぼーっと眺めていたら名前を呼ばれてハッとする。挨拶だけ最初にしたお母さん3人だ。和哉くんと琢磨くんと亮くんのお母さんたち。


「隼人くんが退屈かもしれないからなにかないかって言うからこれ持ってきたのよ」


 そう言って手に持っていた袋を床に置いて見せてくれる。


「うちわにね、こうやって紙を貼り付けていくの」

「けど退屈してなさそうね。隼人くんに夢中で」

「え!?そ、そんなこと……」


 恥ずかしい。隼人さんをガン見していた自覚はあるけど。


「可愛いわねー」

「暇潰しは必要なかったみたいね」

「お邪魔だから退散しましょうか」

「いえ!!やらせてください!!やらせてもらえるならやりたいです!!」


 袋を持って引き上げてしまいそうなお母さんたちを慌てて引き止める。


「お手伝いしたいです」

「あらあら、旦那さんの役に立ちたいって?」

「え!?そういうことじゃ!!」

「あんまりからかうと隼人くんに怒られるわよ」

「そうね。つい、椿ちゃん可愛いんですもの」


 可愛くないのにお母さんたちはケラケラと笑って隣に座る。教えてもらいながらうちわに紙を貼り付けていく。


「椿ちゃんって聞いていた通り可愛いのねー」

「か、可愛くないんです」

「そんなことないわよ。健気に旦那さんについてきて可愛いわー」

「つ、ついてきてすみません……」

「あら、そういうことじゃないわよ。むしろ大歓迎よ。こんなに可愛い女の子とお話できるんだもの」

「そうそう、ここのお母さんはみんなお喋り好きなの」

「隼人くんにもいつもうんざりされてるわよね」

「そうよねー。けど隼人くんは優しくて良い子だから微塵にも面倒だって顔に出さないでねー」

「あら、でもいつもぐったりしてるわよ」

「そうかしらー?あんなに走り回って体力もあるのに私たちとのお喋りがそんなに大変なのかしら」

「そりゃ大変よね」

「大変よー」

「そうね、確かに!!」


 あはははは、と笑う3人。面白い人たちだな。


「隼人くん言ってるわよ。母親って強いし恐ろしいとか」

「そう、旦那とイケメンは別バラとか言い出さないと良いなとか」

「若い男の子の世話焼かないでほしいなとか」

「あらやだ、それ私たちね」

「だから隼人くん椿ちゃんが私たちみたいにならないと良いなっていつも遠い目してたんじゃない」

「椿ちゃんはきっとそのまんまよねー」

「ほんと、無垢って感じで隼人くんがベタ惚れしてるのもわかるわー」

「あ、あの……」


 隼人さんも同じ気持ちなのかな……お母さんたちってなんだかすごい。


「椿ちゃんはずっと純粋で可愛らしいお母さんになりそうだし隼人くんも優しくて良いお父さんになりそうよね」

「そうよねー。隼人くんって褒める時はすごく褒めてくれるしいけないことはしっかり叱ってくれるし」

「けど子供たちとじゃれてるとこ見るとなんだか可愛いわよね」

「うちのお父さんも子供っぽいからそんな感じよ。良いお父さん」

「あら、それならうちのパパも子煩悩よ」

「うちだってそうよー」

「ふふ、みなさん素敵なお父さんなんですね」

「そうなのよ。隼人くんも絶対素敵なお父さんになるわよー」

「良いわねーイケメンで優しいパパ。子供が羨ましいわー」

「良いわよねーきっとたくさん一緒に遊んでくれるわよ」

「遊ぶだけじゃなくて進んで育児やってくれそう」

「あー助かるわーそれ」

「オムツ変えてくれたり寝かしつけてくれたり。むしろお母さんより上手にできたりして」

「それは複雑だわー」


 お母さんたちの話を聞いているとわくわくする。隼人さんと子育て。想像が膨らむ。

 隼人さんに似た男の子が2人、その下に隼人さんに似た女の子が1人。あれ?隼人さんの女の子版は若菜か。じゃあ若菜に似た女の子が1人。朝ご飯を作る私のお手伝いをしてくれる長男にお皿を渡す。時計を見るとそろそろ時間。次男と長女にお父さん起こしてきてとお願いすると走ってそのままの勢いで隼人さんの上に飛び乗ったみたい。賑やかな話し声を聞きながら鼻歌を歌いながら朝ご飯の準備を終える。隼人さんは長女を抱っこしながら私におはようのキスをしてくれて長男にもしようとするとその子はつんとして私のそばに来て。隼人さんはちょっと苦笑いするけど私が促すとお父さんおはようって言ってくれたその子の頭を撫でておはようと言う。5人でお話ししながら楽しく朝ご飯を食べて仕事に行く隼人さんを見送る。行ってらっしゃいと声を揃えて言う私たち。んん?1人だけ泣きそう。そうかと思ったら次男の頭からうさぎの耳が生えた。え、なにこれ可愛い。お父さん行かないでと泣き出してしまう次男を隼人さんは抱き上げてあやすけどなかなか泣き止まない。寂しいともっと泣き出してしまう。大変だ。この子は隼人さんにそっくりだけど私に似て寂しがりみたい。なんて可愛いんだろう。そう思ってると長女がうさ耳を引っ張り始める。ひゃー!!なにするの!?意地悪しちゃ駄目だよって言うとお父さんもお母さんも困ってるもんと言う。なんて優しい子なんだろう。でもお兄ちゃんに意地悪しちゃ駄目。そんなこんなでどうにか隼人さんをお見送りしてみんなが遊んだりお勉強してるのを見ながら私はお洗濯をしたりお掃除をしたり。そうしてると3人は私の方が気になったみたい。長男と次男はお手伝いしてくれて長女は掃除機をかける私の邪魔をしてくる。危ないから向こう行っててと言うとお母さんが怒ったと騒ぎ出す長女。……これでは若菜だ。若菜にそっくりな若菜だ。


「椿ちゃん、椿ちゃん」

「え?」

「あ、やっと気付いたわねー」


 私はハッとした。うちわに紙を貼ってる最中に未来の家庭を想像して手を動かしてなかった。


「ご、ごめんなさい」

「良いのよー途中まで良いペースでやってたのに急に止まっちゃったから何かと思っちゃったけど」

「でも全部出来上がったわ。手伝ってくれてありがとね」

「じゃあまた隼人くん見ていてねー」

「あ、は、はい。ありがとうございました」


 あんまりお役に立てなかったけどお母さんたちは私に手を振って下に降りていった。私は再びコートに目を向けて隼人さんを目で追い始めた。



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