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「勘違いですれ違った恋」番外編  作者: 柏木紗月
新婚生活スタート
28/62

私のしたいこと


 私はそわそわしながら隼人さんの帰りを待っている。ご飯を作り終わりそろそろだと思っていると玄関から音がして急いで玄関に走る。


「おかえり」

「ただいま」


 いつものハグをする。


「はー……毎日帰ったらこうやって椿が出迎えてくれたら1日の疲れが吹き飛ぶのになー」


 私は今週忙しくて帰りが遅くなってしまっている。隼人さんが先に帰ってきてご飯を作って出迎えてくれていつものハグとキスをしてくれていたんだけどそう言われると隼人さんより早く帰ってきたいと思う。営業事務は私と青木さんしかいないから忙しいんだけど。先週は青木さんが気を使ってくれて早く帰れていたけどずっと甘えてられないし。

 キスをしたあと隼人さんの鞄を持って後ろを歩いて寝室に向かう。そうだ、私がそわそわしていたのは隼人さんに聞いてもらいたいことがあったから。隼人さんも喜んでくれると思って気持ちを高める。

 寝室につくと私は後ろを向いてる隼人さんに言う。


「隼人さん、隼人さん」

「んー?って着替えるけどリビング行かないの?」

「それより聞いてほしいの!!着替えてて良いから!!」

「え、良いの?」

「うん!!」

「そうなの?じゃあ……」


 スーツを脱ぎ始める隼人さんに私は今日の出来事を話す。


「今日保険証と社員証を受け取ったの!!佐々木椿になってるよ!!」

「そっか、新しいのできたんだ」

「そうなの!!会社のメールも佐々木にしたし会社のみんなが佐々木さんって呼んでくれるのにももう慣れたよ!!最初はうっかりして気付けない時もあったけどばっちり!!あとは免許証とかクレジットとかパスポートとか……早く佐々木さんに変わったのができないかなー」

「下も脱ぐけど良いのかな……」

「あとね、入社した時から知ってる取引先の人が今日来たんだけど、社員証を見て結婚したんだって言ってくれてね。指輪も褒めてくれてね、嬉しかったの!!幸せオーラ満点だって!!」

「そっか。良かったね」

「うん!!」


 着替えが終わった隼人さんが洗面所に向かうから私はその間にご飯をよそる。そして椅子に座って2人でいただきますを言う。


「うん、美味しい。毎日毎食椿のご飯が食べられたら良いなー」

「は、隼人さん……」

「でも仕事があるんだから仕方ないよね。それで、まだ嬉しかったことがあるんでしょ?」

「う、うん、あのね、よく一緒にランチをしてる堀内さんって人がいるんだけどね。今日結婚祝いにってランチ奢ってくれてね、それから営業課のみんなが結婚祝いに飲みに行こうって……誘って……くれたんだけど……行かない方が良いよね」


 言ってる途中でこれ駄目なやつだったと思う。結婚祝いということで喜んでたけどこれじゃ隼人さんにご飯を作ってあげられない。


「なんで?行っておいでよ。お祝いしてくれるんでしょ?」

「えっと、ご飯作ってから行こうか?」

「良いよ良いよ。なんか作って食べるし」

「あ、隼人さんも一緒に行く?」

「ううん、楽しんできな」

「うーん……21時には帰ってくるね」

「うん。でも遅くなるなら迎えに行くよ。門限はなし」

「あ、門限なしなんだ」

「俺がいるからね。21時まで飲むことになりそうだったら迎えに行くから連絡して」

「わかった」

「そうだ、土曜日なんだけど昼過ぎに翔太くんのとこ行こうと思ってたんだけどバスケクラブの方からコーチが風邪で寝込んでるから来てほしいって言われて行かないといけないことになったんだ。9時からお昼挟んで15時まで。16時に翔太くんのとこ行くことにしたからそれまで待っててくれる?」


 バスケクラブ……。ついていきたいって言ったら駄目だよね。図々しいよね。それに遊びに行くわけじゃないんだから……。


「椿?どうかした?」

「あの……えっと……」

「うん」

「ついていっちゃ駄目だよね。あ、駄目だったら学校の近くにカフェとかあったらそこにいるから途中まででも……」

「え、なんで?良いよ、一緒に行こう」

「え!?良いの!?」

「うん」

「聞かなくて良いの?先生とか」

「良いの良いの。お母さんたちとか兄弟とかみんな自由に出入りしてるんだから。事前に言っておけばなんの問題もないよ」

「そうなんだ」

「でも良いの?ドラマも録画してるまま観れてないし買い物も1人で行きたい所あるんじゃない?」

「ドラマは日曜日一緒に観ることにしてるしお買い物は……」


 どうしよう。下着を買わないといけないというミッションがあるんだった。仕事が終わったらスーパーに行ってすぐ帰ってきてるしいつ買えば良いんだと思ってたところだった。


「俺に付き合わなくて良いから。そうだ、金曜日遅くなりそう。帰ってくるの21時になると思うからゆっくりなにかしたら?」

「うーん……うん。土曜日お昼はいつもどうしてるの?」

「お弁当買ったりおにぎり買ったり」

「は!!お弁当作っても良い?」

「え、良いの?」

「駄目なら作らないけど……」

「駄目じゃないよ。ありがとう」

「じゃあ金曜日お弁当箱買っておくね」


 優しく笑う隼人さんにハッと思い付く。


「無理してないよ。私がしたいの。本当だよ。私じゃなくなったり壊れちゃったりしないよ」

「……やっぱりこの前俺変なこと言った?」

「変なことじゃないよ」

「そう……」


 どうしたら良いんだろう。私がしたいって本当に思っててもそれが無理してるように見えちゃうみたい。

 話し合いだ。隼人さんにちゃんとわかってもらわないと私が何を言っても高校生の時と同じ恐怖感を感じてしまうかもしれない。食べ終わって席を立とうとする隼人さんをひき止める。


「椿?」

「話し合いするの」

「話し合い?なにを?」

「えっと……やっぱり向こう……」


 席を立とうとしていたのを止めたのに立ち上がらせておかしな感じだなと思いながらソファーに隼人さんを座らせる。そしてそのすぐ隣に私も座る。


「うん、これが良い」


 テーブルに向かい合って座るのが話し合いな気がするけど私たちはいつも隣同士で触れる距離で話していたから。そう思いながら隼人さんの手を握る。


「私が私のしたいことをしてないと怖い?隼人さんに合わせてるから」

「……高校生の時は怖かったけどなにも知らなかったからだよ。今は平気」

「嘘だよ。隼人さん、私のしたいことは隼人さんと一緒にいろんなことをすることだよ。この先ずっとずっと隼人さんのそばにいることが私のしたいこと。隼人さんに合わせてるなら隼人さんに迷惑がかかると思ってついていこうとしないよ。わかる?」

「うん」

「1人で出かける時は言うし自分の時間は自分で作れるよ。友達とだって連絡とってるし。でも隼人さんといたいの。1日中何もなかったら毎日ずっとくっついてついて回りたいよ」


 身体を傾けて頭を隼人さんの体に擦り寄せる。


「……できない」

「え……?」


 まさか拒絶されるなんて思わなくて固まっていると隼人さんにぎゅっと抱き締められた。


「お義母さんに甘やかしすぎちゃ駄目って言われたけどできないよ……」

「え、お母さんって私の?」

「うん。甘やかしてると出張で一緒にいられない時うさぎみたいに寂しくなっちゃうからほどほどにしないといけないんだって」

「もー!!お母さん!!そんなの聞いてないよ!!」

「毎日電話して愛してるって言うけどいつもついて回ってたら俺がいない時寂しくなっちゃう」

「だ、大丈夫だよ」

「困った……どうしよう……甘えられるのは嬉しいのに甘やかしすぎちゃ駄目……」

「そ、そんなに困らなくても……私だって優菜さんに隼人さん甘やかしちゃ駄目って言われてるよ」

「そうなの?もー優菜さんは意地汚いんだから。嫌がらせしてばっかり」

「そうじゃないよ。ほら、お互い甘やかしちゃ駄目って言われてるんだからお互いに気を付けたら良いよ」

「でもそれってどうしたら良いの?」

「わからないけど……今度考えようよ」

「一緒に?」

「うん、一緒に」

「そっか。椿」

「なーに?」

「飲みに行って良いけど堀内ってのと三輪ってののそばに行っちゃ駄目だよ」

「え、三輪さんのこと言ったっけ?」

「椿の周りにいる男のことは間宮さんに聞いてるんだよ」

「な……大丈夫だよ。堀内さんは既婚者だから」

「ダブル不倫は駄目」

「しないってば。それに三輪さんは三次元の女の子に興味ないから」

「それはアニメと漫画の女の子が好きってことだよね」

「そうそう。知ってるんだ」

「うん、まあね。でも油断しちゃ駄目。椿はアニメだろうとリアルだろうとどんな女の子より可愛いんだから」

「そんなこと言うのは隼人さんだけだよ……」

「危ないから間宮さんによくよく注意しておくように伝えておくから行っても良いけど青木さんの近くにいてね」

「……それであっさり行って良いって言ってくれたんだ」

「当然だよ」

「あ、そうだった。お義母さんに甘えられたら隼人さんは癒されるって言われたんだった。癒され奥さんを再開するよ」

「だから普通にいつも癒されてるんだけどな」

「甘えすぎだと思ったら隼人さんが止めてね。隼人さんが甘えすぎだと思ったら私が止めるから」

「うん、わかった」


 甘えるというのは自分のしたいことをして言いたいことを言うということなのかはわからないけど言ってみる。


「隼人さんの膝乗りたい」

「へ!?」

「日曜日乗ってって言われて乗ったよ」

「うそー……覚えてない。乗って乗って」

「えっと、いざ乗ってみるとなったらどうしよう……前向けば良いのかな……どっちにしよ」

「もー早く」


 もたついてたら隼人さんに促されて横向きに座る。


「腕首に回して」

「え、えっと、こう?」

「そうそう」


 結局隼人さんの言われるままに腕を回し、キスしてと言われてキスをしてその調子でいろいろ言われるままにいろいろしてしまった。

 結局いつも通りただのイチャイチャになってしまったけど隼人さんの不安は大丈夫なのかな。けどイチャイチャし終わったあとに隼人さんは言ってくれた。


「高校生の時とは違うよ。心配してくれてありがとう。もう大丈夫」


 それを聞いて安心する。まだわからないけどいつか仕事を辞めて隼人さんの帰りを待つ専業主婦になることも考えてみよう。いくら隼人さんの収入が多いとは言っても何があるかわからないからまだ決定はしないけど選択肢の1つとして考えてみよう。隼人さんが本当は何を望んでるのかもっともっと考えよう。私がそう言っても私の好きなことを奪ってしまったと隼人さんが思ってしまうことはきっとない。隼人さんが大丈夫と言ってくれたんだから大丈夫。そして酔っていても……ううん、胸のうちを教えてくれる酔ってる時に、家に帰りたくないなんて言うことがないようにしないと。お義母さんのようにはまだなれないかもしれないけど家に帰りたいと思ってもらえる安らげるおうちにしたいから。まだまだだな。お義母さんは本当にすごいんだなと改めて思う。若菜と昴くんと一緒に住むという話も、若菜は隼人さんのことを考えてくれてるからどうにかみんなが納得できるように話し合いができると良いな。きっと一緒に住めるようになったら隼人さんにとっても良いはず。幼い時から隼人さんのために一生懸命だった昴くんも、心細い時に見つけてくれて元気付けてくれておんぶしてくれた隼人さんの優しさを知っていてそばで隼人さんを見てきた若菜もいれば隼人さんも毎日楽しく過ごせる。なにか良い方法はないかな。第二回の話し合いがいつかわからないけどそれも考えよう。



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