辛い過去
2019年8月14日内容修正しました。
家に帰ると先にお風呂に入って良いと言われてどうしようと迷っていたらお義母さんがはやとさんの髪の毛を触って切ったらと言ったり楽しそうに話していたから私は先に入ることにした。
そしてお風呂から上がってリビングに入ると賑やかな……修羅場……みたいな状況になってた。
「駄目!!絶対駄目!!」
「駄目じゃないわよーもう決めたんだもの!!」
「決まってないよ!!ここは俺の家だから俺がルール!!」
「そんなの知らなーい!!」
「あ……あの……どうしたんですか?」
私はソファーに座ってのんびりテレビを見ている優菜さんに声をかける。
「椿ちゃんも私たちと一緒に寝たいよね?」
「え?」
「椿ちゃーん!!ねー!!一緒に寝よー!!」
「駄目だよ!!椿はいつも通り俺と一緒!!」
「ええ……?なんでこんなことに……?」
「隼人が毎日してるって」
「ぎゃー!!なんてことを喋ってるんですか!?」
「本当のことを言っただけだよ。うちはオープンだって言ったでしょ」
「そ、そんな!!オープン駄目です!!」
「やだ」
「え!?」
「敬語」
「え!?オープン駄目……だよ」
「わかった」
すんなり頷く先輩……じゃなかった、はやとさんが可愛いと思ってしまうけどそういう話ではない。
「本当にわかってます……わかってる?駄目なんで……駄目だよ」
「うん。じゃあ一緒に寝よ」
「だから椿ちゃんは私らと一緒だって言ってんでしょうが」
「痛いってば」
また優菜さんに頭を叩かれるはやとさん。
「たまには普通にゆっくり寝たいよね椿ちゃん」
「椿、ギュッてするだけ。それなら良いでしょ?ね?」
「えっと……」
どうしよう……。先……はやとさんにだ……抱いてもらえるのは嬉しいけど毎日なのかなって思ってたところではあったし……でも嬉しいのは嬉しいし……。
「ねえ、今夜教えるって言ったでしょ」
「だー!!だから耳元で囁かないでください!!じゃなくて囁かないで!!」
「それに1人で寝れないよ。椿が一緒じゃないと」
う……可愛い。はやとさんの可愛い攻撃だ。
「あら大変。出張の時どうする気?」
「椿つれてく」
「え!?」
「そんなの無理に決まってるでしょ。椿ちゃん、大変だわ。隼人今まで1人で寝てたのにもう椿ちゃんと一緒じゃないと寝れないって。出張先のホテルで寝れなくて寝不足になったらどうしよっか」
「そ、それは駄目です!!せ、はやとさん駄目です!!」
「よし、じゃあ特訓しないとね」
「そうですね!!はやとさん特訓しま……しよう。頑張って」
「そんな……う……うん」
「良かった。これで寝不足で仕事に支障が出なくてすみます。さすが優菜さん、はやとさんのことを心配してくれてたんですね」
「違「そうなのよー隼人の考えなんて黙っててもお見通しなのよ」」
「すごいです!!」
「ほら隼人、早く入ってきなさい乳白色のお風呂に。ぷぷ」
「なんで知ってるの!?」
「は、はやとさんごめんなさい。私が喋っちゃいました」
「そ、そうなんだ。良いよ。いつものことだから」
そうやって気を落として笑うはやとさんに申し訳なくなる。なにか元気になってもらう方法ないかな……。
「そうだ、コーヒー飲みま……飲もう。お風呂から上がったら」
「うん」
良かった。元気になってくれたみたい。先輩を見送るとお義母さんに呼ばれる。
「椿ちゃんコーヒーはこれー?」
「あ、そうです。やりますよ」
せっかくだからお義母さんと優菜さんにも飲んでもらおうとコーヒーメーカーでカフェオレを作ってテーブルに置く。
「美味しいー」
「さすが関さんが選ぶだけあるわ」
「これ関さんのおうちにもあるんだって。翠さんに聞いたのー」
「優雅で良いわね。私もアップルジュースとオレンジジュースじゃなくてコーヒーで午後のひとときを楽しもうかしら」
「私も私もー!!」
翠さんって関さんの奥さんかな。2人はふわってしててホッとする。
「そうだ。竜二さんに会ったんだって?」
「そうなんです。優しくて良い人でした」
「村っちが怒ってテレビ電話してきたんだってね。ウケる」
「村っち……村岡さんのことですね。美織ちゃん可愛かったです」
「美織ちゃん可愛いわよねー。元気いっぱいで子供の時の沙織ちゃんにそっくりなのよ」
「え、沙織さんって村岡さんの奥さんですよね。子供の時って昔から知ってるんですか?」
「沙織ちゃんって村っちの11下なの。美香がパーティーで小学生の沙織ちゃんと仲良くなったのよ。沙織ちゃん美香のこと大好きなんだ」
「初めてパーティーで会った時に小学校で遊んでるって遊びを2人でしてたのよー」
「人見知りだった沙織ちゃんが美香に会いたいからってパーティーによく来るようになってそこで村っちに一目惚れしたらしい」
「へー!!……あれ?小学生とお付き合い……?」
「そうじゃないのー。年が離れすぎてるから憧れかもってなってたんだけど20才の時村岡さんのお店にアルバイトで働きはじめて一緒に過ごしてるうちに好きって思ったんだってー可愛いでしょー」
「そうなんですねー。沙織さんとも話してみたいです」
「村っちもグダグダしてて4年前にようやく結婚したんだ。隼人のことが解決したからって」
「解決……?」
「あれ?これって話して良いんだっけ?」
「良いんじゃないかしら?駄目だったかしら?」
「ああ、良いみたい」
なんだかよくわからないけど優菜さんは携帯を見て言う。
「隼人もいろいろあってさ、村っちもだしみんな隼人に関わらないようにしてたんだよ」
「え、どうしてですか?でも小さい時から知ってるんですよね?」
「幼稚園の時くらいまではよく遊びに来てくれてたんだけどねー」
「私立の幼稚園で勉強があるでしょ。その頃からさっきも言った通りこいつ天才だって思ったんだ。けど村っちがプレゼントしてた幼稚園児向きじゃない難しい本をあっという間に読んで内容も頭に入ってて、隼人がつまらなそうにしてるって気付いちゃったのよ。ゲームもすぐクリアしちゃって興味なくなってたし本にも興味なくなっていくから気にしちゃって遊びにこなくなったんだ。隼人村っちのこと気に入ってたからそんなの気にしなくて良いんじゃないって言っても頑なでね。家族以外に壁を作ってるようになって村っちだけじゃなくて竜二さんとかみんなもひとまずそっとしておこうって会いに来なくなったの」
「……そうなんですか」
はやとさんは昔から頭がよくてなんでもできたって聞いたけどそれってはやとさんには辛いことだったんだ。村岡さんも竜二さんもみんなはやとさんのことを考えてそっと見守ってたんだな。そう思っているとはやとさんがお風呂からあがってきた。
「あら、思ったより早かったわね」
「椿コーヒー……ってなんで飲んでるの」
「別に私たちが飲んでても良いでしょー」
「椿一緒に飲むって……」
「は、はやとさん私ももう1杯飲みます……飲むから。ね、一緒に飲もうね」
「うん」
「お風呂大きいから2人で入れるよね」
「そうねー優菜と一緒に入ってくるわねー」
そう言ってお義母さんと優菜さんはお風呂に入りにいって、はやとさんはコーヒーを私の分も淹れてくれてソファーに座る。
隣に座る私の髪をそっと撫でてくれる手が優しい。
「なんの話してたの?どうせ俺の悪口だろうけど」
「そ、そんなことないで……ないよ」
はやとさんには言いづらい。それにまだ優菜さんとお義母さんに話をちゃんと聞きたい。はやとさんは私にはわからないくらい辛い思いをしていたんだと思う。優菜さんが話して良いんだっけって言ってたってことははやとさんが私には言わないようにみんなに話していたのかも。私に触れるのが怖くて苦しんでたのも言わないでいようとしていたし、はやとさんは私に自分の辛い気持ちを言いたくないみたい。はやとさんの過去を勝手に聞いてしまうのは罪悪感があるけどはやとさんは私に気を使ってごまかしちゃうかもしれないし……。
「椿?やっぱり悪口言ってたんでしょ。優菜さんは俺を貶すのが生き甲斐だからなー」
「そ、そんなことないよ」
「いや、そうだよ。優菜さんも若菜も意地汚い星の住人だよ。似た者親子だ」
「もう……それを言うならはやとさんも似た者同士で……だよ」
「ふふ……」
「ど、どうしたんで……どうしたの?」
はやとさんが急に楽しそうに笑い出す。
「昔の俺みたいだと思ってね」
どういうことだろう。首をかしげる私の頭をポンポンとしてから肩を抱き寄せてくれる。
「性格が悪い、口が悪い、取り柄は容姿だけより性格が良い、言葉遣いも丁寧、さらにイケメンっていう方が良いに決まってる」
「……はやとさん?」
「昴に言われたんだ。椿がどんな人がタイプかわからないけどって。まずその口の悪さと性格の悪さを直せってね。あの頃も優菜さんとかに協力してあげるって面白がって特訓されたんだよ。優菜さんとか若菜に怒鳴らないでやんわり文句を言うだけにするの苦労したよ。そんなんじゃ椿に嫌われるよって脅されてね。でもそのおかげで昴のお墨付きももらったよ。椿と離れてる間に戻っちゃったけどね」
そう言ってまた笑うはやとさん。
「騙してるみたいで嫌だったんだけど椿と過ごしてるうちに椿に見合う男になりたいって思ったから頑張ったんだ。そうだ、褒めて」
「え……?」
「買い物に行っては重いものを持たされて、椿と出掛けるときに荷物を持ってあげたら見直すんじゃないかとか言われて前が見えなくなるほど荷物を積まれたりもしたよ。酷いいじめだった。頑張った。褒めて」
「えっと……が、頑張ったね」
「あー1人でなんて寝れないよ。こっそり抜け出して来て」
「そ、それは……」
「駄目?」
「う……けど……けどはやとさんが仕事できなくなるのは困ります」
「ちぇー……」
「ごめんなさい」
「じゃあ今抱き締めさせて」
ふわりとシャンプーの匂いが香る。はやとさんに抱き締められるとすごく幸せ。
「は、はやとさん……」
「んー?」
「私はやとさんのことが知りたい……えっと、そういうのじゃなくて普通の……」
「なんでも聞いて良いよ」
「本当ですか?」
「うん。なんで?」
「だって辛いことないですか?」
「椿と離れていたこと以上に辛いことないよ」
「ごめんなさ「椿」謝るの禁止でした……禁止だったね」
「うん。でも多分さっきみたいな小さい時のことなら俺に直接聞いてもあんまり意味ないかも。間違ってるってよく言われるし。嫌みでよく覚えてる優菜さんか俺とのメモリアルノートなるものを書いてる昴に聞いてみて」
「メモリアルノート?」
「俺が間違って覚えたり記憶から抹消してくから忘れないように記録をつけるって確か小4か5年の時くらいから書いてるから」
「聞いて良いんで……良いんだね」
「良いよ。俺のこと嫌いにならないって約束してくれるならね。約束してくれるならキスして」
はやとさんにゆっくり近付く。
「あらあら、お邪魔だったわ」
「ラブラブねー!!」
リビングに入ってきた優菜さんとお義母さんに驚いてソファーから立ち上がる。
「早すぎるにもほどがあるだろ。……良いところだったのに」
「面白いわねー。なんて間が悪いのかしら」
舌打ちをするはやとさんに優菜さんが悪い顔をして言う。私は恥ずかしくてうつ向いてしまう。
「椿」
「は……んんっ」
はやとさんの声に反応して顔をあげるとキスをされる。
「もう!!お義母さんたちいるのに!!」
「別に気にしてないよ」
「そうよー気にしないわよー」
「椿ちゃんお顔真っ赤ー可愛いー!!」
「お、お義母さん……」
私オープンに慣れる気がしない……。




