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「勘違いですれ違った恋」番外編  作者: 柏木紗月
新婚生活スタート
14/62

先輩の話


「いらっしゃーい。待ってたわよ。さあ入ってちょうだい」


 真っ白な広々とした玄関に豪華なシャンデリア、高そうな絵、高級そうな壺。想像していた豪邸そのもので逆に興味を持つ。出迎えてくれた佳代子さんにお邪魔しますと伝えて興味津々でそれらを見つめる。


「その壺は300万するものなのよー」

「え!?」

「嘘ー。ネットで3000円で買ったの。高みえするかなって」


 一瞬ヒヤッとして離れたけどホッとする。


「佳代子さん、椿驚かせないでください」

「ふふふ、隼人くんを驚かせようと思って2年前から置いてあるの。そしたら玄関を通る度にびくびくしながら歩くから面白くって半年経ってから300万じゃなくて3000円だって教えたのよ」

「酷いいじめでしょ。壊したら大変だって神経すり減らしてたのにさ」

「あらら、そうなんですね。そんな先輩見たことないです」

「本当に面白かったのよー」

「佳代子さん、もう良いですから」


 そう言って家主より先にずんずん歩いていってしまう先輩。お義母さんたちにからかわれてる時とも違う先輩が見られて嬉しい。

 リビングに案内してもらうとそこには人懐っこい笑顔で手を振る2人がいた。


「初めましてー椿ちゃん。翔太でーす」

「洋子でーす。わー椿ちゃん可愛いー」


 間延びしたふわっとした雰囲気の2人に思わず笑ってしまう。


「初めまして。椿です。よろしくね翔太くん、洋子ちゃん」


 2人とも平均身長より高いみたいで子供らしい笑顔だけど大人びた顔立ちをしていた。竜二さんが彫りの深い顔をしているから似てる。


「30分くらいで帰ってくるみたい」

「帰ってこれるんですね」


 翔太くんと洋子ちゃんを観察しているうちに先輩は竜二さんが帰ってこれるのか聞いたみたい。


「椿ちゃん招待するのに成功したわって言ったらでかしたって。絶対仕事終わらせるって」

「竜二さんらしいですね」

「そうね。あ、椿ちゃんも座って。肉じゃが作りすぎちゃったの。たくさん食べてね」

「あ、はい。ありがとうございます」


 そしてよそられた肉じゃがメインの料理に実家の料理を思い出す。人が作ってくれる家庭料理って温かい。私もこういう料理を先輩に毎日食べてもらいたいな。


「いただきます。……美味しいです!!」

「良かったわ。隼人くんもよく肉じゃがの日に来てるからほとんど毎回肉じゃがだったわよ」

「翔太くんに勉強教えたあとにご飯をご馳走になってから帰ってたんだよ。でも佳代子さん献立考えるのが面倒だって1週間に1回は肉じゃがの日なんだ。だから来ると毎回肉じゃがだったよ」

「他にも作ってるんだけどね。それに優菜ちゃんだって親子丼しかほとんど作らないし、なんでも良いのよ。隼人くんあればなんでも食べるもの」


 さっき話した悩み事のことだと思ってありがたくなる。先輩になんのことと聞かれた私は迷っていたことを話す。


「椿の作る料理なら和食が続いたってなに料理だって嬉しいよ」

「でもそしたら先輩の好きな料理はなんですか?」

「椿の作るものならなんでも好きだよ」

「うーん……本当に好きなものはなんですか?」

「だからなんでも好きだって」

「隼人くん椿ちゃんの好きなものが好きなんじゃない?」


 これでは先輩の好みがわからないと思って困っていると翔太くんが言ってくれた。


「私の好きなもの?」

「オムライスとかーそれに椿ちゃんが食べたかもしれないものも食べたがったよ」

「ブッ」

「わー隼人くん汚いー」


 翔太くんの言葉に首をかしげると同時に先輩が吹き出した。洋子ちゃんが苦情を言って佳代子さんが先輩にティッシュを渡す。


「そ、それはわざわざ言わなくても良いんじゃない?」

「隼人くんなんでも話すって言いつつ自分に都合が悪くなりそうな話しなそうだもん」

「会ったことないのに昴に似てきたね」

「隼人くんを理解してきたって言ってほしいなー。ねー椿ちゃんも聞きたいよね?」

「え、うん。聞かせてくれるの?」


 そして翔太くんは先輩と一緒にオープンキャンパスに行った話をしてくれた。


「椿ちゃんが通ってた気がするからどうしても行きたいって。オープンキャンパスに行けるのは高校生の僕だけだから一緒に行こうってすごい必死に頼み込んできたんだよ」

「気がするでよく動けるわよねー」

「先輩、私そこ通ってました。うちの大学に来たんですね」


 先輩には公園に行った時に通ってた大学のことを話していたけど驚いて言ってしまう。


「椿ちゃん気持ち悪くないのー?変なのー」

「へ、変かな」

「椿ちゃんが通ってたかもしれないってうろちょろしてさ、隣にいる僕が恥ずかしかったよ。それで学食に行ったら女の子に人気のパスタランチを食べたかもしれないから食べたいって言ってね、じゃあそれにするのって聞いたら2番人気のビーフシチューかもしれないって悩みだすから面倒でね、それならシェアしようって隼人くんがパスタランチを選んで僕がビーフシチューを頼んだんだよ」

「お兄ちゃんの方が大人よー」

「ふふ、そうよねー」

「先輩、私どっちも好きでしたよ。先輩も私の好きな料理を食べてくれたなんて嬉しいです」

「本当に?やった。俺も嬉しい」


 なんだろう。本心で言ったのに翔太くんと洋子ちゃんに微妙な顔をされてしまった。


「思ってた以上に椿ちゃんって不思議ちゃんだねー」

「そ、そう?」

「そうだよー普通引くよー」


 翔太くんと洋子ちゃんに言われてしまって苦笑いする。


「隼人くんって本当に残念なイケメンだよー」

「そうかな?かっこいいけどな」


 洋子ちゃんがチッチッと人差し指を動かしながら言う。


「JCすら知らなかったんだよー若者言葉以前の問題ー」

「そ、それは……女子中学生ってことですよ先輩」

「い、今は知ってるよ」

「知ったかぶりするし。わかぶるのがおじさんって感じだしー」

「25歳はおじさんじゃないよ。それにわかぶったって良いでしょ」

「せ、先輩はおじさんでもおじいさんになってもかっこいいイケメンですよ」

「椿……俺25歳でおじさんで良いよ」

「椿ちゃん椿ちゃん」


 先輩が嬉しそうに見つめてきてなんだか可愛いと思ってると翔太くんが私を呼ぶ。


「僕ね、軽音楽部でギターやってるんだ」

「そうなんだー!!かっこいいね」


 私がそう言うと先輩は私の左手をぎゅっと握った。かっこいいって言ったからかな。やっぱりなんだか可愛い。


「でね、ライブもよくするんだ。隼人くんにも来てって言うんだよ。だけどライブハウスの会場近くに椿ちゃんが好きそうな公園があるって言い出して僕の話そっちのけで椿ちゃんの話にすり変わっちゃうんだ。一応次の日昨日のライブがあるっていうのはいつの何時からだっけって電話がくるんだけどね。椿ちゃん好きなのは良いけど他のことがダメダメだよ。酷いイケメンだよ。椿ちゃん怒って」

「ええ?先輩、駄目ですよ。翔太くんが先輩に来てほしくて誘ってるんですからお話ちゃんと聞いてください。でも私のことをたくさん考えてくれて嬉しいです。照れちゃいますけど」

「怒る椿も照れる椿も可愛い」

「ヤバい。手強いよ椿ちゃん」

「そだねー」

「美香ちゃんとは違った天然だわ。面白い子……みんなに教えてあげましょ」

「ねえ翔太くんも洋子ちゃんも俺を貶してないで俺の良い話をしてくれない?」

「椿ちゃんも楽しそうだから良いんじゃなーい?」

「洋子ちゃんの言う通り楽しいですよ?」

「う……」

「わかったよーじゃあ隼人くんの良い話をしてあげるよ。あ、でもその前に勉強はもう大丈夫だよ」

「え、良いよ、センター試験まで見るって言ったでしょ」

「でも椿ちゃんと結婚したし僕の勉強見てるよりイチャつきたいんじゃない?」

「ま、そりゃそうだけど。でも決めたんだから最後までやるよ」

「あ、あの……勉強先輩に教えてもらってるの聞いたよ。私も応援したいから最後まで先輩と頑張って?」

「ほら、椿もこう言ってるんだから。それに椿も一緒に来るんだからイチャイチャしながら教えられるよ」

「え……」

「それ集中できないんだけど」

「まあまあ、隼人くんが勉強見てる間椿ちゃんは私とここでお喋りしてましょうよ」

「それじゃ一緒にいれないじゃないですか」

「えっと先輩?私もそれはちょっと……。翔太くんに集中してほしいですし佳代子さんが良ければ先輩と一緒に来てお話しさせてもらっても良いですか?」

「大歓迎よー」


 なんだか成り行きで決まったけど先輩がしていることについていけるのは嬉しい。……あ、バスケクラブにもついていきたいとは図々しくて言えないけど。


「あーそれでね、勉強を見てくれるようになったきっかけの話だよ」


 そう言って翔太くんは先輩が翔太くんに勉強を教えるきっかけになったことを教えてくれた。翔太くんと竜二さんの仲は悪くはなかったけどぎくしゃくしていた。忙しさも照れくささもあって素直になれない竜二さんと、お父さんは自分に興味がないと思い込んでた翔太くんの仲を先輩が取り持ってあげて、素直に言えないけど本当は竜二さんの跡を継いで会社を経営したいと思っていた翔太くん受験の勉強を手伝うことを提案してくれたんだそうだ。


「今考えると自分の推理が正しいのか確かめてついでにお節介焼きたくなっただけな気がするけどこれが隼人くんの神崎親子仲良し大作戦の話だよ」

「……仲良し大作戦?」

「隼人くん大好きな男たちが6人いるの。それと琉依さんも含めて大学時代からの友達なんだけど。その人たちの間で隼人くんのエピソードをタイトルをつけて話すのよ。隼人くんが優しくて良い子だなーって。タイトルを言ったらみんな細かくどんなことがあったか喋れるの」

「こっちは恥ずかしいからやめてほしいんだけどね」

「ふふ、先輩が大好きなんですね」

「そうなのよー。あ、帰ってきたみたい。隼人くん大好き男」


 そう言って席を立った佳代子さん。竜二さんが帰ってきたんだ。普段出迎えにいかないのにと呟く先輩を子供の時から見守ってきて支えてくれた先輩の大切な人。間近で見たことはあるけどただ大人数の中で講義を聞いていた時とは違う。緊張してしまう。


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