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「勘違いですれ違った恋」番外編  作者: 柏木紗月
新婚生活スタート
10/62

癒し



 スーパーを出て車に乗ると先輩は携帯を見てあれ?と声を出す。


「どうかしたんですか?」

「昴から電話がきてたみたい」

「結城くんからですか?すぐかけ直してみたらどうですか?」

「ううん、あとで良いよ」

「え、けど急ぎの用事かもしれませんし……忘れ物したかも」

「んー……そうだね、じゃあかけ直すね。ちょっと待っててくれる?」

「もちろんです」


 先輩はもう一度車から降りて車のそばで電話を始めた。

 私はどうしようと思って思い付いた。今のうちにお義母さんに布団のことを聞いてみようと携帯を取り出す。


「えっと、お義母さんと優菜さんだから……」


 連絡先を交換した時グループも作った。家族全員が入っているものはもちろん、たくさん作ってもらった。

 お義母さんとお義父さんと先輩との4人、お義母さんと優菜さんと彩華さんとの4人、お義父さんと浩一さんと一輝さんとの4人、それに家族全員から先輩だけを抜いたものとお義父さんと彩華さんとの3人のものまである。

 話の内容によって使い分けてって言われた。なるほど、確かにお義父さんたち男の人に話しにくいこともあるだろうし他にもいろいろありそうだ。後半のうち1つは先輩には内緒で先輩の子供の時の話をしてくれるそうで、密かに楽しみにしている。もう1つは拡散したくないけど相談したい時に役に立てると思うからと彩華さんに作ってもらった。

 というわけで、今回はお義母さんと優菜さんと彩華さんとのグループでメッセージを送ることにした。彩華さんは今回は来れないけどこれから泊まりに来ることがあるだろうし。


『お義母さん、優菜さん、お布団のことなんですけど、色とかデザインとか枕の種類とかお好みありますか?彩華さんは今回は来れないですけどこれから泊まりに来ることもあるかと思うのでお伺いしたいです』


 するとすぐに既読が全員分ついた。みんな早いなと思っていると返信がきた。


美香『私はねーオレンジが好きー』


 へえ、お義母さんって可愛いからピンクとか好きなのかと思ってたけどオレンジも明るいお義母さんにピッタリだな、と思う。


優菜『私は赤が良いな。デザインはお花柄!!』

美香『私もー!!』


 やっぱりお義母さんも優菜さんもお花大好きなんだな。ふふ、と笑っていると彩華さんからも返事が来た。


彩華『私は2人のに一緒に入るから大丈夫よ。ありがとうね』

優菜『枕は柔らかいのならなんでも良いけどパイプが慣れてるから良いかも』

美香『んーじゃあ私も優菜と同じのが良いなー』

優菜『隼人だったらこんなこと全然気にしないのに椿ちゃん良い子ね』

美香『隼人はねー、そんなのどうでも良いでしょって言いそう』

『そうなんです、まさにお義母さんの予想通りに言ってましたよ』

美香『やっぱりー酷いー』


 外を見てみると先輩はまだ話し中だ。私はせっかくだし、あとで調べもするけどお義母さんたちなら聞きやすいと思って聞いてみることにした。


『あの、ご相談があるんですけど』

彩華『どうしたの?』

『先輩は癒されたいそうなんですけど、どうしたら癒し系奥さんになれるんでしょうか?』

優菜『ほお?(゜ω゜)』


 優菜さんのメッセージに首を傾げていると彩華さんからこうメッセージが来た。


彩華『優菜、おかしなこと椿ちゃんにいっちゃ駄目よ?』

優菜『だいじょーぶ!!』

美香『はいはーい!!私が答えてあげるね!!』『隼人は甘えられると嬉しくなって癒されると思うわー』

『甘えですか?どうやったら甘えられるんでしょうか?』

優菜『お風呂まだ?』

『これからですけど?』

彩華『それは早い!!』


 お風呂まだだとなんだろう、疑問に思うとすばやく彩華さんからもメッセージが来た。なんなんだろう。


美香『一緒にお風呂に入りたいなーって言えば良いのよー』


 え!?優菜さんもそういうことを言いたかったの!?私は思わず携帯を落としそうになってしまう。


彩華『しまった、先に打ってた美香に負けた……』

優菜『隼人喜ぶと思うなー』

『そ、そうでしょうか……』


 そうだとしても私にはハードルが高い。ドラマとかで一緒に入ってるみたいな話があるしたくさんそういう人がいるのかもしれないけど。


美香『そうよー今でも琉依さんと入りたいって言うと琉依さん喜んで入ってくれるものー』

『え!?』


 やっぱりみんな一緒に入るものなんだ。お義母さんも入ってるなら私も……でもハードルが……。


彩華『椿ちゃん、私は入らないから。みんな入るわけじゃないのよ』

『そうなんですか?安心しました』

優菜『それが駄目なら髪の毛乾かしてって言ってみたら?』

『髪の毛ですか?そうすると癒されるんですか?』

美香『それも良いわねー!!髪の毛乾かしてもらうと気持ちいいのよー!!ふわふわして』

『えっと、それは乾かしてもらう方の感想では?』


 それでも貴重なお話だけど。髪の毛なんて小さい時にお母さんに乾かしてもらうことくらいしかなかった。気持ちいいんだ。


彩華『うん、それくらいなら良いかも』

優菜『隼人は椿ちゃんの髪の毛触りたくてうずうずしてるはずよ』

『え、そうですか?』

優菜『若菜が触り心地が良いって自慢してたからね』

美香『触ったら癒されると思うなー』

『そうなんですね。やってみます』


 その時先輩が戻ってきて慌てて携帯をしまう。


「どうかした?」

「な、なんでもないですよ?」


 別に隠すことじゃないけどなんとなく恥ずかしい。先輩は首を傾げながらシートベルトをすると車を動かした。


「結城くん、なんの用事だったんですか?」

「んー?渡し忘れたものどうしようって」

「渡し忘れたものですか?大事なものですか?」


 私がそう言うと先輩は一瞬だけ私を見て笑う。


「大事なものだよ」

「そうなんですね。どうすることにしたんですか?」

「なにか気にならない?」

「え?えっと、教えてくれるんですか?」


 先輩の大事なものってなんだろう。先輩は昔から優秀だったみたいだから賞状とかかな。


「写真だよ」

「写真……ですか?あ、思い出の家族写真ですね」

「椿の写真だよ」

「え?」


 そして以前教えてもらった話を思い出して途端に恥ずかしくなってきた。


「そ、それって」

「昴に預けてた椿の写真だよ。もう持っていて良いよね?」

「そ、それは、良い、ですけど……」

「ふふ、けどこれからは2人でもっとたくさん写真を撮ろうね」

「は、はい……」


 あの時はわからなかったけど若菜からもらったという写真が先輩にとってそんなに大事なものなんだ。変な顔してる写真とかないよね?どうしよう、ただでさえ恥ずかしいのに。


「変な顔してるのないですか?」

「ないよ。全部可愛いんだよ。親父に預けておくって言ってたから母さんたち迎えに来る時に受け取ってそしたら椿に見せてあげる」

「怖いですけど……はい」







 そしてマンションに帰ってきた私たち。荷物をどうしようということになってワインとグラスと花束は私が持って先輩は自分のと私の鞄と観葉植物を持つことになった。家の中に入るのは2度めのことでまだドキドキする。もうここが私の家なんだなあ。


「椿?入らないの?」

「わわ、入ります!!」


 先輩がドアを開けてくれていたのに感動に浸ってしまっていた。慌てて家に入って靴を脱いで持っていた物を床に置く。


「ってあれ?先輩は上がらないんですか?」


 続いて先輩もすぐに靴を脱ぐと思ったのにそうしなくて不思議に思い振り返る。先輩は鞄と観葉植物を玄関の棚の上に置いていて、ニコニコ笑ってるだけだ。


「先輩?どうしたんですか?」


 私が首を傾げると先輩はなぜかようやく靴を脱いで上がってきた。


「ただいま」

「はい?」


 一緒に帰ってきたのにどういうことだろうか。頭にはてなマークがたくさん浮かんできた。と、わけがわからなくて戸惑っている私に先輩は言う。


「癒してくれるんでしょ?」

「え、えっと……そうですけど?」

「母さんみたいになりたいんでしょ?」

「なりたいです!!憧れですもん!!」


 お義母さんみたいになりたいと興奮してつい大きな声を出してしまう。すると先輩はいきなり私を抱き締めてきた。


「なななはななんですかいきなり!!」


 私は突然のことで慌てて離れようともがくとあっさり離れてくれた。


「も、もう!!なんですか?」

「母さんみたいになりたいなら母さんと同じことをしなきゃ」

「へ?」

「母さんは親父が帰ってくると毎日出迎えに来て毎日こうやってるよ?」

「え、そうなんですか?」


 私のお母さんとお父さんはそんなことしないから驚いてしまう。だけど先輩はさらにびっくりすることを言う。


「抱き締めたあとはキスもするよ」

「え!?そんなはずないですよ!!」

「どうして?」

「私の両親はそんなことしないですよ。抱き合ってるのもキスしてるところも見たことないです!!」

「俺の両親は誰がいてもイチャイチャするから。でも椿は母さんみたいにするんでしょ?」

「う……それ以外のことで頑張ります」

「えー残念だなー。これが一番の癒しになるのに」

「そ、そうなんですか?」

「そうだよ。本当に駄目?」

「……」


 だからその顔は反則だってば。


「だ、駄目じゃないです」

「やった。じゃあ最初からね」

「え、最初から?」

「うん、練習だよ」


 そっか、練習か。頑張ろう、と気合いを入れる。


「ただいま」

「お、おかえりなさい」


 いきなり噛んでしまった私に先輩はクスリと笑ってふんわり優しく抱き締めてくれた。かと思ったら唇にそっとキスされた。


「真っ赤だよ」

「わ、笑わないでください。恥ずかしいですね、これ」


 一気に体温が上がってパタパタと手で仰ぐ。


「そのうち慣れるよ」

「そ、そうですかね」

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