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17話 「「「「『結構いい洗剤・石けんセット!!』」」」」

ひたすら買い物する回です

 






 “ヒノトリのカグヤ”の中に入る。中は、中世ヨーロッパ版のニ○リだ。

 何の原理で動いているのかは分からない照明は暖かみのあるオレンジ色で、おしゃれに配置された家具も相まって店内の雰囲気もいい。


「……なにあれ」


 店を見回すと、カーテンコーナーの隣に服コーナーがあった。

 ……服屋? 急にイ○ンみたいになった。


「満……」


「あぁ、服屋だよな」


「なんでだろ」


 んー、なんでかな? あ、あれか。寿司屋も最近ラーメンとかパフェとか出してんじゃん。それと一緒か。

 そういえば、近所の大型電気店も本屋とかカフェとかあったよな。


「…………」


 おい、巴。『そういえば満が立ち読みしようとして、本を包むビニールに邪魔されてたよなー』みたいな顔をするな。確かにほとんどの本にビニールしてあるの『ウザっ』って思ったけども!


「何故わかった」


「お前の考えている事などすぐ分かる」


「数秒見つめ合っただけで話がかなり飛びましたわよ? どういうことですの?」


 クラリーヌが不思議そうに首を傾げた。


「なんか、あの二人は心で会話してるっていうか無意識に相手の思考読み取ってるっていうか……とにかく、自分らには理解できないし大抵どうでもいい事しか読み合ってないっすから大丈夫っすよ」


 よく分かってるな、アキルク。そのとおりだよ。シンクも首を縦に激しく振るんじゃない。


「それに、阿吽の呼吸は冒険者には必要っすし」


「確かに、漆黒の翼の皆様も息が揃っていましたわね!」


 あれはちょっと違うと思うけど……俺達のパーティもいつか目線一つで行動を理解できるようになれたらいいな……。その為にはアキルクにも今以上に強くなってもらわないといけないんだけど。


 死渉地獄訓練……。前はいいやって思ってたけど、アキルクにもしてもらおうかしら。ふふふ……。


「ヒイッ、今邪悪なこと考えてたっすよね⁉」


「アキルクひどい」


「アキルクも満の考えてること分かるようになったじゃん」


「あの笑顔は、なんか企んでるっす。自分、知ってるっす!」


「まぁ、そうでしたの?」


「ええ、油断しちゃ駄目っす」


『アキルクさんの言うとおりですよ!』


 おうおう、言ってくれるじゃねぇかシンクにアキルク。そんな子に育てた覚えねぇぞ。


「俺、まだお前になんもしてないと思うけど?」


「そうっすね()()何もされてないっす」


「……じゃあ、何を買うか決めるか。個人で欲しいものに関しては後でお金を渡すからそれで買ってくれ」


「話を誤魔化したな満」


 そういう事を言うんじゃありません。


「んんっ、ダイニングテーブルもあれじゃあ5人じゃ狭いしな、あとは何を用意すればいいのか分からない」


 店を見回しながら必要そうな物を挙げていく。

 いかんせん、こういうのは慣れていない。クラリーヌとかの方が詳しいだろうな。正直、寝れて食えて暖かければ何でもいいけど、他はそういう訳にはいかないだろう。


「どう思う?」


「寝れて食えて暖かければ何でもいい」


 お前はそう言うと思ったよ。


「自分も分かんないっす」


『ううーん。皆さんにおまかせします』


「というわけで任せたクラリーヌ」


「ええっ!」


「大丈夫か? 良さそうなのを見繕ってくれればいいんだけど」


「大丈夫ですわよ。でも、わたくしに任せていただいてもよろしくて?」


「もちろん、相談なら聞く。良さそうなのを選んで」


「わかりましたわ」


「ありがとう」



 と、いう訳で俺達はぞろぞろと家具コーナーに向かって歩き始めた。










 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











 それは早く決まった。皆こだわり無いし、予算オーバーと言うこともなかったからだ。クラリーヌの示す物を買った感じだ。クラリーヌさん超有能。








「はーい、皆さんが静かになるまで2秒掛かりましたー」


「「「『はーい』」」」


「じゃあ、これから金貨を10枚配りまーす」


「「「『はーい』」」」


「これでー、自分の日用品やら服やら欲しいものやらを買ってくださーい」


「「「『はーい』」」」


「では配りまーす。並んでくださーい」


「「「『はーい』」」」



 そうして、金貨10枚を渡すと皆好き好きに散っていった。


「シンク」


『はい』


「お前は買うことができないから、欲しいものがあったら俺に言えよ。巴が買う」


『……! わかりました!』


 シンクが嬉しそうに言う。


 よく考えたら、シンクが何かしたらポルターガイストショッピングとなり、店は大混乱だろう。

 俺はシンクが見えてるし、ウチのパーティはみんなポルターガイストに慣れすぎている。


「なんで」


「バカヤロー、俺にふりっふりのリボンを買えとでも……?」


 俺は、店にあるゴスロリっぽい服を指差した。いやん、あれは流石に恥ずかしい。


「面白そう。ちょっと着てきてよ。その状態で連れ回すから」


 巴さん、真顔で何言ってんの?


「……泣くよ? 相棒にそんな事いわれて悲しすぎて人目も憚らずわんわん泣くよ?」


 巴がいじめるよー、わーんえーん!ってな感じで。


「泣け」


「うわーん(棒)」


(棒)(かっこぼう)って自分で言ってんじゃん」


 巴が呆れたように言った。


『くすくす……』


「ええい、だまらっしゃい。そしてシンクも笑うんじゃない」


『ご、ごめんなさ……んふふ、ふふっ、あはははは……ふふっ』


 こいつ……ツボりやがった……!


「とにかく行くぞ!」


「うん」


『はーい! んふふっ、くすっ……えへへ……』


 目の死んだ相棒と笑い続ける式神ダンジョンマスターをつれて、俺も歩き出した。







『うーん、でも欲しいものってよく分かんないなぁ』


 シンクはダンジョンマスターだ。本来なら食事も睡眠も必要なく、全てが迷宮で完結する。そういう存在だ。


「店をぐるーっと回ってたら見つかるんじゃないか? 無理して全部使うこともないし、余ったらとっておけばいい」


『そうですね! ちょっと見てきます!』


「あ、商品を持ち上げるなよ。大騒ぎになるからな」


 忘れがちだが、シンクは普通の人には見えない。


『はーい! 行ってきます』


「いってら。巴はどうする」


「私もウロウロしてる」


 こいつも物欲無いからな。服だけ買って終わりな気がする。


「そっか」


「ん。満は本棚?」


「うん。じゃあまた」


「へーい」


 俺たちも一旦別れた。さて、本棚を見るか。そろそろ床に積むのには限界来てたんだ。






「これかなー」


 一つの本棚を見上げる。でかい、沢山入る、丈夫という、俺の3つの条件を選ばれし本棚だ。値段は金貨2枚。これだな。決定。


「すいません、これください」


 店員さんを呼んで、支払いを済ませる。


「お届けもいたしますが」


「結構です」


「承知しましました」



 よいしょっと。魔法の鞄に本棚を入れる。


 あと、あれだな。アレが欲しい。召喚されたときはそれどころじゃ無かったし、迷宮に移ったときも『結構イケるんじゃ?』とか、思ってたけどそんな事なかった。異世界転移くらいでは、俺はアレが必要でなくなるなんてことは無い。寧ろ、あれ無しでどうやって寝るの?





「だきまくら」


 そう、だきまくら。あれないと普段は中々寝れない。寝ても、寝た気がしない。俺の良好な睡眠ライフには必要不可欠な物だ。

 やはり、だきまくら位の生活必需品となると、専門のコーナーがあるに違いない。早速いってみるか。







「無い……………だと?」


 その上、この店に無いんじゃなくて、だきまくらという概念がこの世界に存在しないだと? え? 逆に聞くけどさ、どうやって寝てんの? この世界の人。え、だってさ、えー、えー! マジかー。堕天しそう。

 くそぅ、こんな世界間違ってる! だったら……俺がこの世界を壊して、作り変えてやるよ!!!




「ちくせう、ちくせう…………」



 もう、あれか? 作るしかないのか? だきまくら。


「裁縫はできるから、あとはセットを買うだけか……」


 やってやろうじゃねえか! だきまくら創造ってのをよぉ!!







「ふふ、これだけあれば十分だ………」


 手触りのいい布と裁縫刺繍セットを買った。これで間違った世界を正してやる……。




「次の事を考えよう」


 あと欲しいものは、服とかかな。何着か持ってるけど、冒険者という商業上、普通の服はすぐに駄目になってしまう。今着ているのも、もうヨレヨレだ。ついでに、巴の様子も見に行こう。






「巴〜。どうだ?」


「あ、満だ」


 巴は服コーナーに行くと、すぐに見つかった。

 クラリーヌと、服を選んでいた。二人とも美少女だから、目立っていた為わかりやすかった。

 そうか、巴とクラリーヌはそこまで仲良しになったか、よかった。

 昔から友達ができにくかった巴が家族以外と服を選んでいるなんて、夢みたいだ。

 ううっ、嬉しいよ! 母ちゃん嬉しいよ!


「あ、ミツルさん。どちらがトモエさんに似合うと思いますこと?」


 クラリーヌが、巴にロリータ?ってやつなのか知らないけど、レースとリボンまみれのワンピースを2つ宛てがった。青いやつと、ワインレッドのやつだ。

 あぁ、どっちもと同じじゃない? みたいな顔を巴がしている。

 違うんだよ! 多分! 俺もわかんないけど! 

 なんだか、パイプを咥えて混沌(カオス)の欠片を再構築したくなってきた。レースとリボンのインフレーションや〜。


「どっちも似合うと思うよ」


 いや、巴って美少女だから大体の服が似合うと思うよ。うん。

 寧ろ、制服とスーツと家着しか着なかった巴がそんな可愛らしい服を着ることの方が重要だ。


「だから言ったじゃん。満ならぜったいそう言うって」


「そうですわね。もう、どっちも買いますこと?」


「じゃあそうする」


 みんな! 聞いてくれ! あの巴が服を2着も買うだって⁉ 恵美子さん(巴の実母)でも成しえなかった偉業だよ! クラリーヌすごい! 有能! クラリーヌ先輩!


「おー、いいんじゃないか?」


「店員さんを呼んできますわね」



「他になんか買った?」


「普段着とか下着とか……そしたらクラリーがお出かけようも買いますわよって」


「クラリー?」


「うん」


 そうか、巴とクラリーヌはあだ名で呼びあう仲になっていたのか。俺もクラリーって呼ぼっかなー。いや、タイミングが掴めない。


「満はまだ買うの?」


「まだ服を買ってないからなー」


「そっかー」


 てか、シンクとアキルクはどこに居るんだ? 見つけないと。


「巴、買い物終った?」


「うん」


「クラリーヌは?」


「まだだよ。お母さんくらい長い」


「そっか」


 女の人って長いよな、買い物。恵美子さんも一回スイッチが入るとすごかった。覚馬(かくま)おじさんもよく付き合ったたよな。

 俺と巴はその間、本屋かゲーセン行ってた気もしなくはない。


「すごいよね、情熱」


「ね。じゃあ、俺はシンクとアキルク探してくるから。クラリーヌにも言っといて」


「ん。わかったけど、満はいいの?」


「だから適当に選んどいて」


 巴に金貨の一部を渡す。


「面倒くさいだけでしょ」


「うん」


「仕方がない。選んでやろう!」


 わーい、巴大好き〜。


「ありがと、いってくる」


「おう」







 アキルクはでかいからすぐに見つかった。


「アキルクー」


「あ、ミツルさん。終わったんすか?」


「まぁね、アキルクは?」


「自分も終わったっす」


「クラリーヌはまだで、シンクが見つからない。巴はあっちの方にいる」


 探せばすぐ出てくると思うけど。


「了解っす」


「じゃ、俺シンクを探してくる」


「ミツルさんしかできないっすからね。行ってらっしゃいっす」


「いってくるー」






 シンクもすぐ見つかった。ショーウィンドウのにベトッと張り付いている。


「何見てんだ?」


『うひゃっ⁉ み、ミツルさん!』


 シンクが奇声を上げながら飛び退いた。


「驚きすぎだぜマイ式神……オルゴール?」


「はい!」


 前の世界にあったオルゴールと大差ない。小物入れにもできるオルゴールだ。

 大理石のような白い石で作られた箱型のもので、美しい金細工が施されている。


「これを買うのか?」


「はい。値段も間に合ってるんですよ。いいですか?」


 金貨9枚、ほんとだ、ちょうどいい。


「勿論いいけど、他にはいいのか?」


『はい。私は服も必要ないですし、どうせ誰も見てないですから……』


「ふーん、そう。店員さーん。これください」


 そのとき、ふと黒いリボンのバレッタが目に留まった。


「あ、じゃあこれも」


「かしこまりました」


『巴さんにですか?』


「んな訳あるか」


 これより、焼いた肉をあげた方がよっぽど喜ばれるわ。


「お前にだよ」


『ふへ⁉ え? なんで⁉』


「なんとなく?」


 このオルゴール、物を入れるスペースがあるんだよね。まぁ、ちょうど良くない?


『勿体無いですよぉ! 私になんてぇ』


「お前、たまに卑屈だよな。別のがいいならそれでも……」


『そうじゃないけどぉ……』


 シンクが、驚いたような困ったような変な顔をする。


『私なんかにいいんですか?』


「いいに決まってるだろ。お前に贈りたいんだよ」


 できれば、さっさと買いたい。小声で誤魔化してるけど、このままだと虚空に向かって喋る不審者になってしまう。


『そうなの……えへへ、嬉しいなぁ』


「そうだよ。貰ってくれ」


『ありがとうございます』


 シンクチョロいな。心配だよ。お菓子につられて知らない人についていきそう。


「どういたしまして」


 すごい素直に感謝されて逆に恥ずかしい気がしなくもない。


「行くか」


『はい』










 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー










「おまたせ〜。シンク捕まえてきた」


「おかえり。はい、服」


 巴が、代わりに選んでくれた服を出した。うん、どれも動きやすそうだ。


「ありがとう……なんじゃこりゃ」


 何故に紳士服がある。


「いつか、必要!」


 巴が誇らしげに言う。なんか満足そうだし、いつか使うかも知んないしいいや。


「うん、ありがとう。アキルクはこういうのいいの?」


「自分、正装なら持ってるっす」


「そうなんだ」


 やっぱ、みんなそこら辺はちゃんとしてんだね。俺も持っといたほうがいいか。


「みんな、買い忘れはない?」


 うん、無いらしいな。


「あ、クラリーヌは錬金術の道具とかいいの?」


「ええ、全部揃ってますわ。実の所鞄に道具を詰めたら容量が無くなってしまったんですのよ」


 すごい優先順位だ。そういえば、錬金術の為に家を出たんだよな、この子。


「じゃあ、帰るか」


「そうっすね」


「ん」


 《みなさん、てをつないで》



 シンクの力で、迷宮()まで一瞬で飛ぶ。










 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー










「ところで、漆黒の翼さんがくれたのってなに」


 しばらくして、巴が言った。


「そうだな、見てみるか。なんか必要になる物って言ってたし」


「あ、気になるっす」


「わたくしも、気になりますわ」


『私も!』


「おー、開けるぞ……これは…………!」



「「「「『結構いい洗剤・石けんセット!!』」」」」


 必要だわ!! めっちゃ使える! ありがとう!












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