第一話 Tea Party
間木ノ町、中央商店街の裏手にある小さなカフェ《またたび》。
少し色あせた赤いレンガの店。すやすやと眠る猫の形をした木彫りの看板が春の風を受けてかすかに揺れている。
花が開き、動物たちが目覚め、人々の生活が新鮮味を帯びる季節がやってきた。希望に満ちた暖かな日差しが降り注いでいる。穏やかな昼下がりだ。
ミケはカウンターでコーヒーを啜りながら新聞を読んでいる。
クロはカウンター内でティーセットの手入れ。
トラはけん玉での大技を練習中。
側から見れば、取り留めもないおだやかな光景。青年二人と、少女が一人。思い思いの過ごし方で春の陽気を満喫している。
ジリリリリリッ…ジリリリリリッ…!
カウンターの脇に置かれた黒電話が鳴り出した。
ミケ、クロ、トラの三人の視線が一斉に黒電話に向けられる。
…間木ノ町には少し前からこんな噂がある。
「困っている人に救いの手を差し伸べる、心優しい『魔法使いたち』がいる」
彼らは《ティーパーティー》。彼らの使命は、人助けである。(※料金は応相談)
ミケがそっと受話器を取った。クロとトラがその様子を固唾を飲んで見守る。
新しい依頼が舞い込む予感に、ミケは口を開いた。
「はい。こちら《ティーパー……」
『くぉらぁ!!どらミケ!!家賃払わんかぁい!!』
ミケは今までにないスピードで受話器を置き、再び視線を新聞に戻した。
クロはお気に入りのティーセットを再び磨き始めた。
トラは偶然成功した大技に、自分で驚いた。
カフェの客はおろか、依頼人からの電話すら無い。もう二週間になる。
三人の腹が同時に空腹のうめき声を上げた。
「「「………はぁ…」」」
家賃の滞納も今月で3ヶ月目に突入。
彼らは《ティーパーティー》。むしろ、助けてほしいと願う彼らは、魔法使いである。
つづく
第一話を読んでくださり、心より感謝いたします!
魔法使い、と言っておきながら魔法も夢も無いような展開の第一話でしたが、次話よりティーパーティーは本格的に始動します。
懲りずに読んでいただけると、嬉しいなぁ、と満面の営業スマイル中です。
それではまた次回!よろしくお願いいたします!




