1話~第28代幻鬼討伐隊代表~前編
「やっと着いた~」
電話から約3日が過ぎていた。
私は掲示板に書かれていた住所を尋ねるため。京都からはるばる、東北の山奥にある「北見丘村」というところを訪れた。
名前の由来は北見山という山があるから、らしい。
何もない。絵に描いたような、のどかで平和な村だ。
本当にこんな所に「幻鬼討伐隊」とやらの東北支部があるのかと疑ってしまう。
とりあえず、私は村人らしき老人に【名無しの僧兵】の住所を聞いてみることにした。
「あの~すみません。おじいさん、この住所の場所ご存じですか?」
「どこですかな?何々、双隆寺。あぁ、双隆寺さんなら、この道を真っ直ぐ進むと大きな門があります。その門の中にありますよ」
老人は地図に指を当て、快く寺への道のりを教えてくれた。
「ありがとうございます」
「ところで、お嬢さんはお寺へ何用かな?」
「えっと・・・」
言葉が詰まった。
《幻鬼》のことなど話したら、頭がおかしいのかと思われてしまう。
たしかに理由もなしにこんな田舎を訪れる若い人なんて、そんなにいないよね。
なんと返せばいいか考えていると、老人の方から切り出してきた。
「もしかして、お嬢さんは《幻鬼》に憑りつかれているのかの?」
「え!?」
驚いた。なんで、なんの変哲もない村人の老人が《幻鬼》のことを知っているのだろう。
「その顔はどうやら図星だったようじゃの」
「えっと、たしかにそうなんですけど、おじいさんはなんで《幻鬼》のことを知っているんですか?」
「なあに、この村の住民のほとんどは過去に《幻鬼》に憑りつかれていた者がほとんどなんじゃよ。ワシだって、10数年前憑りつかれて、定年を機にこの村への移住を決めたんじゃよ」
どうやら、私がこの村に来たことは正解だったようだ。
おじいさんの話を聞いて彼は本当に存在することを確信した。
「そ、そうだったんですか。じゃ、じゃあ《幻鬼》に憑りつかれても死ぬわけではないんですね」
「そうじゃよ。ワシなんて憑りつかれる前より健康体になったんじゃ。ただ・・・」
嬉しそうに喋っていた老人は急に黙り込んだ。
これは何かありそうだ。
「ただ・・・、どうしたんですか?」
「ワシの《幻鬼》を倒してくれたのは先代で、今の代表は正直なんというか・・・」
「弱いってことですか?」
「いや、全然。むしろ、戦闘に関してなら歴代代表で最強とも言われておる」
「じゃ、じゃあなんでおじいさんは暗い顔をするんですか?」
「性格が問題なんじゃよ。性格が」
なんだ、性格か。そりゃ、歴代最強ともなれば多少は天狗になるでしょう。
私には老人がここまで心配になっている理由がわからなかった。私の電話の対応からして、性格が悪いといっても底が知れている。
とりあえず、私の《幻鬼》はどうにかなりそうだ。
私は少しほっとした。
「性格なんて少しくらい曲がってても強けりゃいいじゃないですか」
「ま、まぁ、会ってみればわかる。気を付けてな」
「ありがとうございます」
私は老人に別れを告げて、双隆寺へと向かった。
そして、私は後に老人の言っていたことの真意を知ることになる。




