第四話 鉄の中の片時雨
ワズさんは他にやる事があるらしく、私はホシに壱番隊と呼ばれている要塞の中を案内してもらうことになった。
年が近く見えるホシの方が気が楽だから、正直助かる。
「ホシ、気になったことを聞いてもいい?」
鉄の壁で覆われた通路を歩きながら、私は前を歩くホシの肩を見上げるように聞いた。
ワズさんといい、ホシも背が高いな。
「いいよ、なんでも聞いて?」
まだ笑顔で返してくれたホシが、人型兵器とは信じられないほど、それは自然だった。
「私、難しい話されてもわかんないし、頭こんがらがるから、簡単に教えてほしいんだけど、それでもいい?」
「うん。かまわないよ」
私は少し言葉を考えて、それでも足は止めずにホシに尋ねた。
「人類が滅亡したって……嘘じゃないの?」
「うん。残念ながら、事実だよ」
「……そう、なんだ……」
見たこともない廃墟や瓦礫の山、そしてこの要塞にいる時点で、わかってはいたけど、どこかで否定したかった。
でも、ホシに言われて、本当に今が現実なんだって受け入れなきゃいけない。そんな気がして、少し頭が痛くなった。
「ホシは……ううん、アルマって、なんで人間を保護とか回収とかしてるの? 保護ポット? とかにいるなら、その方が安全なんじゃないの?」
「保護ポットも完全に安全ってわけじゃないし、ミサキも寝たままってわけにはいかないだろ? だからアルマが人間を守るのは当然のことだよ」
「百歩譲って保護するってのはわかるけど、守るって、何から守るの?」
「地表には有毒ガスが充満しているから、そこから助けるのがメインかな……今のところは」
「……ふぅん」
やけに明るい電灯が照らす無機質な通路に曲がり角が見えた。
ホシは足を止めて、やわらかい日差しが差す方を指差した。
「ここの角を曲がったら中庭兼温室があるから、もしミサキが花が好きだったら後で寄ってみて」
「へぇ、ちゃんと花は咲くんだ……」
「ちゃんとアルマが管理してるからね」
「兵器なのに?」
「うん。いろんなアルマが製造されたけど、みんなまったく同じではなくて、個性っていうのかな? そういうのがあって、植物管理が得意なアルマが担当しているんだ」
「……そうなんだ」
人工的な鉄の壁の中から突然自然あふれる中庭と温室の爽やかな空気に、私はつい大きく息を吸い込んだ。
なぜだろう。水に濡れた葉っぱの香りが、すごく懐かしく思えた。




