第二話 通り風よりも素早く
明るさに目が慣れて、周りを見る余裕ができて、私は思わず目を瞬かせた。
さっきまでサロンの壁に囲まれた個室には大きな穴が空いており、その先に見える外の光景に、開いた口がふさがらない。こういう時なんて言えばいいの?
夢じゃないよね? それとも、嘘でしょ?
そんな言葉をこんな風に使う時なんて、ドラマとかでしか無いと思ってたのに。
目の前の光景に足がふらつく私の体を支えた軍服のおじさんは、何も言わず、私を急かすこともなく、ただ静かだった。
けど、私が質問を投げればちゃんと無視せずに返してくれた。
「あの、これって何かの撮影とか……そういうのですか?」
促されるまま渡されたロングコートを羽織る私に、おじさんは首を横に振った。
「いや──現在、地上での人類文明は確認されていない」
「え?」
「多くの人類は保護ポットに入れられたまま──回収した隊によって保護される決まりだ」
「た、隊? 保護……?」
「ああ、順番に説明しよう。まず落ち着いて聞いてほしい──人類は滅亡している」
「……は?」
「これから君は、俺が率いる壱番隊で保護……いや、わかりやすく言い直そう。これから君は、人型兵器のアルマが仕切る壱番隊で、唯一の人間として暮らしてもらうことになる」
「……ええぇえええ!?」
軍服のおじさんの言葉に現実味がなくて思わず悲鳴を上げた私の目の前に、映画でしか見たことのない大きな建物ほどもある巨大な鉄の塊が、機械として周りの瓦礫を震わせながら現れた。
「いやいやいや! 嘘でしょ!? こんな──夢でもリアルすぎるって!」
「残念ながら現実だ」
そう言って軍服のおじさんに小脇に抱えられて、今までの人生で体験したことのない浮遊感を味わった。
「ひっ──きゃああああああああ!!!」
ジェットコースター以上の急上昇と急降下による胃が浮く感覚に、悲鳴が我慢できなかった。
でも、それ以上に、眼下に広がる瓦礫の山と廃墟を受け入れたくなかった。




