第一話 涼雨が降る前に
思えば、蝉の声を聞く前に、私の夏は終わってしまった。
梅雨明け目前に、友達と流行りの最新脱毛専門店へ行った。せっかくの高校生生活を楽しもうって。
夏休みに入ったらプールに遊びに行くつもりだったから。脱毛する前に水着も買いに行った。もちろん日焼け止めも買い直したよ。
そしていざカプセルタイプの最新式の脱毛機の中に入って、うっかり私は眠ってしまった。だって目元をタオルで覆って、サングラスまでしていたから。
カプセルの中は暖かくて、梅雨のじめじめした湿気を感じない空気が、とても心地よかったのもあると思う。
次に私が目を覚ました時、私の腕を引っ張ったのは脱毛の施術スタッフさんではなかった。
とても力強くて、でも私のことを気遣うような、そんな大きな手だった。
「おい──おい! 意識はあるか?」
うちのお父さんみたいな声に、眠気の残る頭で私は目元のサングラスを外して顔を上げた。
「ありまふ……あ、まぶし……」
急な光に目が眩んだ。こんなに店内明るかったっけ?
目が慣れるのを待って、ゆっくり体を起こそうとしたら、大きな手がふらつく私の肩を支えてくれた。
寝起きは良い方なのに不思議。とても長いこと寝てたみたいに体が重い。
「無理するな」
「すみません……」
近くで落ち着いた声をかけてくれるこの人は救命士さんかな。
そう思って改めて声の方を見たら、白衣ではなかった。軍服みたいな、そういうかっちりした制服を着たおじさんだった。
「あの……」
思わず顔が引き攣る私を見て、軍服のおじさんは何かを察したかのように私の前にしゃがみこんだ。
そして困惑する私でもわかるように端的に話してくれた。今の私が置かれた状況を。
どうやら私が寝ている間に、人類は滅亡したようです。




