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どこかで、誰かの恋がはじまる  作者: 芦名 雅


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第22話 取扱説明書 幼馴染(ツンデレ仕様)

どこかで、誰かの恋がはじまる


【製品名】幼馴染ユニット「霧島きりしま蘭らん」

【型番】OSANA-TSUN-001

【この度は、幼馴染をお手元にお迎えいただき、誠にありがとうございます。ご使用の前に、本書をよくお読みください。】

第一章 基本仕様

本製品は、幼少期からの長期使用実績を持つ、高耐久型幼馴染ユニットです。表面上は素っ気ない反応を返しますが、内部には高精度の「好意センサー」が搭載されており、ユーザーの些細な変化にも敏感に反応する仕様となっております。

【外見】

髪色:栗色 目つき:やや鋭め 常時ジト目状態

【デフォルト発言】

「別に、あんたのために来たわけじゃないし」

「勘違いしないでよね」

「ば、ばか……」

第二章 起動方法

朝の通学路にて、偶然を装い接触することで自動起動いたします。なお、本製品は「毎朝同じ時間に同じ場所を通る」という初期設定がなされており、これはユーザーとの接触機会を確保するための、製品側の意図的な仕様である可能性が高いことが、長年の使用者調査により判明しております。

第三章 トラブルシューティング

Q. 素っ気ない態度を取られ、傷つきました。故障でしょうか。

A. 故障ではございません。本製品の「素っ気なさ」は、内部の照れ感情を隠すための正常な防御反応です。しばらく様子を見ていただくか、率直に好意を伝えることで、内部プログラムが上書きされる可能性がございます。

Q. 突然、頬を赤くして黙り込みました。対処法は。

A. これは「ツンデレ仕様」特有の症状で、ユーザーへの好意値が一定の閾値を超えた際に発生いたします。故障ではなく、むしろ良好な稼働状態を示す兆候ですので、温かく見守ってください。

Q. 「べ、別にあんたのことなんて」という発言の後、目が合うと逸らされます。

A. 仕様です。無視して問題ございません。

第四章 長期使用にあたっての注意事項

本製品は、長期間の使用により、稀に「本音モード」への移行が発生することがございます。この状態に移行した場合、通常のツンデレ発言とは異なり、率直な好意表現がなされる可能性がございますので、心の準備をしておくことを推奨いたします。

【使用者のサンプル

「取扱説明書通りに、根気強く接し続けたところ、ある日突然『本音モード』に移行しました。以下、その際のログを掲載いたします」

放課後の教室、いつものように帰り支度をしていた蘭に、幼馴染の悠人ゆうとが声をかけた。

「蘭、今日も一緒に帰る?」

「べ、別に、悠人と帰りたいわけじゃないけど。方向が同じだから、仕方なくね」

「毎回それ言うよな」

「う、うるさい。文句あるの」

いつも通りのやり取りに、悠人は小さく笑った。

「なあ、蘭。今更だけど、聞いていいか」

「なに」

「俺のこと、本当はどう思ってる? そろそろ、ちゃんと聞きたい」

不意打ちの質問に、蘭の頬がみるみる赤く染まっていく。しばらくの沈黙の後、蘭は消え入りそうな声で、それでもはっきりと答えた。

「……好き。ずっと、好きだった。ばか」

初めて聞く、素直な言葉だった。悠人は驚きながらも、心底嬉しそうに笑った。

「俺も、蘭のことがずっと好きだった」

「な、じゃあ、なんで今まで黙ってたのよ!」

「蘭こそ、素直じゃなかったからだろ」

「うるさい、うるさい! ……でも、これからは、素直になるように、頑張るから」

蘭はそう言って、悠人の手をぎゅっと握った。取扱説明書に記された「本音モード」は、想像していたよりずっと、温かいものだった。

【製造者より】

本製品は、末永くお使いいただくことで、より深い信頼関係を構築できる仕様となっております。取扱いには根気が必要ですが、その分、得られる幸福度は保証いたします。

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