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女神の巫女が歌うのは

楽しんでいただけたらうれしいです!




 あの庭園で、女神レヴィアータが見せてくれた地図に本神殿だけ紋章がなかった。


 本神殿の紋章は大きな丸の中に少し小さな丸を描いて、大きな丸と小さな丸の間にさらに丸を六個並べたものだ。

 その本神殿の紋章と女神レヴィアータ渡された装飾品がよく似ている。これもはじめ腕輪の状態だった。

 なにか関係があってもおかしくない、ない方がおかしいんじゃないか?


「調べる前に、まずはおさらいからいってみよっか〜」


 ティナがウキウキしてるのはなんでだ?




◇◇◇◇◇◇◇




「まずは、この国のことから復習ね」


 この国はシェターナス王国。

 守護女神レヴィアータにより守られている国だ。現王家はノルマンド家。


 他国と比べても長い歴史と広い国土を持ち、かつては貴族による領地争いも何度か起こっているが、他国への侵略戦争は起こっていない。起こせない、とも言える。

 国土はそのほとんどが海に面していて、陸続きなのは北西の一部だけ。そこだって十日くらいなんにもない場所をひたすら歩いても行き着くのは高い山脈。この国を斜めに突っ切っている山より高いらしい。

 そんなとこを越えて侵略に行く意味はねーよな。


 王都がある王領はその昔、北領と呼ばれていた。王都は北都と呼ばれていて、王という存在がいない時期が割と長く続いた。


「そういやぁ、なんで王様がいなかったんだ? 王様って、女神レヴィアータからお前やれって言われるんじゃないのか?」

「伝えられているのはね、王様をやれそうな貴族が最初四人、四家あったんだってさ」


 だから国を四つに分けてまず四つの土地を四人の貴族それぞれに治めさせたって訳だ。

 それが東・西・南・北の四領。


「各地の発展具合から北領のノルマンド家に代行者としての王位を授けたんだけど」


 初代国王、アルフェウス・ノルマンド。

 この人はなかなかの逸話があるらしい。

 「王様やって?」「ぜってーいやだ!」ってやりとりを女神レヴィアータと三年に渡ってやったらしい。


「なんで嫌がったんだろうな、王様」


 あたしはそんなものやりたくないけど、領主やれる人なんだろ? そういうヤツラって偉くなれるのは喜ぶもんじゃねーか?


「初代国王はさ、そのとき十五歳だったんだって」

「十五ぉ!?」


 あたしより一つ年上なだけかよ!


「前領主の父親が亡くなって、領主になったばっかでさらに王様なんてできるかー!! ってことだったらしいよ」


 当たり前だっつの! それは女神がのムチャ振りがすぎるんじゃねーか!?


「なら他の人にやらせてもよかったのに、なんで」

「王様業は四領主の誰がやっても良かったんだ。けど、領主が王様になったらノルマンド家以外は他に領主をやれる人がいなかった。ノルマンド家だけは領主が国王になっても問題なかったらしいよ」


 領主になったばっかで?


「ノルマンド家を継いだのはアルフェウスだったけど、彼には双子の姉がいたんだ」


 アルフェウスの双子の姉・ヴェルセリアは、弟に王様になるよう諭し続けた。

 やがて婚約者の騎士に嫁いだヴェルセリア。子どもができて、お腹の子どもが生まれる直前までヴェルセリアは弟に王様になれと言い続けた。

 そしてアルフェウスは王位に就くための条件を姉に出した。


「条件?」

「子どもの乳離れが終わったらヴェルセリアが領主になる、その約束を守るなら王様やってやる、ってさ」


 マジか?


「これはあまり知られてないけどホントの話。もともと先代領主が病に倒れてから姉弟で協力して北領を回してたからヴェルセリアも領主としての資質はあったんだと思う」


 ヴェルセリアは約束を守って北領の領主になった。

 他家から不満はあっただろうが、アルフェウスが王位に就くのは女神の意向、そのためにはヴェルセリアが領主にならなければいけない。渋々見守ったヤツラも多いだろう。

 けれど北領はヴェルセリアの死後、王領となる。なぜか。


「アルフェウスには息子が一人だけだったし、ヴェルセリアの子どもたちはだれも領主にならなかったからだよ」


 領主の子どもがだれも次の領主にならなかった?


「なれなかった、じゃなくてか?」


 ふさわしくなくてなれないとかならありそうだけど。


「ヴェルセリアは弟の血筋に領地を返したがっていたんだ。それを子どもたちも知っていた。息子は父親と同じ騎士になっちゃったし、その双子の妹は」


 双子? ヴェルセリアの子どもも双子?

 双子には双子が生まれやすいのか? 


「本神殿の、女神の初代巫女長になった」


 ある時各地で女神レヴィアータから神託があった。


『今年。七つ、十二、十七になる娘を集め歌わせよ。その中で資質ある娘に我の巫女としての役目を与える』


 国中からその年齢の子どもたちが王都や各領都に集められて、何人かの娘がなぜか同じ歌を歌った。

 娘たちは皆同じように言った。


『頭の中に知らない歌が浮かんで、女の人の声でこれを一緒に歌おうって言われたから』


 その中には十七になるヴェルセリアの娘もいた。

 彼女たちが資質を持つ女神レヴィアータの巫女とされ、やがて本神殿と三神殿が建てられた。

 のちに女神の巫女は七歳の娘からしか選ばれなくなり、いつしか七つの儀式として毎年行われることになる。


「七つの儀式かぁ〜」


 あの時の歌は、あの人の。


「なぁ、ティナ」

「ん?」

「巫女になるのは昔と同じなのか?」


 いまも頭の中に歌が浮かんでくるヤツが選ばれるのかどうか。


「うーん、実はそうじゃないんだ」

「違うのか?」

「歌は決まってるよ。七歳の新年が近づくとみんな子どもに教えることになってる」

「じゃあどうやっていまは巫女になるのが決まるんだ?」

「それはわたしにはわからないよ」


 それもそうか。

 巫女のあたしも知らないんだから。


「神殿に秘密は多いみたいだよ。巫女になる女の子がどうやって決まるのかもそうだけど」


 そこではたと口を閉じたティナ。あたしをじいっと見てくるから居心地悪い。


「な、なんだよ」

「リアは、七つの儀式の歌を誰から教えてもらったの?」

「あー、それはあたしを拾ってくれた人がたまに会うと歌ってたのを歌っただけ」


 ある日突然神殿に連れていかれて歌えって言われても歌なんてそれしか知らなかったからな。


「その歌、いまも歌える?」


 なんでそんなこと聞くんだ?


「歌える、けど」

「いま歌ってくれない?」

「え、やだ」

「なんでー?」

「あんま外で歌いたくない!」

「なら神殿の中で!」


 神殿の中ならまぁ、いいか。


 しぶしぶわかったと言うが早いか、ティナはあたしの腕を引っ張ってけっこう強引に連れて行った。


 なんなんだよ〜!?





◇◇◇◇◇◇◇





《北の(そら)に星六つ

 女神さまの導きで

 紅い焔が燃えている

 

 東の丘で風が吹く

 二羽の小鳥は

 (そら)で遊ぶよ


 西の広場に子どもが二人

 騎士さん真似してヤァトゥと

 見守る犬も………》



 運よく誰もいない礼拝堂の中。女神像の前であたしは歌った。


 あの時と同じように、あの人を思い浮かべて。

 歌い終わったあたしにティナが固い顔で迫ってくる。


「リア、それを歌ったの? 七つの儀式で?」


 ヤベーんだけど、ティナのマジ顔、ちょいこえー。


「ま、まぁな」

「みんな驚いたんじゃない?」

「ああ、孤児院育ちの小汚いガキがいきなり古語ですらすら歌ったってんで、神殿のお偉いさんが大騒ぎだったらしいぜ」


 それはあとから知った話だ。誰から聞いたかなんて忘れちまった。

 あんな頃のあたしは歌なんてこれしか知らなかった。あの人がよく歌ってたから覚えただけだし。

 あん時だって。

 この歌を聴いたあの人が、知らない大人だらけのこの堅苦しい場所でひょっこり顔を出して笑ってあたしの名前を呼んで、駆け寄ってくれないかな、なんて考えてた。うわ、今思うと甘ったれでクソ恥ずかしいな。


「たぶん、それだけじゃないけど」


 ティナが頭を抱えてしまったその意味はすぐにわかった。


「誰がそこで歌っているの!?」


 血相を変えて礼拝堂に入ってきたのは巫女長オルナと、ルクシラだった。

 なんでそんな焦ってんだ? この二人。


 ティナが小さくやっぱり、と疲れた様子で呟いた。





初めてまともに(?)歌らしい歌(?)を歌ってる気がします。でもわらべうたとか、詩みたいなんですよね………精進します!

この作品にも読んでくださってる方、ブクマしてくださってる方がいることがとても嬉しいです!

読んでいただきありがとうございました♪

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