平等、不平等。
「僕、またなんかやっちゃいましたあ?」
異世界物の鈍感主人公特有のセリフだ。言ってみたもののこれ滅茶苦茶恥ずかしいな…
ところで今の魔法はどうだったんだ?
「どうですか?これで大丈夫ですか…ね?」
少し謙虚な姿勢を出しつつエリスさんに話しかける。
「あ…えっと…うん。初めてでここまで魔法の才能がある人は見たことないからびっくりしちゃったわ。ええ、間違いなく素質はあるわ。(今、アオイ君が魔法を放った時の感じ…やっぱり)」
なにやらエリスさんがぎこちない。そんなに僕の魔法がすごかったのか。あっちゃ〜。
内心すっごくウキウキしている。
エリスさんが咳き込んでから続けて話す。
「コホン、ここまで才能があるなら教えることは少なそうね。でも一つ覚えておいて、慢心はダメよ。それじゃあ早速修行を始めましょう!」
「わかりました!」
その日は基本的な魔法を約2hほどかけて一通り学んだ。ありがたいことに僕は全ての属性に対してかなりの素質があった。
魔法の修行に一区切りついた頃には丁度お昼になっていた。修行の後の飯は格別だった。
〜〜その日の午後〜〜
僕とエリックさんは剣を構えて対峙していた。
「オラアアア」
エリスさんの掛け声があるや否やエリックさんが叫びながら思いっきり剣を振りかぶってくる。
(左かっ!)
僕は相手の剣筋に合わせて剣の刃を左に向け、加速させる。
「は?」
刹那の後、僕の剣は空を切り、代わりに首元がひんやりとする。
見るとエリックさんが剣を僕の首元に押し当てていた。
「参りました…」
(何でこんなことになっているんだ…)
〜〜〜〜〜〜
時は昼食後まで遡る。エリスさんは魔法の修行は午後、あるいは夜までかかると思っていたそうだ。
そのためエリックさんによる剣技の特訓は次の日からの予定だった。
しかし、僕に余りにも魔法の才能があったため(ドヤッ)、急遽午後からエリックさんに剣技を教えてもらうことになったのだった。
頭脳派のエリスさんに対して比較的脳筋なエリックさんは「習うより慣れろ」ということで早速模擬試合をすることになった。
僕は魔法の才能が人並み以上にあったから少し浮かれていたのかもしれない。その結果があのザマだ。
〜〜〜〜〜〜
「まあ初めてで俺に勝てるはずもねえ。これから毎日、びっしり特訓するぞ!」
そういうエリックさんの言葉が頭に入ってこない。最初の左からの攻撃がフェイクだったのは理解できる。だがその後、一切剣筋が見えなかった。ヒトは訓練であそこまで強くなれるのか…?
「おーい、聞こえてるか?」
「あっすみません。少し考え事を……..。」
「剣が全く見えなかったんですけど人間にあんな速度で剣を降ることができるんですか?」
そこでエリックさんは、はっと何かに気づいたかのように言う。
「そういえばお前、魔素による身体強化を知らねえのか?」
「魔素…?それって魔法の時に使うやつでは?」
「なるほどなあ…そこからか。」
何かを察したエリックさんはそう言う。
「”この世界で”戦う以上、魔素の恩恵を最大限受けないとやってられねえ。どう言うことかと言うと、だ。魔素ってのは適性があれば何でもできるシロモノだ。そこで魔法使いが魔素を魔法に変えるように、剣士は魔素で自らを強強化する。例えば敏捷性を上げたり筋力を増やしたり動体視力を高めたり…」
確かに、人間の普通の力だけなら剣士が魔法使いに勝てるはずもない。それならば剣士はいらないはずだ。
だが事実として剣士はポピュラーだ。である以上そういうことだと気づけたはずなのに…。
あとはこの話を聞いて気づいたのだが、元の世界とこの世界の一番の違いは平等か不平等か、にあると思う。
元の世界では銃を持てば誰だって人を殺せるし、ミサイルを打てば誰でも街を破壊することだってできる。
しかしこの世界はどうだ?魔素を操る素質がない人間は絶対に強くなれない。
逆に、魔素を操る素質がある人間はどこまでだって強くなれる。
元の世界の軍隊を一人で壊滅させられるような人間もいるだろう。何なら僕の竜巻でも可能なのでは?
そんなことを考えていたのも束の間、早速身体強化の練習を始めることになった。
どうやらエリックさんは感覚でやっているらしく、教えるのに苦難していた。
しかしながら、エリスさんの助力もあり、その日の夜には僕もエリックさんの剣技を見切れるほどには身体強化をできるようになった。
ここでも魔素に対する異常なまでの適性に驚かれた。これがラノベでお馴染みの異世界人ボーナスなのかもしれない。




