運命(さだめ)、冒険者。
数分してエリスさんが三人分の食事を持ってくる。
シチューかな?
「いただきます!」
そう言ってスプーンで一口。
「美味しい!」
元の世界で食べる体に悪いインスタントやファストフードも美味しいがこの野菜たっぷりのシチューもとても美味しい。野菜を美味しいと感じる日が来るとは思わなかった。
「だろ〜!やっぱエリスの料理は絶品だよな」
エリックさんが言う
「本当にそうですね。感動しました!」
僕もそれに同意する。
「もう!あなたったら」
恥ずかしそうだがエリスさんも喜んでいるのだろう。自分の料理を褒められているんだからね。
「それで本題だ。まずアンタはどっからきたんだ?」
「えっとー…その…実は記憶を失っていて気づいたらここにいたんです。」
流石に無理があるかもしれないが言い訳の際の記憶喪失は鉄板だ。
ただそれ以上に嘘をつくことへの罪悪感に苛まれる。
「そうか…ならそれ以上は聞かないでおこう。」
これは嘘だとバレている…か
でもその上で聞かないでくれる優しさ。本当に申し訳ない。
「じゃあこれからどうするつもりなんだ?」
僕は….冒険者になりたい。健全な男の子なら誰だって一度は夢見る冒険者!
体が熱を帯びて、すごく興奮している。心臓の鼓動が明らかに早いのが自分でもわかる。
「えっと…冒険者になるつもりです。」
そうはっきりという
「冒険者…か」
そういうエリックさんの言葉を最後に沈黙が走る。
ここでふと気づく。そもそもここは本当に剣と魔法のファンタジー世界なのか…?
そして、冒険者なんて存在するのか?と言うことに。
それまでの興奮による体の熱が一気に羞恥と焦りによる熱になる。
もしもここがファンタジー世界じゃなかったらどうしよう…..//
「実は私たちも昔は冒険者だったんですよ!記憶を失っているんですよね?なら私たちの元で冒険者としての技術を学んでいきませんか?こう見えても実はかなりの凄腕なんですよ!」
軽く手を叩いてそう言うエリスさんの声が沈黙を破った。
よかった…..本当に。ここは剣と魔法の世界で間違い無いだろう。
羞恥と焦りによる熱が再び興奮と期待への熱に戻る。
「なら是非…僕を弟子にしてください!」
シチューの最後の一口を勢いよく飲み干して僕は言った。
あまりの興奮からか、考える前に反射的にそう言っていた。
一瞬断られない心配だったが、エリックさんとエリスさんは快く承諾してくれた。
何やかんや話して明日から稽古を始めることになった。
〜〜その日の夜〜〜
エリックさんとエリスさんの家には余っている部屋があったのでそこを自室として貸してくれることになった。
シャワーを使わない水浴びも味があってよかった。ちなみに今僕はエリックさんがくれた服を着ている。
この世界で制服は浮くからね。
異世界にきて数日。必然か偶然か、本当に良い人たちに出会えた。その上冒険者になれるなんて…!
その日の夜は興奮冷め止まず、なかなか寝付けなかった。




