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暁の海の女神  作者: 呉提督
21/21

第21話 国家総合戦略研究会 1

1940年 8月



太陽の鋭い日差しが全身に突き刺さる8月。

俺は海軍省の3階にいた。

その部屋には、俺以外にも国家の未来を

背負う若者たちが数人集められている。



「本日は忙しい中お集まりいただきありがとうございます。

現在の世界情勢は複雑怪奇であり、

どのように転んでもおかしくない状況です。

そこで、今回、我々は仮に日本が米英と開戦した

場合、我が国がどのように対応していくのか、

それを議論していきたいと思います。」



今から3ヶ月前、

俺はプルチョフ大臣に、各分野の専門家を集めた

戦略研究会の開催を要請した。

第二次世界大戦が国力のすべてをつぎ込む

総力戦になることはよく知られている。

そうなった場合、軍政民が一体となって

戦わなければならない。


そうして組織されたのが、

この「国家総合戦略研究会」なのだ。

議長は俺。

他のメンバーは、陸軍参謀部の参謀、

先技研(先進技術開発研究所)の研究員、

石油省(バギーニャにおける石油の管理を行う)の官僚、

外務省外交部の外交官、

そして、海軍からは、俺の見張り役と称して

亜希子が派遣されている。



「それで、本日の議題は?」


「『仮に日本と我が国が米国と交戦状態に

陥った場合、我々に勝ち目はあるのか。』ということです。」



ここにいる面々には俺が未来から来た人間である

ことは伝えてある。

俺は初めに俺のいた世界で日本がどのようにして

米国と開戦し、どのように敗れていったのかを

説明した。



中国との戦争(この時代の正式名称は支那事変)で

泥沼にはまり、終結の糸口が見いだせなくなったこと。

援蒋ルートを遮断するために仏印に進駐して

米国の怒りを買ったこと。

どうしようもなくなった日本は

「ドイツが勝ってくれれば・・・」という

他人任せな希望的観測で開戦したこと。

そして、陸海軍の対立や、硬直した官僚主義に

よって柔軟な戦略をとれず、ミッドウェーから

連敗を繰り返したことも。



「日本は最後どうなるのだ?」


「連合国の沖縄上陸を許した日本は

爆弾を積んだ飛行機で体当たりする特攻隊を

繰り出して抵抗しましたが、1945年8月、

2月の原子爆弾を投下され、戦争に負けました。」



「原子爆弾!?核反応爆弾のことですか?

米国はあれを完成させるのか・・・」


先技研の研究員はそれがなにを意味するのかを

よくわかっているらしい。

彼の顔は明らかにひきつっていた。


「そうです。

まず、日米の国力の比較から始めたいと思います。」



参加者から次々とデータが提出された。


石油産出量、石油精製量、石油備蓄量、

自動車生産数、自動車保有数、

航空機生産数、航空機保有数、

タンカー保有数、・・・


公表されていない情報も多いので、

そこはバギーニャ省庁が公表されているデータを元に

予測した数値を提出してくれたのだが、どれも酷いものだ。

石油産出量にいたっては米国は日本の300倍以上、

石油精製量も50倍近くにのぼる。

よくもまあ、こんな国と戦争する気に

なったものだと俺は呆れた。


ほぼすべてにおいて、日本の産業は

米国に圧倒されていたが、ひとつだけ、

日本が米国に勝っているものがあった。


太平洋方面における海軍力。

日本正規空母10隻に対してアメリカは4隻。

戦艦の数は6:8と日本が負けているが、

巡洋艦、駆逐艦、潜水艦数で日本は

アメリカを凌駕しており、日本に薄い

勝ち筋があるとすれば、そこしかない。


まあ、その海軍力も1942年には逆転されちゃう

んだけどね。

だから、海軍の良識派も早い段階での

開戦に賛同したわけで。



では、その国力に劣る日本が

どのような戦略を立ててくるのか、

その研究は次回に持ち越しとなった。

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