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第九話「製薬工場回収作戦ー2」

「私のアサルト、残弾が少ないから…」

レイノアがイーリスに警告しておく。

「ふふん、敵なぞ、見つからなければ良いだけなのじゃ」

イーリスがそう言った瞬間、今いた個室の扉をぶち破って、犬が二匹現れた。

「…見つかったんだけど!?」

「な…なんと!?」イーリスは懐から細長い銃を取り出した。

太古の昔の銃だ。

「この【ヒナワ】で消してくれるわ!」

「一人一体ずつやる?それとも…」

「いや、こやつは任せるのじゃ、レイノアはもう一匹を!」

「了解!」レイノアはイーリスが補足している犬とは別の犬に飛びかかる。

顎に銃身をぶち当て、怯んだ所に連射を始めた。弾が少ないので、再び頭を銃身で殴って止めを刺す。

そこに黒焦げになった犬が飛んできた。

振り向くとイーリスが太古の銃を持ってニヤリと笑って言う。

「さて、行こうかの?」

「そんな凶悪な武器だったなら、なんで今は使われてないの…?」

「いや、元は弱い武器じゃよ?ワシが少し手を入れただけじゃ」

「なんだかなぁ…」レイノアは残弾を見て眉をひそめながら、犬の死体を見た。

「どうした?レイノア?」

「…いや、何でもないよ…行こう!」

レイノアは爆弾を探し始めた。イーリスも小さな端末をいじりながらついてくる。

「…ん、このあたりじゃな」

イーリスは呟くと、ゴミ箱の中から【53】とかかれた爆弾を取り出して見せた。

「53だけにゴミじゃ」

「性能は高いんでしょ?」

「性能もゴミじゃ…手榴弾並みの…」

「いや、充分だと思う」

レイノアは次の爆弾を探し始める。

イーリスが設置した物なので目的の爆弾はすぐに全て回収することが出来た。

「…なにこれ」

イーリスが最後に見せたのは明らかに成人向けのカラフルな雑誌…。

それに繋がれた結構大きめの救急箱。

「ページを開くと作動するのじゃ」

「…ちなみに作動すると?」

イーリスはにっこり笑う。

「この町が吹き飛ぶ」

「作動したらどうするつもりだったのさ…?」レイノアはアサルトをイーリスに向けて言う。

「ちょっとしたジョークのつもりだったのじゃが…引っ掛からないものよのお…」

「ジョークで町を消すなっ!」

「…およ?」

イーリスが変な声をあげる。

直後、階下で爆発音が聞こえた。

「ちょっ…何!?」

「下に仕掛けたのは確か…」イーリスが息を飲んだ。「ロバートが…!」

イーリスは立ち上がって走り出し…

「あ、イーリス待って…!」

「へぶぅっ!」転んだ。

「やべ…」ロバートが後ずさる。

「ひいいい…」マイルロフは縮こまる。

「…二本足のトカゲ…か?」

クレイスは呟いた。

全身を黒い鱗で覆い、強靭そうな太い後ろ脚で立ち、前足についたナイフのような爪をちらつかせながらこちらを睨む。

…恐竜のようにも見える。

「ブラックネイルだ…」

ロバートはクレイスの前に立つ。

「…ロバート?」

「こいつの攻撃を俺が受け止めたらオヤジさんを連れて逃げてくれ…」

ロバートはそう言って盾を構える。

「…断る」

クレイスはロバートと肩を並べた。

「クレイス!こいつはヤバいんだって!まともに勝てる相手じゃ…」

「…まともじゃなきゃ勝てそうだろ?」

クレイスは銃を構える。

「…ははっ」ロバートは少し笑う。「隊長はやっぱり無茶苦茶だなぁ」

黒いトカゲの前足が二人を襲った。

「◆絶対防御!」

ロバートは盾で前足を弾き返す。

その隙にクレイスは相手に発砲した。

「…マグナム弾でも弾くか…!」

クレイスは距離を取りながら言う。

「クレイス、こいつは現段階じゃダメージを与えるのが難しい…!」

ロバートは更に攻撃を受けながら叫ぶ。

「…ちっ!」

クレイスは舌打ちすると、スモークグレネードを相手の眼前に投げた。

「よし、クレイス…ナイス!」

ロバートが親指を立てた。

「ほら、逃げるぞ」

物陰で震えていたマイルロフを引きずりながらクレイス達は走った。

瞬間、煙がトカゲの顔を覆い、トカゲはがむしゃらに暴れ始める。

「…クレイス!」

逃げている途中、レイノアがいた。

しかし再開に浸っている暇ではない。

「いいから逃げるぞ!」

「…はぁ…はぁ…」

クレイスは宿屋に着くなり一瞬で身支度を整え、レイノアの手を引きながら駅に向かった。

「クレイス!待って!」

駅に着くなりレイノアが手を離す。

「…レイノア…」

クレイスは肩で息をしていた。

鏡を見たら多分、とても情けない顔をしているような気がする。

「…怖かったの…?」

「…っ!」クレイスはレイノアを駅の煉瓦の壁に叩きつける。

「ぐうっ…」レイノアが顔をしかめた。

「俺は何も恐れちゃいない!あんな…」

クレイスはうずくまった。「う…」

「クレイス…」

「俺達は…逃げられるのか…?帝国から…あんな奴らから…逃げられるのか…?」

結局あのあとあの建物からトカゲは消えたらしい。何処かへ歩いた訳でもなく、消失していたのだ。

警備の機動隊が来たころにはもう暴れた後しか残っていなかったのだ。

マイルロフは精神崩壊を起こしていた。

あの黒いトカゲはただのエネミーではない。恐怖を操っていたとしか思えない。

「…クレイス…大型のエネミーは特殊な能力を持っているの…人類の科学じゃ到底真似できないような…ね」

クレイスは顔を上げた。

「…なぜお前がそんなことを…?」

「クレイスが一階にいた間、二階に資料室があったから…」

「…お前は…いつから味方になったんだったか…?」クレイスはレイノアを睨む。

レイノアは後ずさって壁に体を押し付けた。クレイスを見て震えている。

「クレイス…落ち着いて…?」

「お前と初めて会ったのは確か、帝国の基地の最新部だったな…」

「クレイス…やめて…」

レイノアは泣きそうな顔になる。

「あの頃は帝国に拉致された被害者なんだと思った。だが…それにしちゃ銃の扱いに長けすぎじゃあないか…?」

「やめてよ!」

クレイスははっと我に帰った。

レイノアは両手で顔を覆い、しゃくりあげている。…俺は…レイノアを疑った…?

「いや…そもそもだ…じゃあなんでレイノアを俺は守り続けようと…」

何か生き物を頭の中に入れたようだ。

頭がうねるように痛い。

「…」クレイスは無言でレイノアの手を引いて電車に乗り込んだ。

…レイノアは、何者なんだ…?

「…兄さん」ラムはいつもの宿屋に入った。兄はいつものベッドに座っている。

「私は悪くない…私は悪くない…」

「兄さん?」しわがれた老人は淀んだ目でラムを見た。

「ラム…夕食にしようか…」

「うん…兄さん…」

ラムは手に持った袋からパンやハムなどを取り出して調理場に並べる。

「…なぁ、ラム」

「どうしたの?兄さん」

「お前…何人目だ…?」

奇妙な静寂が流れる。

「…僕はラムだよ。ラムは僕。兄さんだって一人しかいないだろ?」

「はは…そう…だよな…はは…」

「兄さん…ちなみに今は昼だよ…」

ラムは少し遅めの朝食を作り始めた。

…まだ昼には少し早い。

「クレイスがあぁなるなんてな…」

ロバートはヘリコプターに乗りながら、イーリスの手を引いた。

「…まぁ、少し刺激が強すぎたのじゃろう…」イーリスはロバートに引かれるままヘリコプターに乗る。

「…もう少しで夏だな…」

ロバートが操縦席に座りながら言う。

その膝の上にイーリスが座った。

イーリスはヘリコプターの操縦が出来るが…操縦席に座れないからだ。身長が低すぎて…。

「着るものを減らせば良かろう」

イーリスは操縦を始める。

「…俺は減らせないぞ?」

と、右膝を蹴られたのでロバートは右のペダルを踏んだ。

二人を乗せたヘリコプターは、そのまま北の空に消えていく。

残されたのは、ショットガン片手に帝国兵の鎧に身を包んだ男が一人。

「マジかよ…俺のヘリ…」ソフトは空を見上げて途方に暮れていた。

「大湖横断鉄道ゴームは、間もなく発車します。皆さん、よい旅を!」

アナウンスが流れてくる。

列車が動き出した。

「ラウルさん…本当に列車の中で歌わないと駄目ですか…?」

ピンクの長い髪をツインテールにして、豪華な衣装に身を包んだ少女は言う。

「ははは、これも仕事だよ?」

「こけたらどうしますか…?」

「人気がこけなかったら問題ないさ」

「…」

ラウルは彼女のマネージャーだった。

彼女は覚悟を決め、マイクを取る。

「行ってらっしゃい」

ラウルは手を振った。

だから少女も振り返した。

その日彼女が歌を歌うことは無かった。

【続く】


ご無沙汰してました

ケイオスです。

この爆弾回収編はあまり

内容を考えてなかったので

駆け足になってしまいました…。

次回からはしっかり

ブラフ通りに【ならないことが主ですが】書いていきたいと思ってます!

さて、節目なので次回予告です!


次回予告 担当 レイノア

私はマドゥル・シャンペンを出た。

恐怖に怯えるクレイスと共に。

そんな中列車はハイジャックを受け、

マッドフィッシュはその牙を…

駄目だぁ!私には無理だぁ!

【せめて締めはやってくれ!】

え、しめ?わかった

次回「フローティングライン」

私とクレイスは、眠り続ける…。

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