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【小さな案内役】

「……リリー様、聞こえますか?」


澄んだ声が耳に届き、意識が少しずつ鮮明になっていく。


頬を撫でる穏やかな風。湿った土と草花の香りが漂い、遠くから鳥のさえずりが聞こえてくる。


「……ん、誰だろう?」


少女はゆっくりと目を開いた。


視界いっぱいに広がっていたのは、頭上を覆う枝葉と、その隙間から差し込む柔らかな陽光だった。


「よかった。ようやく目を覚まされましたね」


声のする方へ顔を向けると、目の前には不思議な存在が浮かんでいた。


大きさは十センチほど。薄紫色の短い髪に金色の瞳を持ち、白と銀を基調とした幻想的な衣装を身につけている。


半透明の小さな身体が、淡い光を放ちながら宙に浮かんでいた。


「……精霊?」


思わず呟くと、その存在は嬉しそうに微笑んだ。


「いいえ、正確には精霊ではありません。リリー様がお持ちのスキル〈霊導共鳴〉が形を成した存在です」


「はじめまして、私はレーテと申します。これからいろいろとお手伝いさせていただきますね」


「レーテ……?」


丁寧でありながら、どこか親しみを感じさせる話し方だった。


リリーフは身体を起こし、改めて周囲を見渡した。


見知らぬ森の中だった。背の高い樹木が立ち並び、足元には柔らかな草が生い茂っている。


「俺は、どうしてこんなところに?」


口から出た声に違和感を覚えた。


以前よりもずっと高く、透き通った響きがある。


自分の手を見下ろすと、そこには細く小さな指があった。身につけている服も、記憶にあるものとはまったく違う。


(……女の子になってる?)


疑問はいくつも浮かんだが、今は状況を整理することが先だった。


「レーテ、ひとつ聞いてもいい?」


「もちろんです。何でしょう?」


「俺の能力って、確認できるのかな?」


「はい。『ステータス』で、現在の能力値を確認できますよ」


その言葉には聞き覚えがあった。


リリーフは自分の情報を確認しようと意識を向ける。


すると、視界の前方に半透明の画面が現れた。


そこには名前や職業をはじめ、さまざまな項目が整然と並んでいた。


【ステータス】


名前:リリーフ・マナウッド

性別:♀ 年齢:16

種族:神樹族 職業:樹天士

称号:万象の創造主/始原の女神/二度の転生者

Lv:1/100


HP:200

MP:100

SP:100


筋力:300

敏捷:400

体力:200

魔力:300

精神:200

幸運:200


物攻:150

物防:100

魔攻:150

魔防:100


【スキル】


〈魂の世界〉 ランク:レア

Lv:1 熟練度:0


〈霊導共鳴〉 ランク:レア

Lv:1 熟練度:0


〈星霊歩〉 ランク:ノーマル

Lv:1 熟練度:0


「リリーフ・マナウッド……。ああ、名前は女神だった頃に戻ってるんだな」


表示された情報を順番に読み進めていく。


「それにしても、樹天士って何だろう。聞いたことのない職業だな」


HPやMPなど、理解できる項目もある。一方で、それぞれの数値がこの世界でどの程度の水準なのかは判断できない。


「なるほど……これが今の俺のステータスなんだね」


ひと通り確認したところで、リリーフはふと別のことが気になった。


「レーテ、スキルについて説明してくれる?」


「わかりました。現在リリー様がお持ちのスキルは、〈魂の世界〉〈霊導共鳴〉〈星霊歩〉の三つですね」


レーテはステータス画面のそばまで移動した。


「まず、〈魂の世界〉は、リリー様だけの特別な世界を扱うスキルです。その世界には城や街があり、配下の精神体たちが暮らしています。また、彼らを実体化させることもできますし、物品の管理や保管ができる倉庫としても利用できます」


「魂を実体化できるの?」


「はい。ただし、実体化には条件があります。また、現在はスキルのランクがレアになっているため、女神だった頃と同じようにすべての力を扱えるわけではありません」


「なるほど。前に使えていた力にも制限があるんだね」


「そういうことです」


レーテは続けて、二つ目のスキルを示した。


「〈霊導共鳴〉は、私自身に関係するスキルです。知識の説明や状況の分析、魔法の補助など、さまざまな形でリリー様をお手伝いできます」


「魔法の補助もできるんだ?」


「はい。詠唱を代わりに行うこともできますよ。それから、条件が整えば、新しいスキルや魔法を創り出すことも可能です」


「新しいスキルまで創れるのか。それは便利そうだね」


「ただし、能力の創造には相応の消費や条件がありますので、いつでも自由に創れるわけではありません」


「うん、そこは気をつけないとね」


「そして最後の〈星霊歩〉は、足に魔力をまとわせ、その位置を固定するスキルです」


「足を固定する?」


「はい。空中でも足を固定できますので、使い方によっては空を移動することもできます。ただし、足場そのものを作るわけではありませんし、魔力も消費します」


「へえ……面白そうなスキルだな」


三つのスキルには、それぞれ異なる使い道があるらしい。


まだ実際に試してはいないものの、どれも今後の旅で役立ちそうだった。


「それと、リリー様。一つ提案があるのですが、今後街などで正体や能力を知られると、面倒なことになるかもしれません。今のうちに、ステータスの情報を改変できるスキルを創っておきませんか?」


「確かに、余計な騒ぎは避けたいな。うん、先に作っておこうか」


「それでしたら、ステータスの表示内容を自由に変更できるスキルはいかがでしょうか? 情報を隠すだけよりも、不自然に思われにくいはずです」


「なるほど。それなら必要な情報だけ変えられるし、よさそうだね」


「はい。これなら必要に応じて情報を調整できますし、余計な疑いを持たれる可能性も減らせると思います」


「うん。せっかくこの世界に戻ってきたんだし、できるだけ面倒なことには巻き込まれたくないな」


「ふふ、そうですね。ですが、リリー様なら何かと目立ってしまいそうな気もします」


「……それは困るな」


レーテの言葉に、リリーフは小さく笑った。

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