その六 ろくでない密約?
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本文の時と同じ、投稿するたびブックマークが消える呪いを受けております。
夏のホラーよりもドキドキです。
克己から渡された麦茶を飲んで落ち着いたのか、遊里はひと息を吐くと克己に感謝するような目線を向けると話し出した。
「……だい、じょうぶだ。雪也、純広雪也の言う事は、状況をまぜっかえして喜んでいるだけだから、話し半分で聞いて。僕はアルに対して、一度だって傷つけたいなんて思ったことなど無い。そんな、遊びの対象に考えていた事なんて、絶対にないよ。」
「嘘つけ。会いたくて、会いたくて、叔父さん誑し込んでアルの親父さんと契約させたりまでしてんじゃん。」
遊里は従兄弟の純広の台詞に言い返すどころか、再びアイスの頭痛がぶり返したというように床に寝転んでそっぽを向いた。
「お前ら、帰れ。この家に何かしたら俺が許さない。世界をもう一度リセットするぐらい俺は訳はない。」
純広は挑戦的に青い瞳を輝かせ、床に寝転んでいた遊里も身を起こして克己を見返して来た。
その瞳は純広のように本来の緑色の瞳にして、純広の眼差しには無い克己を見下げ果てるような色合いも見て取れた。
そんな遊里の眼差しは、克己がジャンだった頃に公爵であるロアストクがジャンに向けたものと同じものである。
「貴様らは、あの時と同じ、俺には絶対に屈しないという事か。」
「君が知らず知らずのうちに人でありたいと望んだように、僕達だって彼女に出会った事で人でありたいと望んでいるんだ。」
遊里はこの世界でも克己よりも確実に高い身長を見せつけるようにして立ち上がると、その身長差を克己に思い知らせるようにして見下ろした。
それから遊里はさらに克己に挑むような言葉を続けたのである。
「君の望む未来でなければ彼女の未来を壊す?それは男としてどうかな?」
完全に遊里はロアストクとして克己に挑んでいる、と克己は思った。
そして克己こそ、そんな身長差など無意味であるという風に余裕の笑みを見せながら睨み返し、言葉だって投げ返してやろうと口を開いた。
「ほーろろろ、ほけきょ。」
「え?ウグイス?」
遊里はきょとんとした顔つきになり、克己は、あの親父め場を壊しやがって、と恩義のある中年男を思い浮かべて心の中で大きく詰った。
しかし、純広だけはしてやったという顔を作り、元気よく立ち上がるや克己の肩に友人のようにして腕を回して来たのである。
「ねえ、克己くん。野生動物のウグイスを飼うのはご法度だよ?警察にタレこまれたくなかったら、俺達と運命共同体にならねえ?」
「ウグイスじゃねえよ。」
「ま~たまた。」
「ほーろろろろ。ほろ。ほけほけちゅちゅん。けきょ。」
「あれ、本当だ。なんか変。」
再びの小鳥のさえずりに純広も遊里もきょろきょろと周囲を見回し始め、克己は種明かしをすれば彼らを追い出せるかなと考えた。
そこで、彼は動いた。
床の間の横の棚にある飾りにしか見えない障子戸を、これだという風にすっと開いたのである。
障子が開いたその中には、普通の大き目の鳥かごが鎮座していた。
けれどその中では、最近では珍しいともいえる小さな小鳥、鶯色のまだらがあるフィンチがぴょんぴょんと楽し気に飛びはねているのである。
純広も遊里も呆気にとられたようにして鳥かごの小鳥を見つめ、それにより、もともと臆病な品種の鳥は視線を逃れるようにしてツボ巣に隠れてしまった。
純広と遊里は小鳥が消えるや、何今の、という風に克己に振り返った。
その動作は双子のように同じタイミングで、同じような表情であり、克己はほんの少し大昔の作品であるホラーを思い出してぞっとした。
「かつみ、くん?」
「あ、ああ。こいつはローラーカナリアだよ。こいつらは囀りのレコードを聞かせて囀りを教えるんだそうだ。品評会に出すカナリアを作るにはね。」
「で、ここの親父さんは、ウグイスの囀りを聞かせてカナリアに本来の歌を忘れさせちまったって事か。アルの親父だけあって壊れているなあ。」
「純広、あの人を侮辱するな。俺はあの人を実の親以上に尊敬している。」
「そうか。人間でしかない人を尊敬だなんて、僕は君に安心だよ。で、そんな君が僕達に言いたいのは、君も本来のルシファーであることを忘れさせられたから僕達に心配するなって事か。了解したよ。」
「そうか?理解したなら、安心して東京に帰ってくれるかな。」
「ハハハ。駄目でしょう?駄目だって。お前のバールがお前がそんな腑抜けじゃ駄目だって来るでしょうよ?やっぱ俺達がここに残ってね、あの可愛いちっぱいなアルちゃんをちゃんと守らなきゃだと思わん?」
「だよねえ。雪也。」
「だろうよ。大那。俺達は親父さんが勧めてくれる通りに、夏休みはここでご厄介になった方がいいだろうねえ。」
「だねえ。ヤクザ顧問の弁護士なんて奴、君のお父さんの好物だもんね。だよね?系列ない地方ヤクザじゃ食指が動かない、かな?」
「安心して、大那。僕ちゃんはパパにとっては愛息子。好物じゃなくたって可愛い僕ちゃんが差し出したらパパは残さずに食べてくれるさ。」
克己の目の前で背中を向けている仲良し従兄弟らしき二人は肩を組みあい、顔を寄せ合い二人だけで仲良く会話しだした。
克己に、ちっぱい?どこで見た?との質問も挟めない壁になっており、克己の指示など一切聞く気も無いと見せつけているようでもある。
克己は奥歯を噛みしめた。
ローラーカナリヤに鶯鳴きを仕込んだ男に対し、彼は初めて恨みがましい気持ちを抱いていた。
こんな奴らと面倒を呼び寄せやがって、と。




