第九十話
ミニテーブルに笹森さんはベージュのトートバッグから透明な保存容器を出した。
「すみません。電子レンジお借りしますね」
「はい」
笹森さんはこの部屋の住人である俺よりも慣れた様子で電子レンジに保存容器を入れ、ミニテーブルに白いスーププレートとシリアルボウルを出し、温めたロールキャベツをスーププレートに盛り付けた。
「ロールキャベツですか?」
「はい、お好きですか?」
「大好きです」
「良かった。バイト前に作らなくちゃいけなかったから、揚げ物とかできなくて、やっぱり揚げたて食べてほしいですし」
「いいです、いいです。お昼鶏の揚げ食べましたし」
「すみません。クリスマスっぽくないんですけど、筑前煮も作ってきました。一応鶏肉入っています」
「凄いです」
「あと、ばら寿司。竹宮さんのお家の味と違うでしょうけど、作ってみました。おいなりさんにしようかとも思ったんですけど、ちょっと時間なくて。おいなりさんはまた今度で」
「おいなりさんも好きです」
「家の結構お揚げ甘いんですけど大丈夫ですか?」
「はい、甘いの大好きです」
「良かった。食べましょう」
「はい」
笹森さんは白いシリアルボウルにばら寿司を取り分けてくれて、白い小皿に筑前煮を子芋、蓮根、人参、ゴボウ、蒟蒻、しめじ、椎茸、ちくわ、鶏もも肉が均等になる様に盛ってくれた。
「上手ですね。盛り付け綺麗です」
「普通ですよ。野菜大きすぎますか?」
「いえ、これくらいでいいです」
家のは確かもう少し小さかったな。
蓮根とか、こんな風に豪快じゃなかった。
もっと薄く切ってた、サラダみたいに。
「すみません。もっと作りたかったんですけど、こうして並べるとクリスマス感ゼロですね」
「いえ、笹森さんが作ってくれたってだけで、嬉しいとかもう通り越してますね。感謝?嫌おこがましいですね。有り難すぎて、こんなに俺ばっかりいい目見ていいのかなって恐ろしくすらあります」
「オーバーです。約束通りトトロ見ましょ?」
「はい」
俺の部屋にはクッションと言うものもなければ座布団と言うものもないので、俺達はミニテーブルの前のソファに並んで腰かけて食べると言う俺からしたら最高に勿体ない態勢で食べることになった。
これじゃあ、録画できない。
「アニメのDVDいっぱい持ってきました。いっぱい見ましょうね?」
「はい」
まあいいか。
もう画面越しじゃなくていいんだ。
動画を集めなくてもいいんだ。
巻き戻さなくても、もう一回お願いしますと言ったら応えてくれる。
これから何度だって手を洗う彼女がいるんだ。
台所道具揃えたら俺の家で料理してくれる彼女だっているかもしれない。
彼女の可能性は無限なんだ。
彼女の黒いタイツが視界に入る。
そういえば今夜見れるんだ。
まだ一度も見たことのない彼女の白い爪先が。




