第七十一話
「もうそろそろ引きました?」
「引いてないですよ。引いてほしいんですか?」
「その言い方かっこいいです。もうちょっと呆れ気味に言ってください」
「難しいこと言いますね」
「そうですか。私いつもこんなですよ。友達ともこんな話ばっかりしてるし」
「仕事熱心なのはいいことでは?」
「仕事というより趣味です。お金もらえなくても考えちゃいます」
「想像力があって素晴らしいです。俺なんかそんな風に打ち込めるものなんか何にもないですよ」
笹森さんは急に静かになった。
すると部屋には音が無くなってしまった。
寂しい。
「わたし・・・」
「え?」
「わたしに、全振りしてるっていったじゃないですか」
「はい、言いました」
「わたし、そんなに貴方のこと楽しませてあげられる人間じゃないです」
「見てるだけで楽しいから大丈夫です」
「それ、本気で言ってます?」
「言ってます。貴方を見ているだけで生きていて良かったと実感します」
「そんなこと言ってもらえる人間じゃないです。私漫画とアニメとゲームの話しかできませんよ」
「それだけできるなら凄いです。俺なんか何にもできませんよ」
「かっこいいです」
「そんなわけないじゃないですか」
笹森さんは又沈黙した。
今度は長く。
でも俺はもう寂しいと思わなかった。
こういう時漫画では時計の音だけがしたりするんだ。
俺の部屋に時計はない。
今度買ってみようかな。
こんなこと考えられるようになったのも笹森さんのおかげだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・絶対に・・・・・引かないでくださいね・・・?」
「はい」
又沈黙だ。
俺は手持ち無沙汰の余り髪くくらせてくれないかなとぼんやりと思う。
やったことはないが三つ編みとかしてみたい。
きっと似合う。
「・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱりいいです・・・・・」
「そうですか」
「・・・・・・・・・・・・・・聞きたくないんですか・・・・・?」
「聞きたいですよ」
「じゃあ、聞いてください・・・・・・・・」
「何ですか?」
「・・・・・・・・・・・・・お家に寄ってって言われたから・・・・・・・」
「はい」
「・・・・・・・・・・・・・・・おかしなこと、想像したんです・・・・・」
「おかしなこと?」
「はい」
「おかしなことって?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・聞かないでください・・・・・恥ずかしい」
「はあ」
「はあじゃないです。その声禁止」
「どうしろと?」
「竹宮さん、貴方私のこと好きなんですよね?」
「はい、好きですね」
「そんな好きな子がこんなに近くにいたら天国状態じゃないですか?」
「天国ですね」
「この状態はゴーサインだと思いませんか?」
「ゴーサイン?」
「私が読んできた漫画ではそうです」
漫画?
漫画は読み始めたばかりでそんなに数もよんでないし、こんなシーンあったか?
そもそも好きな女の子と密着した男の漫画なんか読んでない。
笹森さんの漫画は完結してるのは全部男同士だったし。
新藤さんは宮下さんを膝の上に乗せていたな、これか。




