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ホムンクルスの箱庭  作者: 日向みずき
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ホムンクルスの箱庭 第3話 第8章『歪んだ愛情』 ⑤

いつも読んでくださっている皆さま、ありがとうございます♪

申し訳ないのですが、今週は忙しさがピークなのでもしかすると更新できない日があるかもしれません(´;ω;`)ウッ…

とりあえず、明日は何とか20時に更新できるように頑張りたいと思います。

「いくわよ、アハト!」


「ああ、子供たちを助けるぞ!」


 ソフィが飛行魔法(フェアリーフライト)をかけ直すと、4人の身体がふわり、と宙に浮いた。


「アハトはヒュドラの陽動を、フィーアは魔法で水晶の破壊を試みてほしい。ソフィは皆を守ってくれるかい?

 僕は皆が少しでも動きやすいようにサポートに回る。」


「了解だ!」


「うん!」


「わかったわ!」


 ツヴァイの指示に3人が頷き、それぞれに行動を開始する。


「こっちにこい蛇野郎!」


 アハトが先に動いて気を引くためにスタングレネードを放り投げた。

 それはヒュドラの目の前で爆発して強烈な閃光を放つ。


ギャオオオ!


 視界を奪われた数本のヒュドラの首が暴れまわり、アハトの身体を打ち据えようとしたところをソフィの防御魔法が防いだ。


「助かった!」


「いいから!次が来るわよ!!」


 礼を言う間もなく、視界を奪われていないほうの首の1本がアハトに食らいつこうとする。


「これでも喰らっておけ!!」


 小型のグレネードがヒュドラの口の中に放り込まれ、反射的にかみ砕かれたそれが白い煙を放つ。

 

 すると・・・


「眠った・・・?」


 煙を吸ったその首が力を失い、大きな衝撃と共に床に倒れた。

 ツヴァイが驚いたように言うと、アハトがにやり、と笑ってみせる。


「新作だ。数が作れないのが難点だがな。」


「アハト!!」


 その後ろから襲い掛かったヒュドラの前に時空の歪が現れて、アハトに食らいつく寸前で防がれた。


「僕たちが援護する、出来るだけフィーアから気を逸らしてくれ!」


「任せろ!」


 そんな戦いの中、フィーアも必死に考えていた。

 巨大な魔力のクリスタルを砕くには生半可な魔法では通じそうにない。

 かといって、ゼクスたちとの戦いのときに使ったような塔を一つ凍り付かせるような強力な魔法を唱える時間もない。


 さらに、クリスタルがあるのはヒュドラの頭上だ。

 飛行魔法(フェアリーフライト)がかかっているうちにそこまで近づく必要があるかもしれない。


 どうするのが一番いいのかな?


 考えられる方法で一番有効で確実なものを必死に探し出す。

 フィーアの視界に、ヒュドラの足元にある紋章陣が入った。

 ・・・もしあれをうまく利用することが出来たなら。




「フィーア!私たちに出来ることがあったら何でも言って!」


 フィーアが考えを巡らせていることは、攻撃にいつでも対応できるように辺りに気を配っていたソフィにも伝わっていた。

 声をかけると、フィーアは静かに頷いてまたヒュドラを見つめる。


「いいわ、その間、私たちが何としても守ってみせる。」


 水晶を砕く手段を持たないソフィが出来ることと言えば、アインがいない今、攻撃の要となるフィーアを守り、陽動をするアハトをサポートすることぐらいだ。


 陽動はうまくいっている、といってもそれが長く持つとは思えなかった。

 ヒュドラが暴れる度に施設が大きく揺れ、床が砕けて足の踏み場がなくなっていく。

 紋章陣から動くことが出来ないとはいえ、長い首を使ってヒュドラは広範囲に攻撃を仕掛けてきた。


 ちらっと、ヒュドラの奥で戦うアインたちに視線を送る。

 援護してやりたいところだが、ここからではその様子を覗うことすら難しかった。


 それと同時に、ソフィは先ほど施設長婦人に言われたことを思い出す。


『あら、不思議ね・・・あなたまだ生きていたの?おかしいわね。』


 あれはいったいどういう意味だったのだろう?

 裏切り者として始末されなかったのかという意味とは少し違う気がした。

 

 なにより・・・


「う・・・」


 あの階段を見た時から頻繁に起こっている頭痛に、ソフィはほんの少し顔をしかめる。


 いけない、今は戦いに集中しなければ。

 自分の記憶のことなど、今はどうでもいいではないか。

 何かを忘れていることは間違いない。

 だが、それは自分の問題でしかなくて、優先すべきは家族のことだ。


 そう自分に言い聞かせているのだが、落ち着かない。

 周囲に気付かれないようにするだけで精いっぱいだ。

 よくはわからないのだが、あの階段を上る映像を思い出し、意味ありげな言葉を投げかけられてから違和感がある。

 

 何に対する違和感か、それはもうわかっていた。

 自分自身に対する違和感だ。

 ここにあること、動いていること、指先一つ動かすごとに違和感が増していく。

 どうしようもなく気持ちが悪い感覚が全身にまとわりついてくる。


「だめ・・・皆を守らなきゃ。」


 それが自分がすべきことなのだから。

 護身用に持ち歩いている小さなナイフの切っ先を、こっそりと指先に当てる。

 指先に刃が刺さり、わずかに血がにじんだ。

 今はその痛みが自分を現実に引き戻してくれる。


「大丈夫、私はまだ戦える。」


 言葉を口にして、ソフィはまっすぐに戦場を見つめた。




「ツヴァイ、力を貸して!」


「わかった、どうすればいい?」


 しばらくヒュドラを見つめていたフィーアは、不意にツヴァイに助けを求めた。


「紋章陣に触れられる場所まで行きたいの。」


「・・・なるほど、わかった。何とかしてみるよ。」


 それが危険なことはもちろんわかっていたが、フィーアが求める以上、ツヴァイにそれを拒む理由はなかった。

 彼女が望むなら、どんなことだってやってみせる。

 自分はそのためにいるのだから。


「怖かったら目を瞑っていて?」


「平気、ツヴァイと一緒なら大丈夫。」


「いい子だね。」


 フィーアの手を取ると、ツヴァイは飛行魔法(フェアリーフライト)でヒュドラの足元まで一気に駆け抜ける。

 その間にヒュドラの攻撃があったが、ツヴァイはそれを時空の歪を発生させてことごとく防いでみせた。


「おっと、こちらを忘れてもらっては困るな!!」


 ヒュドラの気がツヴァイとフィーアに向けられたことに気付いたアハトは、グレネードで攻撃を仕掛けようとする。


 しかし・・・


「・・・ソフィ!?何やってるんだ!!」


「え・・・!?」


 ヒュドラの攻撃の軌道上に突っ立っていたソフィに気付き、慌ててそちらに飛び込んだ。


「かは・・・っ!」


 とっさに庇ったものの、ソフィもろともヒュドラの首に打ち据えられて床に転がる。


「アハト・・・っ!?」


 庇われたことでダメージ自体は少なかったソフィは、地面を数回転がって受け身を取ってからアハトのもとに駆け寄った。


「ごめん・・・!ごめん、私・・・!」


 ソフィが回復魔法を唱えようとすると、アハトがその手を握った。


「・・・回復魔法はいい。それよりも、ツヴァイとフィーアを守るぞ。」


「で、でも・・・!」


「俺たちがすべきことを見誤るな、ソフィ。」


 よろよろと起き上がったアハトは思ったよりもしっかりとした足取りでその場に立ち、ソフィの手を引いて立ち上がらせる。


「なあに、おまえならできるさ。

 これまで前向きに頑張ってきたお前なら、今回のことだって乗り越えられるはずだ。」


「そうね、乗り越えてみせるわ。でもその代わり・・・」


 一瞬、アハトに聞きたくなる衝動を抑えて頷いた。

 きっと、彼は何かを知っている。

 自分に関して、自分の知らないことを。

 けれど、それを尋ねるべきなのが今でないこともわかる。


「全部終わったら、あんたが知っていることをちゃんと話してもらうから。」


「・・・そうだな、話す機会があったら話そう。」


「駄目よ、絶対に話してもらう。」


 アハトの言葉に何かを感じ取ったソフィは、思わずその手を強く握った。

 それに対し、ほんの少し困ったように笑うとソフィの手を放して、アハトはまたヒュドラと戦うために走り出す。

 言いしれない不安がソフィの中に生じたが、それを振り払ってソフィもそのあとに続いた。


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