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ホムンクルスの箱庭  作者: 日向みずき
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ホムンクルスの箱庭 第3話 第8章『歪んだ愛情』 ①

おはようございます~(*ノωノ)

今日も読んでくださっている皆さん、ありがとうございます♪

「・・・まずいっ!」


 アインが上にあがった瞬間に感じたのは、錬金術が発動された感覚だった。

 実験施設の方から感じられる力が、少しずつ収まって行く。

 それは同時に、実験が終了したことを示していた。


「く・・・っ!とにかくみんな急ごう!!」


 まさか・・・父さんと母さんが本当に子供たちで実験を?

 心のどこかで、2人はそんなことはしないと思い込んでいた。

 だから、少しくらい寄り道しても大丈夫だという心の油断があったのだ。

 子どもたちを助けるには、手遅れになってからは遅いと、十分にわかっていたはずなのに。


 廊下を一気に駆け抜けて実験場にたどり着くと、アインが真っ先にその扉を開く。

 扉の先にある大きな吹き抜けになった部屋の天井には、錬金術で作られた紅いクリスタルがいくつも浮いていた。

 部屋の真ん中にある巨大な紋章陣は光を放っており、それがたった今、実験に使われたことを示している。

 5人が目にしたのは、それとは別の術者用の紋章陣の中央に立っている男女の姿と、周囲に倒れている孤児院の子供たちの姿だった。


「やあ、僕の息子たちよ。よく来たね。

 ここで待っていれば、ちゃんと戻って来てくれると信じていたんだ。」


 にこにこと人の良さそうな笑みを浮かべながら、金髪の男性がそう言った。


「父さん母さん、これはいったい・・・!?」


「僕たちがより大きな力を手に入れるために、実験を行ったんだ。

 きっとアインも喜んでくれると思うよ。」


「何を言ってるんだい父さん母さん?その子たちは・・・っ!」


 話しかけながらアインはふらふらとした足取りで男女の方に近づいて行く。


「なぜ・・・どうしてこんなことをっ!?」

 

 倒れ伏している子供たちの姿を見て、否応にも感情が高ぶってしまう。

 怒りに呼応して、自分の中の賢者の石が反応しているのがわかる。

 だが、ここで頭に血を登らせるわけにはいかない、自分は両親と戦いに来たわけではなく、話し合いをするために来たのだから。


「子供たちを使って力を手に入れるなんて・・・本気なのかい?父さん母さん!」


「そんなの本気に決まっているじゃない。

 私たちはただ、いつものように錬金術の実験をしただけだもの。」


 それに答えたのは、施設長の妻である長い金髪の女性の方だった。

 目の前に子供たちが倒れていることなど目にも入っていないかのように、彼女は穏やかな笑みを浮かべている。

 アインはさらに2人に近づくと、後ろのメンバーに聞こえないよう小さな声で語りかけた。


「父さんと母さんがツヴァイのためにこんなことをやってるのはわかってるんだ・・・!

 でも、もうそんなことはしなくていいんだよ!」


「ツヴァイのため?違うわ、私はもっと大切な方のためにやっているの。」


「ツヴァイのためじゃないのかい・・・?」


「ええ、決してツヴァイなんかのためじゃないわ。」


「そんな、母さん・・・?」


「あなたを強くするのも、私の務めだったの。

 私はあなたのこともちゃんと認めているのよ?

 あの方とは違う形とはいえ、あなたも賢者の石の実験体としては完成しつつある。

 きっとあなたは、あの方のための良い糧となるでしょう・・・!」

 

 うっとりと陶酔しきった表情で言う女性には、もはやアインもツヴァイも見えていないようだ。


「だから私は、あなたのこともとても愛しているの。」


「そんな・・・」


 震える身体を奮い立たせながら、アインは必死に両親と信じている者たちに歩み寄ろうとする。


「だからアイン、あなたも私たちのところにいらっしゃい。

 あなたを私たちが最後まで役立ててあげる。もちろん、実験体としてね?」


 にっこりと微笑みかける女性を、どこかうつろな瞳で見つめながらアインはこう尋ねた。


「本気なのかい?母さん・・・」


「ええ、だってそれが実験体として生まれたあなたにとって一番幸せなことだもの。」


「まさか、ツヴァイも・・・?」


 今までツヴァイを助けるために両親が、自分たちがしてきたこと、それすらもその目的のためにしてきたというのか。


「ええ・・・そもそも、あの子は最初からあの人のモノですもの。私はその手伝いをしてきただけ。」


 よくわからない返答ではあったが、女性が全て本気で言っていることだけはアインにもわかった。


「父さん母さん・・・無理をしすぎておかしくなってるだけだよ!

 もうこんな組織にいるのは辞めて、僕たちと一緒に行こう!」 

 

 しかし、それでもまだアインは2人を信じることを選ぼうとする。

 今まで自分たちに優しくしてくれた両親たちがこんな風になってしまったのは、何かわけがあるに違いない。


「いや、ダメだ。アイン、おまえだけじゃない、他の皆も帰すわけにはいかないな。」


 施設長がにっこりと笑って他のメンバーを見渡すと、後ろの4人は思わず戦闘態勢に入る。

 それに応えるように女性も錬金銃を取り出した。


「く・・・っ!みんな・・・」


 中央の巨大な紋章術の上を通って術者用の紋章陣までたどり着いたアインは、足元に倒れている子供たちを見て立ち尽くした。

 まだ微かに生体反応があるものの、無事とはいい難い状況だ。

  

「フィーア、それとツヴァイも・・・よくきたわね。

 あなたたちからここに来てくれるなんて、なんていい子なんでしょう。

 とても怖い思いをしたでしょう?さあ、こっちにいらっしゃい。

 安心していられる場所に、私が連れていってあげる。」


 アインの悲しみを知ってか知らずか、女性は後ろにいるメンバーに話しかける。


「うそ・・つき・・・っ!」


 女性に話しかけられたフィーアは怯えながらもそう叫んだ。


「嘘なんて言ってないわよフィーア?私は真実しか言わない。

 あの時、あなたが途中で逃げたりしなければ、あんな痛くて苦しい思いはしなくてすんだのよ?

 だから、あの時みたいにもう一度私の言うことを聞いて、あの方のものになってちょうだい。」


「いや・・・いやああっ!?」


「あなたは何を言ってるんだ・・・っ!!フィーアにいったい何をした!?」


「あんたたちフィーアに何したのよ!許さないんだからね!!」


 混乱するフィーアをぎゅっと抱き寄せてツヴァイは女性を睨みつけ、ドライも怒りを抑えきれないように叫ぶ。


「何って・・・ちょっと、あの方の糧になってもらっただけよ?」


「あなたという人は・・・っ!!」

 

 それまで静かに子供たちを見ていたアインが立ちあがり、両親たちの方を振り向いた。

 しかし、それを気にすることなく、女性は今度はソフィにこんな言葉を投げかける。


「あら、不思議ね・・・あなたまだ生きていたの?おかしいわね。」


「何が、ですか・・・?」


「いいえ、私はここに皆がたどり着いた時点で、あなたがとっくに消えているものだと思っていたから。ちょっと不思議に思っただけ。」


「消える・・・?」


「でもきっと、その方があの方のためになるんでしょうね。」


 ソフィにはそれが何のことを指しているのかがわからず、困惑した表情を浮かべるばかりだ。


「母さん、さっきからあの方あの方って誰のことを言っているんだよ?」


 女性の言っていることが分からずアインが思わず問いかけると、彼女は心底残念そうな表情をしてこう答えた。


「アイン、あなたはそんなことすら忘れてしまったの?

 あんなに仲がよかったのに。それはあの方も悲しむわ・・・」


「僕が、何を忘れているっていうんだ母さん。」


「それとアハト・・・あなたは管轄が違うんだから隣の棟に戻りなさいな。

 正直、あなたみたいなイレギュラーがいると困るのよ。」


 目障りだというように女性が言い放つと、アハトはにやりと笑ってみせる。


「まったく、私たちの施設を爆破しただけでは飽き足らず、今度はこちらで何をしようというのかしら?」

 

 それに対してアハトはどこか残念そうにこう答えた。


「研究者として一つだけ言わせてもらおう。求める物は同じじゃないのか?」


「なるほど、じゃあ私とあなたは協力し合えるというわけね?」


「そうだな、そんなこともあったかも知れん。

 だが今は無理だ。求める先は同じであろうとも過程はそれぞれだ。

 俺たちはすでに道を違えてしまった。」


「なら、あなたはどうするつもりかしら?」


「俺は俺なりの結果を出すだけだ。」


「それは残念、結果は見れそうにないわよ?

 何しろこれからあの方がここに来るんですもの。

 私はあなたたちの足止めをしなくちゃならないわ。」


「まったく・・・おまえたち夫婦は変わっちまったんだな。」


 ため息をつきながらそう口にしたアハトは、どこか遠くを見つめているようだった。


「変わったのではないわ、私は至上のお方に出会っただけ。

 あのお方が全ての完成系だもの。」


「そうか、だが俺はそれを認めない。」


 きっぱりと言ってアハトはマントの中に手を入れる。


「母さん何を言ってるんだ・・・!」


 そのやり取りを見ていたアインは、余計な戦いを避けるべく母親の持つ銃を奪おうとしたが。


「そんな危ないもの持ってちゃだめだ・・・!?」


 その手が届く前に部屋全体が大きく揺れ、紋章陣が眩い光を放った。 


次回から本格的に戦闘スタートです(`・ω・´)

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