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ホムンクルスの箱庭  作者: 日向みずき
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ホムンクルスの箱庭 第3話 第7章『地下4層に潜むもの』 ①

おはようございます~(*´ω`)今日も読んでくださった方、ありがとうございます♪

 A棟に潜り込んだ5人は、それからもいくつかの施設を抜けてようやく右側に実験施設、左側に宝物庫と書かれた岐路に辿り着いた。


「さて、どっちに進む?」


「もちろんこっちに!!」


 アハトの質問に、アインが迷わず宝物庫の方に向かって歩き出す。

 

「ここから先は何があるかわからない。

 宝物庫に行けば何か役に立つアイテムが見つかるかもしれないしね!」


「そうね、アルスマグナの本拠地ですもの、何があってもおかしくない。

 準備を怠らないという点では私も賛成よ。」


「そうだね、兄さんとソフィの考えは間違っていないと思うよ。」


 そんな皆のやり取りを聞いていたのか、そうちゃんからグレイの声が聞こえてくる。


「お主ら、正当化してるがやってることは、立派にアルスマグナの一員じゃのう・・・」


「ああ、もっと褒めてくれていいぞ。」


「そうよ、もっと私たちを称えなさい!」


 アハトと相変わらずぬいぐるみの中にいるドライが自信満々に答えると、やれやれというようなため息が聞こえた。

 それからいくらも行かないうちに、目の前に頑丈そうな扉が現れる。


「さすがに宝物庫っていうだけあって、簡単には入れそうにないわね。」


 ソフィが鍵を開けて扉を開けるとその先に宝物庫とプレートのついた入り口があったのだが、通路自体にトラップが仕掛けられており、通り抜けるにはひと手間かかりそうだ。


「アハト、これがなんだか調べられそう?」


「わかった、俺が調べよう。」


 ソフィが尋ねると、アハトが隣に立ってトラップを調べ始める。


「ふむ、奥の扉は俺が開けられそうだ。

 だが、通路に入るとレーザー式の罠が発動して、通ろうとする相手に攻撃するようになっているみたいだな。」


「なるほど、ならここは僕が行こうか?」


 真っ先に身体能力に長けているアインが前に出ようとしたのだが、それを手で制してアハトが前に出た。


「ここは俺に任せておけ。なあに、レーザーごときに俺のグレネードが負けるはずがない。」


「うーん。レーザーはグレネードじゃ防げない気もするんだけど・・・」


 ツヴァイの冷静な突っ込みをスルーしてアハトは走り出す。

 最初のレーザーが斜めがけで二本ずつ交差してこちらに向かってきたのを、アハトはその間を華麗に擦り抜けて交わした。


「うおおおお!」


 間を置かずに次のレーザーが横一線に並んだ状態で突っ込んできたのを、アハトは今度は身体を限界までのけぞらせて何とか避ける。


「イ○ばうあー!!もしくはマ○りっくすううう!!」


 そして最後に・・・


「ちょっと・・・っ!あれはいくらなんでもまずいでしょう!」


 ソフィが思わず叫んだもの無理はない。

 隙間のない細かい格子状のレーザーが、アハトに向かって突っ込んできた。


「フィーア!俺の前に氷を張ってくれ!」


「うん!」


 フィーアはとっさに呪文を唱えると、言われたとおりに魔法で氷を張る。


「俺のグレネードをなめるなよっ!!」


 アハトが氷に向かってグレネードを投げつけると、爆発で気化して辺りに水蒸気が立ち上った。


「アハト・・・っ!?」


 中の様子が見えないまま全員が心配そうにそちらに視線を送ると。


「ふう、なんとかなったな。」


 水蒸気が晴れ、突き当たりにあるドアの横の壁のスイッチに触れているアハトの姿が現れた。

 レーザーが水蒸気によって分散した隙に、一気に駆け抜けて罠の解除装置を押したのだ。

 アハトが確保してくれた通路を通って、全員が無事に宝物庫に侵入する。


「これとかお金になりそうじゃない?」


「ああ、こっちのも悪くなさそうだ。」


 ごそごそとあちこちを漁りながら、ソフィとアハトは宝物の品定めをしていた。


「私も綺麗なもの見つけたよ、ツヴァイ。」


「よしよし、いい子だね。フィーア。」


「えへへ。」


 フィーアも見つけてきたものをツヴァイに渡して褒めてもらいながら嬉しそうにしている。

 そんな中、アインも役立ちそうなものを漁っていたのだが。


「ん?こ、これは・・・!」


 用途はよくわからないのだが、手のひらサイズの宝玉を一つ見つけた。


「兄さん、それは・・・?」


「なんだかわからないけど、何か使えそうな気がするんだ。

 僕はこれをもらって行くよ。」


 よくは分からないのだが力のようなものを感じて、アインはそれを持っていくことにした。




「さて、それじゃあ準備も整ったことだし?実験室に行こうか皆!」


「おー!」


 全員がホクホク顔で宝物庫を出て、実験室に向かっている時だった。


「あ・・・」


「フィーア?どうしたの?」


 左側に地階への階段を見つけたフィーアが、怯えたように後ずさった。

 廊下の壁にはプレートがあり、地下4層と書かれている。


 つられてそちらに視線を送ったソフィだったが・・・。


「え?何・・・?」


 全身にぞくっと寒気のようなものが走り、思わず数歩、後ろに下がってしまう。

 広い廊下の片側はガラス張りになっているのだが、そこに肩がぶつかり思わず振り向くと。


「これって・・・まさか・・・!?」


 ガラス張りの向こう側にあったのは頑丈な檻だった。

 その中に、見覚えのあるぬいぐるみが落ちている。

 それは、皆が孤児院の子供たちにプレゼントしたウサギのぬいぐるみだった。

 それだけではない、他の檻を見ると子供たちの持ち物がいくつも見えた。


「こ、こういうのに入れられたの、こういうのに・・・っ!」


 そうちゃんからその様子が見えたのか、ドライの怯えた声が聞こえてくる。

 自分とフィーアがさらわれた時のことを、思い出してしまったのだろう。


「どうやら・・・孤児院の子たちが連れて行かれたっていうのは本当みたいね。」


 ぎゅっとこぶしを握ってソフィが厳しい表情を浮かべていると、アハトがその横を通って先ほどの地階への階段を調べ始めた。


「アハト、あんたなにやって・・・?」


 アハトが調べているのは、入り口にあるシャッターの残骸のようなものだった。

 高熱にさらされたのか、一部が溶けているのが見て分かる。


「なんなの・・・?それ。」


「ああ、これは爆破で破壊されたシャッターの残骸だな。」


「それは、見ればわかるけど・・・」


 答えながらアハトはシャッターにこびりついた赤黒いものをがりがりとはがしていた。


「ちょ、ちょっと、それ・・・」


「ん?必要なものだからな。」


 アハトは懐から取り出した瓶に、はがしたものを入れて大切そうにしまう。

 ソフィにはそれが古い血がこびりついた物に見えたのだが、なんとなく聞くことができない。

 なにより、地階への階段を見るだけでなぜか鼓動が速くなり、血の気が引いて行く。


「おい、大丈夫か?」


「え、ええ・・・平気よ。」


 気丈にふるまってみたものの、ふらついてしまったソフィにアハトが手を貸した。


「何かしら・・・すごく、嫌なことを思い出しそうなのよ。」


 頭がくらくらして、ソフィはアハトに寄り掛かる。

 

「そうか・・・」


「ここで、昔、何かあった・・・?」


 言葉を口にすると同時に、映像がフラッシュバックする。


 暗い階段を上り続けているような視界の映像。

 自分の隣には誰かがいて、その人を支えながら先にある出口の光を必死に目指した。

 そして、記憶の中で支えている人物が自分にこう言ったのだ。


『ソフィ・・・おまえは、前向きだな。』


「・・・っ!?」


「ソフィ、しっかりしろ!」


 あと少しで思い出せそうなところで、アハトの声が聞こえてソフィは我に返る。


「あ・・・ね、ねえ、私・・・ここに、来たことがある?」


 不安そうに尋ねるソフィを、アハトは無言で支え続けた。


子どもたちが危険なのに迷わず宝物庫にいくアインたちは、やっぱり犯罪組織の人間だと思う今日この頃(; ・`д・´)

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