縋られる
「エリザベス様酷い!クリスの邪魔をしてさらにシリルまで騙すだなんて!!」
シリル様が無言で私とアリス様の間に入る。朝何故か迎えに来たシリル様と共に登校した途端アリス様に絡まれこの状態になっている。
「シリル戻ってきて。貴方エリザベス様に騙されているのよ?」
「馴れ馴れしく名前で呼ぶな。元々許可していないのだから今後は2度と呼ばないでくれ。私は今エリザベス嬢に愛を貰えるよう縋っている所なのだから、邪魔しないでくれ!」
周りで見ていた人達からざわつく声が聞こえる。シリル様やめて…恥ずかしすぎるから。居た堪れなくなった私はシリル様の手を取り行きましょうと手を引く。嬉しそうに微笑むシリル様を見て、周りから黄色い歓声が鳴り響く。シリル様と別れ教室に向かうとサリー様が駆け寄ってくる。
「シリル様と進展なさったのですか?微笑むあの方など今まで誰も見たことありませんもの。やはり婚約をやめて良かったです。」
「御心は頂きました…でもお断りしようかと。」
「無理ですわ。あの恋心全開の方をエリザベス様が回避できるとは思いません。きっと気付けばシリル様のものです。」
私もそんな気はしている。王宮の帰りからずっと色気大爆発で迫ってくる。ずっとドキドキさせられているのだ。約束も昨日早々に取付けられ、今日朝からお父様と話をしていた。明後日の休日一緒に出かける事に決まっていて、その早すぎる動きに私は驚愕している。サリー様はシリル様の恋を応援してるので進展したらまた教えて下さいねと微笑まれた。恐ろしい令嬢だわ。
「エリザベス嬢はいつも可愛らしいけど、今日はさらにお姫様のように可愛らしいね。私の心を掴んで離さないよ。」
休日迎えに来てくれたシリル様は朝から全開だ。お父様に見送られ馬車に乗り込むと、何故か隣に座られる。近いです。
「エリザベス嬢今日は共に出かけてくれてありがとう。私を気に入って貰える様に頑張るね。エリィて呼んでいい?」
「え…ダメだと…」
「今日だけでもお願い。ね?」
はいと頷いてしまう。勝てる気がしない。強すぎる顔面にお願いなどされて、流されない人がいるなら見てみたい。
「エリィ愛してます。早く私のモノになってくださいね。」
手を取り指先に口づけをされ、目の前で微笑まれる。愛が全開過ぎて初心者には扱えない。
「あの…私を好きなのはわかったのですが、もう少し抑えていただけたら…。」
「恋焦がれ縋らないとエリィは手に入らないと聞いてます。私を選んで貰うためには全力でいきます。貴方に恋焦がれる哀れな男を許してください。」
…勘弁してください。確かゲームのシリル様はヤンデレ化してアリス様を最終閉じ込めていた。私このままいけば閉じ込められるの?無理無理無理。闇落ちする前にどうにかしないと。
「シリル様!私貴方と色々出かけたいわ。家より外よね!」
「…可愛すぎる。いっそ誰にも見せないほうがいいのでは…?」
「シリル様のために着飾ってお出かけしたいな。ダメ?」
「色々行こう!ダメなものか!」
危ないわー。クリス様以上に危険な人なのかも。アリス様奪い取ってくれないかしら。大変。サリー様と同じ事思ってしまっているわ。今なら気持ちがわかるわ。
「私と婚約しよう。連れ歩くには婚約者で無いといけない。」
あ、ルート間違えたみたい。しどろもどろ返事を濁すが引いてくれない。アリス様助けて。
「あ、着いたようですよ。行きましょう?今日を楽しみましょう。」
あぁと顔が赤いシリル様の手を取り馬車から降りると、綺麗なお花畑が広がっている。有名な公園で今見頃だからと連れてきてくれた。
「エリザベス様ー!」
「「は?」」
出た!アリス様!キラキラと輝く笑顔で走ってくる。さすがヒロイン眩しいくらいに可愛い。シリル様は以前私を見ていたように、今はアリス様を虫けらの様に見ている。
「偶然ですね?私も皆と来ているの。ご一緒しましょう?」
「アリス嬢結構です。本日私達はデートなのでご遠慮下さい。」
「は?シリル何言ってるの?!まだ騙されてるの??」
「名前を呼ぶなと言っているだろう。」
シリル様が静かにブチ切れている…アリス様は、でも…っとまだくらいつこうとしている。さすがヒロインはハートが強い。
「シリル。アリス様より私を構う方が大事ではなくて?時間がもったいないわよ?」
「エリィ!私の名前を!」
行こうと私の手を取りまだ文句を言っているアリス様を無視して歩き出す。ニコニコと微笑みながら私の手を大事そうに撫でている。
「あの…シリル様?」
「シリルでしょ?様はいらないよ。愛称でもいいよ?」
「…リル?」
ギューッと抱きしめられる。苦しい。抗えるはずが無かったのよ。私ゲームをしている妹を見ていた時からシリル推しだった。誰にも心を開かないシリルから一途に思われるアリスに憧れていたのだから。
「エリィ愛しているよ。」
ベタベタベタベタ1日お出かけした後、我が家に送り届けたシリル様はお父様にすぐ話をしていた。お父様もシリル殿なら!とすぐ話し合いが持たれ、私達は婚約者になった。記憶を思い出した事により断罪は回避できたと思う。まだまだアリス様は煩いだろうけど、きっとシリル様が守ってくれるだろう。もし国外追放されてもついてきそうだし、きっと私は1人にならないと思える。よし!これからはアリ恋の世界を楽しもう!
婚約を報告して笑い崩れるサリー様を感謝しつつ、恨めしく思う事になるのはこの翌日の事となる。




