第二次ハワイ攻略:鋼鉄の怒涛
反撃の始まりの鏑矢
坊ノ岬沖での勝利、そして日本に飛来するB-29の殲滅,、ソヴィエトの樺太強襲を粉砕し、日本軍は守勢から一転、かつてない規模の攻勢計画を立案した。その名も「第二次ハワイ攻略作戦」
1945年11月午前5時。 ハワイ・オアフ島、真珠湾。 アメリカ太平洋艦隊の最大拠点となったこの地に、再び絶望の影が落ちようとしていた。
アメリカ軍の最新鋭レーダーが、西方の水平線から接近する「巨大な反応」を捉えたのは早朝のことだった。しかし、その報告を受けたチェスター・ニミッツ元帥と太平洋艦隊司令部は耳を疑った。
司令部の通信員はさらにハワイ周辺の報告を受ける。
「戦艦、空母を含む大艦隊が接近中……? バカな、少し前までは日本の艦隊は坊ノ岬で全滅するはずだったのに。それに、この移動速度は何だ!? 467ノットを超えているだと!?」
真珠湾上空に再び空を切り裂く轟音とともに現れたのは、もはやプロペラすら持たない、噴流を噴き出す謎の翼――時空を超えた技術で改修された9機の「橘花改」だった。
ジェット戦闘機の奇襲
「1941年の雪辱だ。全機、爆装解除、噴進弾を発射用意!」
編隊長の声とともに、出現した時にはすでに改装されていた装甲空母「翔鶴、瑞鶴、大鳳」から各艦3機1編隊ずつ発艦したジェット機の3つ編隊が、アメリカ軍港、空軍基地に向けて多数の噴進弾を放つ。 指令施設、発電所、通信施設、燃料タンク、が、一瞬で爆砕されていく。アメリカ軍の対空砲火は、音速で駆け抜ける機影を捉えることすらできなかった。
「橘花改」が発艦後、ハワイ沖100キロ海域、航空母艦「赤城」「加賀」その飛行甲板には、大型の艦載機が並んでいた。
「エンジン始動、回転数上昇。……全機、発進用意!」
艦橋に響く号令とともに、プロペラが夜の闇を切り裂く。発艦していくのは、最新鋭の艦上攻撃機「流星改」
(戦術に柔軟に対応できる、武装時に魚雷、爆装、誘導噴進弾に切り替えられる)
従来の艦上攻撃機の限界を超えた兵器を抱えた翼が、夜明け前の空へと吸い込まれていった。
「蒼龍」「飛竜」からも「零戦六十四型改」が次々と発艦していく。
飛行隊指令は、甲板を静かに見つめいた。
対するアメリカ海軍ハワイ駐留部隊もまた、鉄壁の陣容を誇っていた。オアフ島周辺には、基地航空隊の戦闘機や攻撃機、新型のエセックス級空母3隻にレーダー連動射撃機能を備えた無数の対空火器が牙を剥いている。
「敵機接近! 距離80、方位270! 対空戦闘開始!基地航空隊、空母戦闘機隊発進急げ!」
アメリカ軍がオアフ島周辺を守るのは、新鋭空母エセックスⅡ、ボノム・リシャール、レイテの3隻。基地航空隊の滑走路から最新鋭「F6F-5」が絶え間なく発進していく。
エセックス級からから「F4U-4」が緊急発艦にしていく。
「敵機、さらに増大! 奴らを近づけるな!」
アメリカ軍のの対空指揮官が叫ぶ。アメリカ軍が誇るVT信管(近接信管)は、弾丸が敵機の近くを通過するだけで自動的に炸裂し、鉄の破片で空を覆い尽くす「魔法の弾丸」でした。日本軍の誇る熟練パイロットたちでさえ、この濃密な火網を突破するのは至難の業でした。
しかし、アメリカ軍のレーダーは激しいノイズに包まれてました。
「何だ!? レーダーが使い物にならん! 全画面が雪嵐だ!」 「無線も通じない! 」
アメリカ軍が困惑する中、日本のジェット戦闘機の奇襲攻撃がハワイ一帯の大規模な通信機能や大型レーダーを麻痺させていきました。
しかし、『大和』の艦橋で 伊藤司令官は、奇襲攻撃を免れたアメリカの駐留部隊の個々の対空レーダーを備えた対空陣地の熾烈な対空砲火に苦戦する自軍の攻撃隊を見つめ、決断を下します。
「艦長。主砲、射撃開始。目標、敵対空砲陣地、敵空母群。」
『大和』は急設された安定性や視認性が高まったレーダーと新型電子計算機によって算出された極めて精密な仰角を算出して46センチ三連装砲に送り込む。発射の瞬間、艦を包み込むのは砲口から溢れ出した火薬の震える高圧の爆風と強烈な光だった。
電子計算機で導かれた位置、炸裂時間を指定され放たれた砲弾はアメリカ軍のVT信管の射程外――はるか20キロ以上の彼方から、アメリカ海軍空母『エセックスⅡ』の直上に到達しました。
「直撃……いや、空中で炸裂!?」
空中で爆散した46センチ三式弾の破片が、エセックスⅡの飛行甲板を、そして発艦準備中の航空機を一瞬にしてなぎ払いました。そして、アメリカ軍の対空陣地も破壊していく。
そして、アメリカ軍の串の歯が欠けた防空網に日本軍攻撃隊が迫る。
アメリカ空母『エセックスⅡ』の艦上で、悲鳴のような報告が飛ぶ。彼らにとっての悪夢は、日本軍の攻撃機がかつての「鈍重な攻撃機」ではないことだった。
「流星改」はアメリア軍の対空砲火が弾幕を形成する前に無数の赤外線誘導噴進弾を発射する。その超高速は防御網をすり抜ける。多数のフレッチャー級駆逐艦とエセックス級の側腹を容赦なく引き裂いた。
アメリカ軍戦闘機が「流星改」を迎撃しようとするが「零戦六十四型改」はそれを阻む。
そして、燃え上がる真珠湾の入り口に、あの巨体が姿を現した。
戦艦『大和』。 改修を受け、レーダー連動の精密射撃能力を得た46センチ主砲が、オアフ島の要塞砲台を次々と沈黙させていく。
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「真珠湾に敵艦影、巨大! ……本艦、敵旗艦、戦艦アイオワと識別!」
防空指揮所の見張り員が、双眼鏡を食い込ませるようにして叫びました。
「アイオワか……」
有賀幸作艦長は、帽子の顎紐を強く締め直しました。46センチ砲と、米海軍の精鋭戦艦。鋭い眼光を砲術長へと向けました。
「砲術長、聞いたな! 照準、戦艦アイオワ。叩き潰せ!」
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「了解! 主砲、対艦戦闘用意!」
黒木砲術長が、マイクに向かって腹の底から声を絞り出しました。
「目標、敵戦艦アイオワ。方位角、左四十度。距離1万!」
その指令は、艦内電話を通じて厚い装甲に守られた各主砲塔へと一瞬で伝播される。地下の弾薬庫では、1.5トンを超える九一式徹甲弾が揚弾機で引き上げられ、装薬の芳香が漂う砲室へと送り込まれました。
大和の心臓部、十五メートル二重測距儀が正確な距離を弾き出し、射撃盤が未来位置を算出します。
「右砲戦! 誤差修正……打ち方、始めッ!」
砲術長の右手が振り下ろされた瞬間、大和の巨体がわずかに震えました。
旋回: 三基の巨大な三連装砲塔が、重厚な機械音を立てながら「アイオワ」の方角へとその長大な砲身を向けます。
装填: カン、カンと重金属が噛み合う音が響き、巨大な尾栓が閉鎖。
発射: 刹那、爆風が海面を叩きつけました。
「放てーっ!」
三基九門の46センチ砲が、時間差を置いて猛炎を吹き上げました。
オレンジ色の巨大な火輪が海上に広がり、凄まじい衝撃波が大和の艦橋を揺さぶります。一発で一軒家が飛んでいくほどの質量の鉄塊が、音速の倍近い速度でへと飛翔していく。
有賀艦長は、その衝撃に耐えながら、真珠湾を見据えます。
号令とともに放たれた主砲弾は、水平線の彼方からアイオワの火薬庫を正確に貫いた。巨大な火柱が上がり、アメリカ軍の象徴が海へと沈んでいく。すでに発艦能力を失った空母群もその後を追った。
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ハワイ諸島の空は、もはや青さを失っていた。
真珠湾から立ち昇る黒煙が真昼の太陽を覆い隠し、かつての楽園は赤黒い炎に焼かれる「火の海」へと変貌していた。第二次ハワイ攻略作戦。日本連合艦隊が成し遂げた空前の大勝利に、艦上の将兵たちは沸き立っていた。水平線の彼方まで埋め尽くす日本の軍艦旗が、勝利の余韻に揺れている。
だが、その狂熱の死角――真珠湾から西。荒れ狂う太平洋の「空白地帯」に、沈黙を守る影があった。
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「……予定の海域に到達。全艦、風上に回れ」
空母『タイコンデロガ』の艦橋で、ウィリアム・ハルゼー提督は低く唸るような声で命じた。彼の視線の先には、精鋭の整備員が艦載機の発艦準備している飛行甲板が広がっている。その内部でも、格納庫の奥底では、復讐の火を灯した整備員たちが、狂ったような手際で魚雷と爆弾を懸架していた。
「太平洋艦隊本部が落ちました、提督」
参謀の言葉に、ハルゼーは野獣のような笑みを浮かべた。
「連中には、勝利の美酒を存分に味わわせておけ。その杯に、今から特大の鉛をぶち込んでやる」
ハルゼー艦隊はハワイに最大船速で向かっている。
ハルゼーが指揮する別働機動部隊は、オワフ島より西に1300km離れたジョンストン環礁の基地に駐留していた、真珠湾を日本軍が蹂躙し、弾薬を使い果たし、勝利の油断に浸るその瞬間こそが、彼が待ち望んでいた「乾坤一擲」の勝機だった。
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隣を征く空母『ヨークタウンII』の甲板からも、次々と艦上戦闘機F8Fベアキャットが発艦して空へと吸い込まれていく。先代『ヨークタウン』をミッドウェーで失った米海軍にとって、この艦名は単なる記号ではない。それは、不屈の闘志そのものだった。
「全機へ。こちらは『ハルゼー』だ。獲物は十分に太っている。一頭も逃すな。ハワイを焼いた火を、今度は連中の喉元に叩き込んでやれ!」
無線から流れるハルゼーの苛烈な命令が、パイロットたちの心に火をつけた。
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一方、ハワイ沖の日本連合艦隊。
「敵影なし」の報告を受け、哨戒機すら収容しようとしていた戦艦『大和』の艦橋で、電探観測員が叫んだ。
空を埋め尽くしたのは、復讐に燃えるアメリカ海軍の咆哮だった。タイコンデロガとヨークタウンII。死地から蘇った二隻の大型空母から放たれた鋼鉄の雨が、油断という名の隙を突き、連合艦隊の心臓部へと突き刺さる。
第二次ハワイ攻略。その勝利の余韻は、今、復讐の爆炎によってかき消されようとしていた。
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午前11時30分。 日本連合艦隊。その旗艦『大和』の電探室に、凍り付くような悲鳴が響いた。
「電探に感あり! 方位180、距離120キロ! 敵艦載機の大群、急速接近中!」
緊急発艦
「各艦、直掩機全機発進! 間に合わせろ!」
空母の甲板では、整備兵たちが叫びながら固定索を解く。
「イナーシャ、回せッ!」
飛行甲板に怒号が飛ぶ。整備兵たちが一斉にクランクに取り付いた。静寂を切り裂くのは、慣性始動機が奏でる悲鳴のような回転音だ。
「キィィィィィィン……」
敵機接近まであと5分。計器を見つめるパイロットの指が、始動レバーにかけられる。
「回った! 繋げ!」
慣性エネルギーが解放され、鈍重なプロペラが一度、二度と震えた後、爆音と共に猛烈な風を後方へ叩きつけた。
発動機が轟音を上げて目覚めた。 この作戦で最後に連合艦隊を守護する戦闘機「烈風改」である。
金星7型エンジンを装備し、その姿は猛禽類のような威圧感を放っていた。
「烈風一号機、発進!」
烈風改は、強烈な加速で瞬時に高度を稼いでいく。
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高度8,000メートル。アメリカ軍の攻撃隊が急降下に入ろうとしたその時、上空の青い静寂を切り裂いて、銀翼の死神が舞い降りた。
「敵機確認……これより排除する」
その数、およそ200機。最新鋭の「F8Fベアキャット」「TBF アヴェンジャー」である。
烈風改のコックピットで、熟練のパイロットが冷静に照準を合わせる。 アメリカ軍の「F8Fベアキャット」は、その機動性で烈風を翻弄しようとした。しかし、烈風改の翼はまるで意思を持っているかのように鋭く翻った。
ドガガガッ!
20ミリ機銃の重厚な音が響く。一撃。たった一撃で、アメリカ軍の戦闘機「F8Fベアキャット」の翼が千切れ飛び、火だるまとなって太平洋へと落ちていく。
アメリカ軍のパイロットたちは戦慄した。自分たちが誇る最新鋭機が、追いつけないほどの速度と、追いきれないほどの旋回性能を両立させた怪物に蹂躙されている。
「化け物か……日本の戦闘機は」
上空で烈風改とアメリカ戦闘機隊が火花を散らす中、海面付近の濃い霧を突いて、数多の黒い影が躍り出た。 アメリカ海軍自慢の重攻撃機、「TBF アヴェンジャー」だ。
アメリカ軍攻撃隊戦隊長「……敵艦隊視認。戦艦1 空母7 駆逐艦多数 目標、タイコンデロガ攻撃隊1番隊、2番隊、ヨークタウンⅡ2番隊、は中央の大型空母群!我が戦隊はあの大型戦艦だ、続け!」
アヴェンジャーのコックピットから見えるのは、日本連合艦隊、その周囲を固める秋月型駆逐艦の群れだ。アメリカ軍パイロットたちは、上空の味方が全滅しつつあることを悟っていた。もはや援護はない。彼らは単独で、日本の対空陣地に突っ込むしかなかった。
鋼鉄のカーテン
「面舵一杯! 弾幕を薄くするな!」
日本艦隊の各艦から、一斉に25ミリ機銃と10センチ高角砲が火を噴く。海面は砲弾の着水によって沸き立ち、まるで巨大な水の柱が林立しているようだった。
アヴェンジャーの編隊は、その水柱を左右に避けながら、時速400キロを超えて突き進む。機体には数え切れないほどの弾痕が刻まれ、一機、また一機と翼を折られて海面へ激突し、爆発する。
しかし、アメリカ軍の「雷撃のプロ」たちはひるまない。彼らは魚雷を放つための最短距離――「キル・ゾーン」へと、命を投げ出す覚悟で突入した。
烈風改、急降下
その時、雲を割り、垂直に近い角度で降りてくる影があった。上空での戦闘を終えた烈風改の小隊だ。
「逃がさん。魚雷を放つ前に沈めろ!」
烈風改のパイロットは、機体を限界まで加速させ、アヴェンジャーの巨大な背中に向かって20ミリ機銃を叩き込んだ。 ドシュッ、と重鈍な音が響き、アヴェンジャーの機体がバラバラに砕け散る。だが、その直前、一機のアヴェンジャーが腹部から鈍色の巨体を解き放った。
Mk.13 魚雷。 それは白い航跡を引きながら、旗艦「大和」の右舷へと迫る。
執念の交錯
「魚雷接近! 面舵、回避!」
巨艦「大和」が激しく身をよじる。魚雷はわずか数メートルの差で艦尾をかすめ、遥か後方で水柱を上げた。
アメリカ艦上攻撃機隊、全32機。そのうち魚雷を放つことができたのはわずか5機。そして、その全てが烈風改と対空砲火によって仕留められた。海面には、アメリカ軍パイロットたちと、機体の残骸が虚しく浮いている。
烈風改が再び大和の真上を旋回し、勝利の合図として翼を左右に振った。
わずか30分の空戦で、アメリカ軍の反撃隊は組織的な戦闘能力を喪失。命からがら逃げ帰る機体は数えるほどしかなかった。
アメリカ艦上攻撃機隊の決死の突入を退けた日本連合艦隊。今度は、逆探知と偵察によって位置を特定した「アメリカ機動部隊」そのものを海に沈める、冷徹な反撃の刻がやってきました。
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水平線の彼方へ —反撃の連合艦隊—
「敵位置確定! 真珠湾南西150キロ! エセックス級2隻、巡洋艦1隻、駆逐艦4隻、輪形陣を組んで離脱中!」
旗艦「大和」の作戦室。海図に置かれた敵の駒が、逃走を示す進路を指している。 伊藤司令長官は静かに頷き、マイクを握った。
「全艦隊へ通達。一兵たりともカリフォルニアへ帰すな。反撃を開始する」
日本艦隊は不屈の精神でその猛攻を凌ぎきった。
「全艦、被害状況報告! 発艦準備急げ!」
「赤城」の艦橋で、謎の機動部隊の司令官が叫ぶ。彼の顔には疲労の色が濃かったが、その眼差しにはまだ戦意が燃え盛っていた。
飛行甲板では、激しい戦闘の余韻が残る中、熟練の整備員たちが迅速な作業に取り掛かっていた。激しい迎撃を終えた多くの艦載機が着艦した飛行甲板に、まるで嵐が去った後の静寂が訪れたかのようだ。しかし、その静寂は次の嵐の前の静けさに過ぎなかった。
ハワイの攻撃と敵機動部隊の迎撃で稼働可能な艦載機の数は大幅に低下していた。
ジェット推進機はエンジンの再整備に時間が必要で反撃には使えず、各空母の中では流星改の再出撃可能な機体の抽出作業と整備、武装を同時にしなければならなかった。
烈風改の機体には、弾痕が生々しく刻まれている。しかし、整備員たちは慣れた手つきで破損個所を応急修理し、弾薬倉から運び出された20mm機関砲弾をベルトリンクに繋ぎ、次々と翼内機関砲に装填していく。燃料ホースが接続され、高オクタン価の航空燃料が補充されると、エンジンが再び咆哮を上げる準備が整った。
一方、流星改の周りでは、さらに慌ただしい作業が繰り広げられていた。エレベーターが唸りを上げて下甲板から上がってくる。そこには、真新しい赤外線誘導弾、徹甲爆弾、そして九一式航空魚雷が所狭しと並べられていた。
「急げ! 次の攻撃まで時間がない!」
整備科士官の怒号が響く。流星改の頑丈な胴体下面には、最新鋭の赤外線誘導弾が搭載されていく。これは、アメリカ艦隊の煙突から出る熱を追尾し、命中精度を格段に向上させる切り札だった。別の機体の翼下には、敵空母の装甲甲板を貫くための徹甲爆弾、その向こうの機体には艦艇の喫水線を狙う魚雷が吊るされる。
作業は分単位、秒単位で進められる。整備員たちの手際の良い動きは、長年の経験と訓練によって培われたものだった。彼らは皆、自分たちの任務が、この戦いの行方を左右することを深く理解していた。
「赤城」の飛行甲板では、整備が完了した烈風改が次々と駐機位置に並べられ、翼を休めていた。その隣には、満載された武装を誇らしげに吊り下げた流星改が、今か今かと発艦の命令を待っている。 「加賀」「瑞鶴」「翔鶴」「大鳳」の各空母でも、全く同じ光景が展開されていた。どの艦の飛行甲板も、次の攻撃へと向かう熱気に包まれていた。
やがて、艦橋から発艦準備完了の信号が送られる。各空母の発艦指揮官が緑色の旗を大きく振る。
「第一波、発艦用意!」
エンジンが轟音を響かせ、プロペラが空気を切り裂く。排気管からは熱い炎が噴き出し、滑走路上に陽炎が揺らめく。
「発艦始め!」
指揮官の号令と共に、まず烈風改が次々と飛行甲板を駆け抜けていく。主翼がしなやかに撓み、機体はわずかな滑走距離で軽々と宙に舞い上がる。続いて、重々しい流星改が、巨大な爆弾や魚雷を抱えながら、力強く離陸していく。
「赤城」「加賀」「瑞鶴」「翔鶴」「大鳳」の飛行甲板から、発艦可能な機体を寄せ集めた55機の戦闘機隊と攻撃機隊が、次々と大空へと放たれた。編隊を組み、漆黒の夜空を切り裂いていく彼らの姿は、まさに嵐の前の静けさから解き放たれた猛き虎の群れだった。
水平線の彼方、アメリカ艦隊が待つ空域へと、日本の航空部隊は進撃を開始した。彼らの眼差しには、激戦を乗り越えた者だけが持つ、鋼のような決意が宿っていた。この攻撃が、太平洋戦争の趨勢を決めることになるだろう。
「見えたぞ」
先導する烈風改の風防越しに、水平線上に浮かぶアメリカ艦隊の影が見えた。アメリカ軍は必死の上空防御を展開するが、先陣を切る烈風改が、圧倒的な速度で上空の護衛戦闘機群を制圧していく。
「全機、攻撃開始!」
赤外線誘導噴進弾は護衛艦艇群を屠り、空母甲板や防空兵器群を沈黙させる。
続けて800キロ爆弾を装備した流星改が躍り出る、アメリカ空母『タイコンデロガ』『ヨークタウンII』が回避運動を試みるが、流星改のパイロットは機体と一体化したかのような精密な操縦で、逃げ道を塞ぐ。
「墜ちろ!」
放たれた800キロ爆弾が、アメリカ空母の飛行甲板を真っ二つに叩き割った。内部の格納庫で誘爆が起こり、巨大な火柱が天を突く。最新型のエセックス級が巨大な黒煙と炎を吐き出しながらのたうち回る。
トドメを刺したのは、海面スレスレを高速航行する流星改の魚雷だった。 アメリカ空母の舷側を深く、残酷に貫く。
「命中……命中! 傾斜増大。沈没確実!」
海面に大きな渦を作りながら、アメリカ太平洋艦隊の誇りであった巨艦がゆっくりと横転していく。
****
空母『タイコンデロガ』の巨体が、必死の回避運動も虚しく、日本軍の流星改が放った雷跡に捕らえられた。一本、二本……。艦腹を抉る凄まじい衝撃が、ハルゼーの足元をひっくり返した。
「左舷より浸水! 機関停止! 傾斜が止まりません!」
悲鳴のような報告が飛び交う艦橋で、ウィリアム・ハルゼーは手摺りにしがみつき、燃え盛る自艦の甲板を見下ろしていた。そこには、数分前まで「復讐の翼」を送り出していた若者たちが、黒煙の中でのたうち回る地獄絵図が広がっていた。
狂乱の中の静寂
艦内を揺らす爆発音は、もはや遠い雷鳴のようにしか聞こえなかった。
ハルゼーの意識は、皮肉にもこの極限状態で透徹な静寂へと沈んでいった。
「提督! 退艦を! 早く!」
参謀の叫びを、彼は黙って制した。
傾斜はすでに30度を超えている。海面が、すぐそこまで迫っていた。
彼はポケットから使い古したパイプを取り出そうとしたが、指が震えていることに気づき、苦笑した。
(俺は、何を急いでいたんだ……?)
人生の走馬灯
脳裏を駆け抜けたのは、太平洋の荒波と共に歩んだ半生だった。
アナポリス(海軍兵学校)時代の硬い制服の感触。かつて「グレート・ホワイト・フリート」の一員として世界を巡った、あの誇らしげな白塗りの戦艦群。そして、真珠湾の底に沈んだ戦友たちの無念。
「ジャップを殺せ、もっと殺せ(Kill Japs, kill Japs, kill more Japs)」
自ら放ったあの苛烈なスローガンが、今、呪詛のように耳元で鳴り響く。
彼は日本軍を憎んでいた。その卑劣さを、その執念を。
だが、今こうして、地獄のような反撃を食らわせてきた日本軍のパイロットたちに、彼は奇妙な同質感を覚えていた。
彼らもまた、守るべきもののために、愛する者を残し、死に物狂いで突っ込んできたのだ。
戦争の意義という問い、この戦争に、正義などあったのか?
ハルゼーは、燃えるハワイ諸島の遠景を薄く目を開けて見つめた。
太平洋戦争で日米双方の数えきれない若者が、魚の餌となって消えていった。
「勝った方が正義か。……いや、違うな。残ったのが、ただの焼け野原なら、それは敗北と変わらん」
文明と文明が激突し、互いの誇りを削り合い、最後に残るのは、この冷たい海水と、焦げ付いた鉄の臭いだけ。
海軍軍人として生きた己の誇りは、今、この巨大な鉄の墓標と共に沈もうとしている。それが、略奪と破壊を繰り返した「戦争」という名の化け物に対する、唯一の精算であるかのように彼は感じていた。
****
「提督! もう限界です!」
足元を濁流が洗った。
ハルゼーは、自分を抱きかかえようとする部下の手を優しく振り払った。
「先に行け。俺は、この艦と共に行くのが似合いだ」
次の瞬間、巨大な爆発が『タイコンデロガ』の心臓部を粉砕した。
ハルゼーの視界から空が消え、冷たい、しかしどこか懐かしい太平洋の海が全身を包み込む。
渦巻く泡の中で、彼は最後に思った。
もし、次の人生があるのなら、今度はこの海を、血の色ではなく、あの日の青いまま、誰かと眺めたいものだ――。
光が遠のき、老兵の意識は、深淵へと溶けていった。
****
勝利の残光
海面に点々と広がるアメリカ軍機の残骸と、立ち昇る黒煙。 再び静寂を取り戻した日本艦隊の上空を、悠然と旋回しながら降りてくる烈風改の翼には、秋の陽光が眩しく反射していた。
空母「赤城」の甲板に着艦したパイロットが風防を開けると、そこには勝利の確信と、ひとつの時代の終わりを予感させる冷徹な眼差しがあった。
ハワイは完全に封鎖された。今や太平洋に、日本連合艦隊の進撃を阻むものは存在しない。




