沖縄戦 1-5 歩兵第22連隊第1大隊 小城大尉の奇策
歩兵第22連隊第1大隊 小城大尉の奇策
再び、沖縄本島の最前線
歩兵第22連隊第1大隊、小城大尉は、泥まみれの部下たちを前に、静かに、しかし断固として告げた。
「いいか、これは『小銃の延長』ではない。我が大隊の『砲兵隊』だ」
通常、日本軍の歩兵小隊には、八九式重擲弾筒が3〜4筒ずつ分散配備される。歩兵のすぐ側で火力を補うのが、陸軍の「教範」だ。しかし、小城はあえてその教範を破りすてた。各小隊から擲弾筒を回収し、大隊直轄として一箇所に集める——その数、実に36筒。それは、分散すれば「点」でしかない火力を、一つの大きな「面」へと変える、大胆かつ合理的な再編だった。
アメリカ軍第6海兵師団の兵士たちが、ぬかるむ斜面を這い上がってきたその時。
「撃てッ!」
小城の鋭い号令とともに、36の筒口が同時に火を噴いた。ヒュルヒュルという不気味な風切り音。直後、海兵隊の頭上で、そして足元で、36発の榴弾がほぼ同時に炸裂した。
「砲撃だ! 敵の砲兵陣地を叩け!」
海兵隊の指揮官が叫ぶが、それは見当違いの命令だった。アメリカ軍が想定する「重迫撃砲」や「野砲」の陣地など、そこには存在しない。わずか数人の兵士が抱えて移動できる「小さな筒」が、岩影や地下壕の入り口に、マーモットのように注意深く、攻撃の瞬間を待って、潜んでいるだけだ。
36筒による集中射撃は、アメリカ軍の「前進」を阻むだけでなく、その「退路」をも正確に遮断した。八九式擲弾筒は射程こそ短いものの、熟練した兵士が扱えば、ピンポイントで弾丸を送り込むことが可能だ。小城大尉は、地形を完全に把握し、米兵が隠れそうな窪地、あるいは前進せざるを得ない隘路に、正確に火力を集中させた。
「奴らの砲兵を沈黙させろ!」
泥の中に顔を埋めた米兵たちは、戦慄した。頭上の艦砲射撃は、日本軍を沈黙させるどころか、岩盤を削って彼らの隠れ家をより強固にしているかのようでした。そして、自分たちが一歩動くたびに、計算されたかのように「小火力の嵐」が正確に自分たちの頭上に降ってくる。
首里の司令部でこの報告を受けた八原博通大佐は、薄く笑みを浮かべました。
「小城大尉か。面白いことをやる。武器の多寡ではない、使い方の効率だ」
それは、八原が提唱する「持久戦」の理想的な形だった。限られた資源を、最も効果的なタイミングで、最も効果的な場所に集中した。




