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待たせたな!  作者: 僧籍
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アメリカ本土進撃――鋼鉄の凱旋


鋼鉄の残光 ―チェサピーク湾の決戦―1946


1946年初頭。ハワイを拠点に再編された「新連合艦隊」は、パナマ運河を電撃的に接収。大西洋へ進出するという、かつての史実では空想に過ぎなかった暴挙を成し遂げました。


アメリカ軍、海軍は残存する全戦力――アイオワ級戦艦やエセックス級空母をかき集め、陸軍は本土にある戦える航空機をニューヨーク近郊の飛行場に配備して自由の女神が立つニューヨーク沖で最後の決戦を挑みます。


1946年 晩夏 午前3時30分


アメリカ合衆国の懐深く、チェサピーク湾沖200キロ。 坊ノ岬沖海戦、日本本土防衛戦、第二次ハワイ戦を勝利した日本連合艦隊は、今や満身創痍の姿を波間に晒していた。度重なる激戦を経て、各空母の艦載機航空隊は、激しい攻撃のためにエンジンの消耗や、機体自体の消耗、敵からの銃撃の破損をその都度、血を吐くような整備を繰り返してきた。


使用可能な機材は当初の60パーセント。兵装も底を突きかけ、本来なら「弾薬切れ」で撤退すべき状況だった。だが、ここから退けば、もはや日本に明日は残されていない。


空母「赤城」飛行甲板

「……これが最後の一本だ。心して吊るせ!」


整備長の声が、海風にかき消されそうになりながら響く。エレベーターから上がってきたのは、もはや予備も存在しない九一式航空魚雷と赤外線誘導弾だった。


熟練整備員たちの手は、燃料と煤で黒く汚れている。それでも、彼らの動きに迷いはなかった。限られた航空燃料を、一滴も零さぬよう慎重に、かつ電光石火の速さで流星改の腹へと流し込む。


「弾薬が足りなきゃ、魂を詰めて飛ばすだけだ!」


若き整備兵が自分を鼓舞するように叫ぶ。隣の烈風改にも航空燃料と20ミリ機銃弾が搭載されていく。


周囲を固める護衛艦隊もまた、限界に来ていた。しかし、 戦艦「陸奥」の主砲塔はこれから戦う敵を見据えて。巡洋艦、駆逐艦は空または海中からの攻撃に備え、そのレーダー、ソナーで備えていた。


午前4時45分


払暁の太陽の光を浴びながら伊藤司令長官の暗号かされた無線が、各艦、すべての人々に伝わる。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() ()()()!」




最終攻撃隊、発艦

「赤城」を先頭に、五隻の空母が風上に舳先を向けた。


謎の機動部隊司令官

「発艦始め!」


緑の誘導旗が激しく振られる。 爆音を轟かせ、烈風改が甲板を蹴った。ボルト一本、ネジ一つに至るまで整備員たちの執念が込められた機体は、重々しく、しかし力強く大空へと吸い込まれていく。


続いて、流星改が、下面に装備した最後の武装で車輪を軋ませながら滑走を開始する。エンジンの咆哮は、まるで傷ついた巨龍の雄叫びのようだった。


烈風改:制空権を死守するため、数倍の敵機に挑む「盾」


流星改:必殺の武装の一撃を、敵空母の心臓に叩き込む「矛」


合計160機。 これが、日本連合艦隊が放つ最後の、そして最大の反撃であった。


海面を低く這うように飛ぶ攻撃隊の背後には、朝日に染まる母艦群の影があった。燃料も、弾薬も、そして帰るべき甲板も、これが最後かもしれない。


それでも、プロペラが切り裂く空気の先には、勝利への一筋の光が確かに見えていた


午前5時45分


高度6000。


烈風改のパイロットは、愛機のコックピットを覆う風防越しに、眼下の雲海を睨みつけていた。 背中を押しつける座席の振動が、いつもより力強い。機首に鎮座するの金星エンジンの完成形の「金星七型」エンジンだ。


「……編隊長より各機へ。敵の複数の編隊が見えた。11時方向、高度5500。編隊の数は二十以上」


喉元の伝声器に低く呟く。無線機からは部下たちの若々しい返答が明瞭に返ってきた。


視界の先に、米軍のF4FワイルドキャットとF6FヘルキャットとF8Aベアキャットの編隊が、無骨なシルエットを晒している。 「サッチ・ウィーブ」――敵が編隊で交差してこちらの背後を狙う戦術は、既に研究済みだ。


「落とせ。だが、深追いはするな。高度の優位を捨てるなよ」


指揮下の烈風改はスロットルを押し込んだ。 機体が、まるで意志を持った生き物のように突き進む。かつての零戦ならば、この速度域では舵が重くなり、機体が悲鳴を上げたはずだ。この機体は時速600キロを超えてもなお、指先一つの操作に忠実に反応した。


急降下。重力加速度(G)が全身をシートに沈め、視界がわずかに狭まる。 標的のF4Fが、照準環の中で急速に巨大化していく。


米軍パイロットが異変に気づき、慌てて機体を翻した。しかし、遅い。


「貰った」


操縦桿の引きトリガーを短く、鋭く引いた。 翼内に仕込まれた四門の20ミリ機銃が、猛獣の咆哮を上げた。 曳光弾が吸い込まれるようにF4Fの付け根を叩く。防弾装甲を自慢する米軍機だったが、大口径の焼夷炸裂弾の前では無力だった。


ドォォ、と重低音を響かせて敵機の翼がもげ、一瞬で炎の塊と化す。 爆発の余韻に浸ることなく、操縦桿を静かに引き戻した。機体は軽やかに機首を上げ、再び蒼天の高みへと駆け上がっていく。


振り返ると、後方の空には、黒い煙を引いて落ちていく「グラマン」の残骸がいくつも点在していた。 かつては「撃たれ強く、恐ろしい相手」だった米軍機が、今やただの獲物に成り下がっている。


「こちら『烈風改一号』。敵、さらに複数の編隊を捕捉。……あれが、噂のマスタングか」


指揮官の視線の先、銀色に輝くアメリカの至宝、P-51マスタングの編隊が侵入してきた。


「全機、突撃。帝国海軍の意地を見せてやれ」


編隊長が操縦桿を倒すと、烈風改はその巨体からは想像もつかない鋭さでロールした。 零戦よりも一回り大きな翼。それが生み出す圧倒的な揚力と、高高度用に調整された過給機が、機体を軽々と加速させる。


マスタングの編隊が、こちらに気づいて散開した。 「ジャップの戦闘機だ、高度で圧倒しろ!」とでも叫んでいるのだろう。敵は一斉に機首を上げ、上昇力で逃げようとする。これまでの日本機なら、ここでエンジンが喘ぎ、失速していた。


だが、烈風改は違った。


「逃がさん……!」


汗を拭うことも忘れ、再び青の深淵を求めて水平線を睨んだ。 雲間から差し込む陽光が、機体の日の丸を鮮血のように赤く染め上げていた。


烈風改はスロットルを全開にした。まるで重力を無視するように上昇するマスタングの背後へ食らいついた。 敵パイロットの驚愕が、風防越しに見えるようだ。マスタングが最も得意とする高度で、それ以上の速度と旋回を見せつける日本機。


敵機が必死にひねり込み、急旋回で逃れようとする。製空盒式自動空戦フラップは巨大な翼が気流を完璧に捉え、マスタングよりもさらに内側の円を描いて回り込む。


照準環の中に、銀色の機体が完全に収まった。


「堕ちろッ!」


翼内に装備された二十ミリ機銃が火を噴いた。たった数発の弾丸がマスタングの胴体を真っ二つに引き裂き、空中で巨大な火球が膨れ上がった。


一撃。文字通りの粉砕だった。


「烈風改一号より各機。敵戦闘機編隊群を排除した、敵攻撃機編隊群を掃討せよ」


 鋼の豪雨:対艦噴進弾の蹂躙


空では、日本海軍の誇る万能攻撃機「流星改」の編隊が、雲を切り裂いて突進していた。しかし、彼らは米艦隊が誇る「ボフォース対空火器」や「VT信管」の射程内には決して入らない。


機体の翼下には、漆黒の怪鳥——「対艦噴進弾」が懸吊されている。


「距離30。噴進弾、放て!」


点火されたロケットモーターが咆哮を上げ、赤外線誘導噴進弾は米艦隊へ殺到する。エセックス級空母、無数の噴進弾が護衛のフレッチャー級駆逐艦群を次々と火柱に変えていく。

防空巡洋艦のレーダーは飽和し、対空砲火は空を虚しく叩くのみ。


流星改の噴進弾が輪形陣に穴を開け、徹甲爆弾が護衛艦隊を真っ二つにして、航空魚雷が空母に串刺しにする。


上空ではすでにアメリカ軍の戦闘機を排除した日本軍の戦闘機の編隊が見守っていた。

チェサピーク湾の空から、敵の影が消え去ろうとしていた。


午前8時30分


 最後の艦隊戦


アメリカ海軍の残されたアメリカ総軍艦隊、その中核を成すアイオワ級戦艦「ニュージャージー」の艦橋は、戦慄に包まれていた。水平線の彼方、視界には影すら捉えられない距離から、突如として巨弾が降り注いだのである。


戦艦「陸奥」。 史実では爆沈の悲劇に見舞われたその巨艦は、今や技術の結晶となっていた。艦橋に高く掲げられた最新鋭の「電探連動型誘導弾」管制システムが、地球の曲率すら計算に含め、米艦隊の動態を完璧に予測する。さらに上空を飛ぶ5号電探改を搭載した流星改からの情報を共有する。


最新のガスタービンエンジンに換装された戦艦『陸奥』は、護衛の空母群とともにチェサピーク湾へと姿を現します。ワシントンD.C.の喉元に、41センチ砲の砲口が突きつけられた瞬間でした。


「主砲、電探連動……誘導始動。撃てッ!」


41センチ主砲から放たれた砲弾は精密誘導に従って落下。アイオワの重装甲を紙細工のように貫き、弾薬庫を一撃で粉砕した。100%の命中精度——それはもはや「多数の砲撃での攻撃」ではなく「狙撃」であった。


ニューヨークの市民が目撃したのは、かつて無敵を誇ったアメリカ大西洋艦隊が、日本海軍によって一方的に殲滅される光景であった。


自由の女神の背後で、アイオワ級の巨体がゆっくりと、しかし確実にハドソン川の古い河床の泥に沈むように大西洋へと消えていった。



 自由の女神と日章旗


1946年秋。ニューヨーク、マンハッタン島。 摩天楼を背景に、「陸奥」「長門」の巨体が進みます。自由の女神像の傍らを通過する際、米国民が見たのは、かつての敵国の象徴ではなく、「いかなる困難においても我らは存在するという意志」そのものでした。



ワシントンD.C.では、停戦交渉が行われました。ホワイトハウスには日章旗が掲げられた。


ワシントンD.C.の近郊のアーリントン墓地では、まるで燃え尽きる直前の残り火のような美しさに包まれていた。

丘の上に立つアーリントン・ハウスから見下ろすと、広大な敷地を埋め尽くす白い墓石の列が、波打つ芝生の海をどこまでも続いている。夏の間、あんなに鮮やかだった深い緑は影を潜め、いまやオークやカエデの葉が、琥珀色や深いワインレッドへとその姿を変えていた。

ポトマック川を渡ってくる風は、わずかに冷気をはらみ始めている。乾いた木の葉がアスファルトの上をカサカサと音を立てて転がり、その音さえも、この場所が抱える巨大な静寂に吸い込まれていった。


歴史の終着点:Pax Nipponica(日本の平和)



アメリカ東海岸の占領により、太平洋戦争は事実上の終結を迎えました。


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