ジャワ島における第16軍の再編
各島々から部隊が次々とブルネイを経由してフィリピンへ移動を開始する中、ジャワ島は熱気に包まれていた。
第16軍は武装の再編成ためフィリピンに向かう準備の真っ最中だった。
軍司令官、長野祐一郎中将は、バタビアの司令部で連日、緻密な編成作業に没頭していた。オーストラリアとの停戦が成った今、ジャワ島に過剰な戦力を張り付かせる必要はない。しかし、治安維持と新秩序への移行をスムーズに行うための「適正規模」の見極めは、極めて高度な政治的判断を要した。
「全軍を抜くのではない。だが、一兵たりとも無駄にはせん」
長野中将の鋭い眼差しが、軍の編成表をなめる。
フィリピンへ送るべき打撃力と、ジャワの安定を担う残留部隊。その選定こそが、大来佐武郎たちが描いた「海洋国家群」の安定を物理的に担保する鍵となる。
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「第16軍の編成、最終段階にあります。完了し次第、移動を開始する」
通信兵の報告を受け、古村中将は深く頷いた。
ジャワ島からの最後の一船が港を離れるとき、南方の軍事バランスは完全に書き換えられることになる。
かつて、この海を「死の海」に変えたのは補給の断絶だった。
しかし今、十分な物資と、敵対を止めた背後の安全を確保した日本軍は、史上最大の「逆転の転進」を開始した。
大型輸送船の音が、南シナ海に低く響き渡る。
マレーから、スマトラから、そしてジャワから。
各地から集まった船団はフィリピンという巨大なターミナルへと収束していく。
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長野祐一郎中将がその最後の仕上げにかかっていた。
長野中将は第16軍の中から、特に対ソ戦に適した精鋭を選別し、組織化した。
「ジャワの安定を最低限の戦力で維持し、残る全力をマニラへ送る。我々の次の戦場は、南ではなく、北にある」
長野中将の命を受けた第16軍の先遣隊が、大型輸送船のタラップを駆け上がる。彼らがマニラで武装を強化し終えたとき、それは日本がかつて保有したことのない、最強の「大陸派遣軍」として完成する。
第一次世界大戦以来のロシア帝国の後継国家ソヴィエト連邦への大規模攻撃が始まる。
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北へ向かう準備ができ、ブルネイ帝国から日本軍が旅立つ時
「……見ておいてください。これが、我々が去った後に残る『種』です」
フォート・マッキンリーへの移動を控えた日本軍の将校は、整然と行進するブルネイ義勇軍の列を見つめながら、傍らのブルネイ帝国の官吏に語りかけました。
かつての英国による植民地支配でもなく、単なる軍事占領でもない。
伝統的な王権を尊重しつつ、近代的な実務能力と自衛の意志を現地人に植え付ける。このカリマンタンで試行された統治モデルこそが、加瀬俊一が提唱する「南洋連盟」の揺るぎない土台となるのだ。
日本軍が北へ去る準備を進める中、ブルネイの行政機構は、もはや他者に依存しない「自立した国家」としての歩みを刻み始めていた。
古村中将は思う。
「……この戦争の重大な弱点の一つ、それは、西洋諸国とスターリンを始めとする共産主義者の強欲、傲慢、狡猾さに十分に備えができなかったことだ。そして、日本国内外の糞カスどもによって、その備えが妨害された。この『必敗』を、我々の手で、いや、神話の導きのようにつながった人々の願いによって『勝利』へ書き換える。そのための、本当に最後の一手だ」
古村中将の眼前に広がる海は、もはや絶望ではない、勝利へと続く海路となる。




