南十字星作戦 1945年8月9日
ダーウィンでの極秘会談を経て、オーストラリアとの秘密停戦条約が調印された。南方の日本軍の軍備の再編がされる。
1945年8月9日、ブルネイ
作戦会議室の中で地図を囲む将官達。
第十四方面軍司令官山下奉文、第七方面軍司令官・板垣征四郎。その傍らには、日本軍総司令部から派遣された連絡部員の参謀たちと、統合兵站本部と総合国家政治戦略企画機関の連絡員がいる。
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生まれ変わった「兵站」
「山下大将、本国の兵器の生産能力が大幅に良くなっている。また、兵士や操縦士の錬成も順調のようだ」
板垣が差し出した報告書には、統合兵站本部が管理する驚異的な生産数と、再編中の戦力推移が記されていた。
帰還鋼(新代用鋼材)を纏った装甲車両、航空機。新型点火プラグと添加剤によって稼働率を引き上げた航空エンジンの在庫。そして、消費を上回るペースで集積される弾薬と燃料の総量。
会議室では次々と報告が上がる。
「本国の生産ラインは完全に『計画的兵站計画』に組み込まれました。決号作戦のために温存されていた200万の将兵は、兵站、輸送部隊も含めて、今や新しく生産された車両に乗る『機械化師団』へと変貌しつつあります。物資の総量、人員の質、すべてがソヴィエト軍という化け物を正面から押し潰すに足る水準に達しました。一式中戦車の再設計機、および九七式ベースの快速装甲車は、来月にはさらに2個機械化師団分が生産されます。」
山下はその数字を凝視した。かつてマレーを駆けた際に彼を苦しめた「補給の細り」は、ここには存在しない。あるのは、ソヴィエト軍と共産主義者ども、卑劣なごろつきを正面から押し潰すための、計算し尽くされた物量だった。
彼らは本国の日本軍の再建されている最新の情報、戦争にかけられる物資の総量、軍隊の人員の総量を正確に把握していた。
「南十字星作戦」
さらに、机上にはもう一つの文書が広げられた。
新・太平洋艦隊によるニューギニア侵攻作戦――「南十字星作戦」の全容である。
「オーストラリアとの和平は成った。だが、ニューギニアに残るアメリカ軍拠点は、我々の『北進』にとって背後の憂いとなる」
山下大将の指が、ニューギニアの要衝を指す。
彼らの目的は、南方の広大な版図を「整理」し、北の脅威へ立ち向かうための戦争計画を行うことだ。
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「南十字星作戦」艦隊電撃作戦
作戦の核心は、熱帯特有の荒々しい自然現象を戦略的に取り込むことにあった。
ニューギニア近海、ビアク島。敵のレーダー網が張り巡らされたこの要衝を無力化するため、新・太平洋艦隊の戦艦群は、あえて視界不良の「スコール帯」へとその巨体を投じる。
「敵のレーダーは、この猛烈な雨の中では『盲目』となる。索敵の死角を突くには、これ以上の遮蔽物はありません」
気象参謀が、最新の気象予測データを提示しました。巨大な雨雲の壁を盾にし、戦艦群は電撃的な速度でビアク島へと接近。敵がその存在に気づいたときには、すでに戦艦の主砲が射程内に捉えているという、計算に基づいた奇襲だ。
スコールを突き抜けた戦艦群が、ビアク島の敵陣地を艦砲射撃で粉砕する。その火音を合図に、カリマンタン島から発進した「因幡乃白兎」艦隊の上陸用舟艇が、一斉に海岸線へと殺到させる。
沖縄方面第32軍第9師団と海軍横須賀鎮守府第一特別陸戦隊が上陸する。
彼らが装備しているのは、アメリカ軍からの接収兵器群だ。
M36ジャクソンとM18ヘルキャット:揚陸直後からその快速を活かし、ジャングルの合間を縫って敵の防衛線を寸断する。
最新の兵員輸送トラック:防弾キャビンを備えた強靭な車両が、歩兵部隊を次々と最前線へ送り込み、組織的な反撃の隙を与えない。
板垣征四郎大将はニューギニアを指差しました。
「ビアクを落とせば、奴らは必ず死に物狂いで食い下がってくる。……空だ。次に来るのは、アメリカ軍との大空戦になるな」
その言葉に、傍らに控える航空参謀が鋭い眼光で応じました。そこには、南方の空を支配しつつある「精鋭」たちの名が連なっていました。
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蒼穹の決戦:南方精鋭航空団と新・太平洋艦隊の空母艦載機航空部隊の戦い
航空参謀が前に出て、作戦内容を報告する。
「第四航空軍を中心としたカリマンタン島の混成部隊。零戦、隼に加え、接収したP-51、P-47……これらの『航空派遣軍』が、ビアク島の占領した拠点を守りまります」
航空参謀の声には確固たる自信が溢れていた。
麾下の航空機はエンジンに新型点火プラグを搭載し、化学添加剤入のガソリンをエンジンに注ぎ込み、本来の性能を引き上げた。
さらに、この戦いの初期段階において、海上打撃艦隊隊だけでなく、敵基地の制圧に期待されるのは、新・太平洋艦隊の空母「葛城」と「天城」だ。
その甲板には、日本全国の基地からかき集められ、最高水準の再整備を施された零戦、九九艦爆、天山が、隙間なく並べられている。
ホーランディア基地攻撃において、敵の戦闘機群を壊滅させて、制空権をとった後は攻撃機隊が地上目標をしらみつぶしに爆撃を開始する。その後、ホーランディアの航空基地を占領後に、工兵隊による滑走路の整備後、ビアク島からの陸上戦闘機 P-51、P-47を前進させ、アメリカ軍航空機による反撃に備える。
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次に陸上部隊の指揮官達が報告する。
ホーランディア電撃戦 接収兵器の蹂躙
空戦で敵の航空能力を叩き伏せた直後、作戦は第二段階、ホーランディア進攻へと一気に加速する。
高速輸送船や戦車輸送船で日本軍南方戦線派遣軍の接収兵器部隊が、海岸線へ殺到する。
M36ジャクソンとM18ヘルキャットの快速が、防弾キャビンを備えた兵員輸送トラックとともに、ホーランディアの心臓部を蹂躙する。
標的は、敵の司令部、そして広大な兵站倉庫群だ。
敵が丹念に積み上げた物資を、そのまま日本の戦力に変換する。この「略奪的兵站」の成功こそが、本国の工業力にさらなる余力を与え、対ソヴィエト戦を確実なものにする。
最後に作戦参謀が作戦をまとめる
ポートモレスビーへの鉄槌
ホーランディアを無力化し、後方の安全を盤石にした日本軍は、その矛先を南方の最終拠点、ポートモレスビーへと向ける。
新・太平洋艦隊の戦艦群の巨砲が、ポートモレスビーの基地施設を文字通り粉砕し蹂躙する。
航空機による波状攻撃: 占領したビアクやホーランディアを拠点に、空母機と陸上機が交互に波状攻撃を仕掛け、敵の残存拠点や港湾設備を休む間もなく叩き潰す。
「南十字星」の完成と、北への跳躍
「ポートモレスビーを撃滅し、ソロモン諸島を各個撃破すれば、もはや南洋に我々を脅かすものはいない、南方の愁いは解消する」
但し、ホーランディアのアメリカ軍司令部を占領した状態で降伏がなされた場合は、臨機応変に各地に残るアメリカ残党軍を監視する戦力を残し、速やかに新・太平洋艦隊ならびに東南アジア方面軍はソヴィエト軍の侵略に対応すべく、日本に帰還すること。
山下大将は、地図上のニューギニア全域を力強く塗りつぶしました。
この「南十字星作戦」は、単なる領土の奪還ではない。アメリカ軍の兵站拠点を奪い取り、背後の憂いを完全に消し去ることで、日本軍が持てる全エネルギーを、一点の迷いもなく「北方ソヴィエト軍粉砕」へと注ぎ込むための、壮大な「盤面の整理」でした。南方資源地帯を強固な「後方兵站基地」へと変えるための、不可欠な作戦だ。
ブルネイの夜、スコールが激しさを増す中、二人の将軍は確信していた。
カリマンタンの「南方戦線派遣軍」と、新・太平洋艦隊の戦艦、空母「葛城」「天城」の勇士たちが南を平らげ、北方防衛開放戦線の派遣軍と本国で再編された機械化部隊が北を突く。
南北の戦線が押し上げられる瞬間、知性と技術、そして合理的戦略が噛み合った時、歴史はかつてない激動の瞬間へと、凄まじい音を立てて転換していく。
宿将たちの決断
「板垣大将。これからの戦いは、領土の固執ではない」
山下大将は低く響く声で切り出しました。広げられた南方全域の地図には、膨大な数の部隊符号が散らばっています。もはや、全ての拠点を死守する必要はない。
二人は、冷徹なメスを入れるように部隊を選定していきました。
残置部隊の選定: オーストラリアとの秘密和平に基づき、各島々の治安維持と新秩序への移行に必要な「最小限かつ有能な部隊」を特定。
ニューギニア攻略軍: 依然として敵対を続けるアメリカ軍拠点を無力化し、南方の安全を完全に担保するために必要な「侵攻特化部隊」を抽出。
そして、それ以外の「全戦力」――すなわち南方軍の本隊を成す精鋭たちは、一つの巨大な使命を与えられました。
「よし、これで決まりだ。残る全軍はフィリピンへ送る」
板垣大将が力強く頷くと、即座に伝令が飛びました。
山下大将と板垣大将。二人の宿将が会談を終えた時、南方の役割は「戦場」から「供給源」へと変わる。
翌日、港には、準備を終えた古村中将率いる因幡乃白兎艦隊の輸送艦隊が待っていた。マレー、スマトラ、ジャワ……各島々から引き抜かれた数個師団規模の将兵たちが、整然と輸送船へと搭載されていく。
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北方派遣への序曲、「因幡乃白兎」海を駆ける護送輸送船団
ブルネイ沖。海面を埋め尽くす巨影があった。因幡乃白兎艦隊。その指揮を執る古村啓蔵中将は、旗艦の艦橋から、眼下に広がる輸送船団を統括していた。
日本からの物資を運んだ護送輸送船団は帰りは南洋から軍隊を運ぶ。マレー半島、スマトラ島、スラウェシ島、そしてカリマンタン島。点在していた精鋭たちが、輸送船団に飲み込まれるように収容されていく。彼らの目的地は一つ――フィリピンである。
南洋の海を埋め尽くす船団の潮流は、北へと舵を切りった。しかし、その目的地であるフィリピンは、もはやアメリカ軍との泥沼の決戦を強いる死地ではない。
そこは、次なる巨大な脅威――北から迫る「赤い津波」を叩き潰すための、巨大な「再武装・再編のための巨大な基地」へと変貌を遂げていたのです。
「さらばだ、南の海よ」
輸送船の甲板から、一人の将校が遠ざかる緑の島影を見つめていました。
彼らには休養が与えられる。しかし、それは単なる休息ではない。酷暑の南洋で戦い抜いた肉体を、満州、樺太、北方諸島のソヴィエト軍という「火事場泥棒」を根絶やしにするためのに新たな武装を装備するためだ。
「総合国家政治戦略企画機関」の計算通り、無駄な消耗を廃し、必要な戦力を必要な場所へ。
因幡乃白兎艦隊が運ぶのは、単なる兵員ではない。それは、間もなくソヴィエト軍が直面することになる、日本軍史上、最も洗練され、最も重武装した「北方派遣軍」という名の東洋からの大反撃だ。
マニラ湾の入り口が見え始める、彼らの再武装が完了したとき、ソヴィエト軍の戦いにおける逆転が始まる。
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そして、もう一つの船団
それは、これまでの日本軍の窮状を覆す光景だった。
沖縄やフィリピンの激戦でアメリカ軍から鹵獲した大型輸送船、巨大なランプドアを持つ戦車輸送船、そして日本の輸送船団 輸送艦(海軍:第1号型・第101号型)。第1TL型大型タンカー「みりい丸」それら護衛輸送艦隊は、本国と沖縄、フィリピンを経由して持ち込んだ、膨大な弾薬、燃料、糧食が満載されていた。
これらの物資は、これから行われる、ニューギニア島のアメリカ軍基地の占領、攻撃に使われる予定だ。
「……これだけの物量、かつての我々には夢物語だったな」
古村中将はおもわず、この光景に言葉がもれる。
南十字星作戦への参加部隊も用意されている戦車上陸艦、輸送艦に搭載されていく。
彼らが手にするのは、使い古された三八式歩兵銃や、装甲の薄い九七式中戦車ではではなかった。アメリカ軍から接収したM36ジャクソンやM18ヘルキャットなどの装甲戦闘車両、そして多数のトラックと精鋭部隊がニューギニア島攻略に向かって進み始めた。
いつも、読んでいただきありがとうございます。起承転結の《承》はもう少しで終わります。
ep.21 ep22 オーボエ作戦(Operation "OBOE")のエピソードの変な場所を直しました。




