沈黙の鎖――西海岸封鎖作戦
漆黒の壁
1945年冬。ハワイを占領した日本海軍は、次なる一手として「K作戦(封鎖作戦)」を発動しました。 主役は「シュノーケル吸気」と「超高性能蓄電池」を装備し、無限に近い潜航時間を手に入れた伊号潜水艦部隊です。
シアトル、サンフランシスコ、ロサンゼルス、そしてサンディエゴ。 アメリカ西海岸の主要港の沖合には、時空を超えた司令官が残した「高感度パッシブ・ソナー」を備えた伊号潜水艦が、音もなく配置されました。
燃える補給線
「敵輸送船、方位2-0。距離3000。……放て」
サンフランシスコ沖。霧の中から現れた数隻の米軍輸送船に対し、伊号潜水艦から放たれたのは音響誘導魚雷でした。 何の前触れもなく、輸送船の腹部が巨大な火柱を上げます。米軍は護衛艦を繰り出しますが、潜水艦側は敵のソナーを無力化する「吸音タイル」を艦体に纏っており、反撃の爆雷はむなしく深海へ消えていくばかりでした。
ロサンゼルス・ブラックアウト
艦内の赤色灯が、隊員たちの顔を不気味に照らし出した。自動姿勢制御システムを搭載した特種潜水艦『伊四〇〇』の狭い格納庫内。そこには水上攻撃機『晴嵐改』と、それを取り囲む甲板員たちの姿があった。
艦内装置で温められたエンジンオイルをエンジンに満たし、臍のような給油装置を外し、折り畳まれた翼を展開する。
「イナーシャ、回せッ!」
整備班長の鋭い声が響く。数人の甲板員が、慣性始動機のクランクへ取り付いた。
「キィィィィィィ……」
耳を劈くような高周波音が、鋼鉄の壁に反響する。フライホイールが限界まで回転を高め、金属の悲鳴がピークに達した瞬間、パイロットが始動レバーを叩き込んだ。
ガツン、と激しい衝撃。死んでいたエンジンが、重い黒煙を吐き出して目覚めた。
「伊四〇〇」の自動姿勢制御システムを搭載し安定した甲板から晴嵐は加速してレールの上のカタパルトから放たれた。
ロサンゼルス郊外、カホン・パス。大陸横断鉄道の動脈が走るその峻険な峠に、死神の羽音が近づいていた。
「……目標、サンタフェ鉄道の跨線橋。および隣接する高圧変電所」
『晴嵐改』の風防越しに、パイロットの目に街の灯が見えた。いや、それは灯というより、巨大な獲物の血管だった。潜水司令部の暗号を受け、米西海岸の物流を止めるための作戦が始まる。
「晴嵐改」は、金星七型のエンジンを搭載し本来の高速性能を取り戻していた。夜陰に紛れるための防眩塗装が、ロス郊外の闇に溶け込む。
「一番、投弾用意……てッ!」
高度300メートル。機体から切り離された250キロ爆弾が、重力に従って吸い込まれていく。数秒後、夜の静寂を暴力的なまでの閃光が引き裂いた。
ドォォォォォン!
変電所の大型トランスが連鎖的に爆発し、空に向かって巨大な青白い電気の柱が立ち昇った。絶縁油に火がつき、夜空がオレンジ色に染まる。同時に、眼下を走っていた大陸横断列車のヘッドライトが、まるで命の灯火が消えるようにふっとかき消された。
「直撃。変電所沈黙。鉄道網、寸断」
後席の暗視装置を付けた航法観測を担当する搭乗員が報告する。しかし、攻撃は終わらない。旋回した『晴嵐改』は、暗闇に沈んだロスの市街地へと機首を向けた。
「次は、港湾部の送電網だ。今日、この街から電気が消える」
闇の中から連続する爆発音の余韻が、今度はロスの住民たちの悲鳴となって夜風に混ざり合った。
翌朝の新聞は、これを「ロスの暗黒の火曜日」と呼ぶことになるだろう。
晴嵐改の操縦士 阿利 出海は母艦のデリックで回収されながらそんなことを考えた。
そして休息を取り、温めたうなぎの缶詰とあったかいホクホクの缶詰の赤飯を美味しそうに食べ、緑豆春雨とワカメの酢味噌和えも美味しく頂く、もちろん羊羹のデザートも平らげた。
英気を養いながら次の出撃を待つ、
経済の窒息
この徹底的な封鎖により、アメリカ西岸の動きは停止しました。軍事行動、船舶の物資の移動、 資源の枯渇:ゴム、錫などの戦略物資が外洋からの供給が途絶えた。
西海岸の孤立:日本軍の複数の潜水空母「伊四〇〇型」から発艦した特殊攻撃機「晴嵐改」が、夜陰に乗じてロス近郊の鉄道網や変電所をピンポイントで爆撃。アメリカ西海岸は、暗闇の中に放り込まれたのです。
米国民にとって、太平洋はもはや「自由の海」ではなく、どこから牙を剥くかわからない「死の海」へと変貌しました。 海岸線には日本軍の上陸を恐れる市民が溢れ、パニックが全土へ広がります。ワシントンの政府は、前線へ送るべき兵力を、本土防衛のために引き戻さざるを得なくなりました。




