新・太平洋艦隊 1 伊勢 日向
新連合艦隊と第一陣護衛船団の運んだ、戦略物資、石油によって、日本の各地で固定されていた戦艦、空母が補給、整備を受けて、第一線に復帰してきた。
その復帰状況を述べる。
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呉軍港
二隻の巨体、「伊勢」と「日向」が静かに浮かんでいた。かつて「浮き砲台」として迷彩塗装を施され、情島の影に隠れるように繋がれていた両艦だが、今、その艦内には数年ぶりの活気が戻っている。
伊勢の艦橋、海図台を前にした司令官・高城少将は、各部門の指揮官から、地道だが着実な復旧状況の報告を受けていた。
機関長:「はっ。主缶の徹底した煤払いと、蒸気系統の継手・パッキンの総点検を完了。運ばれてきた良質な重油により、試験炊きでは久々に安定した蒸気圧を確認しました。タービンの振動も許容範囲内です」
砲術長:「主砲および高角砲、各砲塔の駆動部への注油と調整を継続中。磨耗が激しかった一部の部品は、工廠から回された予備品と交換し、仰角・旋回ともに実戦に耐えうる精度を維持しています」
工作長:「対空戦闘で損傷していた機銃座の防盾および、甲板の一部補修を終えました。現有の鋼材で可能な限りの修復を施しております」
高城はうなずく。「派手な強化は要らん。ただ、戦える状態であればよい。我々の任務は、この巨砲を南方の最前線へ届けることだ」
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呉鎮守府の一室。高城少将は、日向の司令官・村雨大佐と向き合い、南方作戦の海図を囲んでいた。
「村雨、日向の罐の具合はどうだ?」
「ああ。長らく火を落としていたからな、水管の洗浄には骨が折れたが、ようやく準備は整った。次の戦いでは、太平洋上の敵主力艦隊は既に事欠いている。我々の役割は、地上軍を苦しめる敵基地への砲爆撃、あるいは孤立した拠点への直接支援が主になるだろう」
「瑞雲の運用が鍵になるな」と高城が応じる。「偵察、弾着観測、そして爆撃。水上機ゆえの柔軟な運用を、この航空戦艦の設備で最大限に引き出す。敵地上部隊にとって、我々の主砲と瑞雲の連携は、この上ない脅威となるはずだ」
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呉近郊の航空基地。第一戦隊(伊勢搭載)と第二戦隊(日向搭載)を統括する三島中佐は、かつての部下たちの顔ぶれを眺めていた。
戦況の悪化とともに、ある者は他部隊へ、ある者は特攻へと散っていった。だが今、生き残ったベテラン搭乗員たちが、再び「航空戦艦」の名の下に集結したのだ。
訓練内容: カタパルト発進訓練: 後部甲板の両舷に据えられた一式二号一型噴進射出機からの連続発進。火薬の爆発的な推力に耐え、即座に陣形を整える手順を繰り返す。
弾着観測・爆撃訓練: 無線を用いた「主砲弾着修正」の練成。同時に、二五〇キロ爆弾を用いた精密急降下爆撃の精度を極限まで高める。
機体状況: 整備員たちが夜通しでプラグの清掃やキャブレターの微調整を行い、瑞雲のエンジンは快調な爆音を響かせている。
「諸君、我々の母艦は伊勢と日向だ。今度は、あの広い飛行甲板を無駄にはさせん。カタパルトから飛び立ち、地上で戦う陸軍の兄弟たちを、空と海から全力で支えるぞ!」
「伊勢」「日向」は、かつて失った翼を取り戻し、実直な整備によって磨き上げられた巨躯を、熱帯の最前線へと向けようとしていた。そこには長年海を共にした男たちの、確かな誇りが宿っていた。




