第二次ハワイ攻略:鋼鉄の怒涛
「ハワイを、再び日本の手に」
坊ノ岬沖での勝利、そして日本に飛来するB-29の殲滅を経て、日本軍は守勢から一転、かつてない規模の攻勢計画を立案した。その名も「第二次ハワイ攻略作戦」
1945年10月午前5時。 ハワイ・オアフ島、真珠湾。 米太平洋艦隊の最大拠点となったこの地に、再び絶望の影が落ちようとしていた。
米軍の最新鋭レーダーが、西方の水平線から接近する「巨大な反応」を捉えたのは早朝のことだった。しかし、その報告を受けた太平洋艦隊司令部は耳を疑った。
「戦艦、空母を含む大艦隊が接近中……? バカな、少し前までは日本の艦隊は坊ノ岬で全滅するはずだったのに。それに、この移動速度は何だ!? 467ノットを超えているだと!?」
真珠湾上空に再び空を切り裂く轟音とともに現れたのは、もはやプロペラすら持たない、噴流を噴き出す謎の翼――時空を超えた技術で改修された「橘花改」の群れだった。
「1941年の雪辱だ。全機、爆装解除、噴進弾を発射用意!」
編隊長の声とともに、出現した時にはすでに改装されていた装甲空母「翔鶴、瑞鶴、大鳳」から発艦したジェット機群が、アメリカ軍港、空軍基地に向けて多数の噴進弾を放つ。 指令施設、通信施設、飛行機格納施設、燃料タンク、が、一瞬で爆砕されていく。米軍の対空砲火は、音速で駆け抜ける機影を捉えることすらできなかった。
「橘花改」が発艦後、ハワイ沖100キロ海域、航空母艦「赤城」「加賀」その飛行甲板には、大型の艦載機が並んでいた。
「エンジン始動、回転数上昇。……全機、発進用意!」
艦橋に響く号令とともに、プロペラが夜の闇を切り裂く。発艦していくのは、最新鋭の艦上攻撃機「流星改」
(戦術に柔軟に対応できる、武装時に魚雷、爆装、誘導噴進弾に切り替えられる)
従来の艦上攻撃機の限界を超えた兵器を抱えた翼が、夜明け前の空へと吸い込まれていった。
「蒼龍」「飛竜」からも「零戦六十四型改」が次々と発艦していく。
飛行隊指令は、甲板を静かに見つめいた。
ハワイ沖、鉄火の洗礼
対するアメリカ海軍ハワイ駐留艦隊もまた、鉄壁の陣容を誇っていた。 オアフ島周辺には、新型のエセックス級空母5隻を中心に、レーダー連動のVVT信管を備えた無数の対空火器が牙を剥いている。
「敵機接近! 距離80、方位270! 全艦、対空戦闘開始!」
米空母『タイコンデロガ』の艦上で、悲鳴のような報告が飛ぶ。彼らにとっての悪夢は、日本軍の攻撃機がかつての「鈍重な攻撃機」ではないことだった。
「流星改」は米軍の対空砲火が弾幕を形成する前に無数の赤外線誘導噴進弾を発射する。その超高速は防御網をすり抜ける。多数のフレッチャー級駆逐艦とエセックス級の側腹を容赦なく引き裂いた。
発進可能なアメリカ戦闘機が上空の「流星改」を迎撃しようとするが「零戦六十四型改」はそれを阻む。
巨砲、真珠湾を叩く
そして、燃え上がる真珠湾の入り口に、あの巨体が姿を現した。
戦艦『大和』。 時空を超えた改修を受け、レーダー連動の精密射撃能力を得た46センチ主砲が、オアフ島の要塞砲台を次々と沈黙させていく。
「敵旗艦、戦艦ミズーリ、確認!」 「……撃てッ!」
有賀艦長の号令とともに放たれた主砲弾は、水平線の彼方からミズーリの火薬庫を正確に貫いた。巨大な火柱が上がり、米軍の象徴が海へと沈んでいく。すでに発艦能力を失った空母群もその後を追った。
背後の毒牙
ハワイ諸島を火の海に変えた日本連合艦隊が、勝利の余韻に浸る隙を米軍は見逃しませんでした。あらかじめ「罠」として洋上に退避していた米別働機動部隊による、乾坤一擲の反撃。
午前11時30分。 日本連合艦隊。その旗艦『大和』の電探室に、凍り付くような悲鳴が響いた。
「電探に感あり! 方位180、距離120キロ! 敵艦載機の大群、急速接近中!」
緊急発艦
「各艦、直掩機全機発進! 間に合わせろ!」
空母の甲板では、整備兵たちが叫びながら固定索を解く。
「イナーシャ、回せッ!」
飛行甲板に怒号が飛ぶ。整備兵たちが一斉にクランクに取り付いた。静寂を切り裂くのは、慣性始動機が奏でる悲鳴のような回転音だ。
「キィィィィィィン……」
敵機接近まであと5分。計器を見つめるパイロットの指が、始動レバーにかけられる。
「回った! 繋げ!」
慣性エネルギーが解放され、鈍重なプロペラが一度、二度と震えた後、爆音と共に猛烈な風を後方へ叩きつけた。
発動機が轟音を上げて目覚めた。 この作戦で最後に連合艦隊を守護する戦闘機「烈風改」である。
金星7型エンジンを装備し、その姿は猛禽類のような威圧感を放っていた。
「烈風一号機、発進!」
烈風改は、強烈な加速で瞬時に高度を稼いでいく。
高度8,000メートル。米軍の攻撃隊が急降下に入ろうとしたその時、上空の青い静寂を切り裂いて、銀翼の死神が舞い降りた。
「敵機確認……これより排除する」
ハワイを攻略され、もはや後がない米海軍が放った「最後の一矢」だった。ハワイ攻撃の直前に戦域を離脱していた米機動部隊が、ハワイを攻撃する日本軍の隙を突き、死角から殺到したのだ。
その数、およそ200機。最新鋭のF8F「ベアキャット」「TBF アヴェンジャー」である。
烈風改のコックピットで、熟練のパイロットが冷静に照準を合わせる。 米軍の「F8Fベアキャット」は、その機動性で烈風を翻弄しようとした。しかし、烈風改の翼はまるで意思を持っているかのように鋭く翻った。
ドガガガッ!
20ミリ機銃の重厚な音が響く。一撃。たった一撃で、米軍の爆撃機の「F8Fベアキャット」の翼が千切れ飛び、火だるまとなって太平洋へと落ちていく。
米軍のパイロットたちは戦慄した。自分たちが誇る最新鋭機が、追いつけないほどの速度と、追いきれないほどの旋回性能を両立させた怪物に蹂躙されている。
「化け物か……日本の戦闘機は」
上空で烈風改と米戦闘機隊が火花を散らす中、海面付近の濃い霧を突いて、数多の黒い影が躍り出た。 米海軍自慢の重攻撃機、「TBF アヴェンジャー」だ。
「……敵艦隊視認。目標、中央の大型空母!」
アヴェンジャーのコックピットから見えるのは、日本連合艦隊、その周囲を固める秋月型駆逐艦の群れだ。米軍パイロットたちは、上空の味方が全滅しつつあることを悟っていた。もはや援護はない。彼らは単独で、日本の対空陣地に突っ込むしかなかった。
鋼鉄のカーテン
「面舵一杯! 弾幕を薄くするな!」
日本艦隊の各艦から、一斉に25ミリ機銃と10センチ高角砲が火を噴く。海面は砲弾の着水によって沸き立ち、まるで巨大な水の柱が林立しているようだった。
アヴェンジャーの編隊は、その水柱を左右に避けながら、時速400キロを超えて突き進む。機体には数え切れないほどの弾痕が刻まれ、一機、また一機と翼を折られて海面へ激突し、爆発する。
しかし、米軍の「雷撃のプロ」たちはひるまない。彼らは魚雷を放つための最短距離――「キル・ゾーン」へと、命を投げ出す覚悟で突入した。
烈風改、急降下
その時、雲を割り、垂直に近い角度で降りてくる影があった。上空での戦闘を終えた烈風改の小隊だ。
「逃がさん。魚雷を放つ前に沈めろ!」
烈風改のパイロットは、機体を限界まで加速させ、アヴェンジャーの巨大な背中に向かって20ミリ機銃を叩き込んだ。 ドシュッ、と重鈍な音が響き、アヴェンジャーの機体がバラバラに砕け散る。だが、その直前、一機のアヴェンジャーが腹部から鈍色の巨体を解き放った。
Mk.13 魚雷。 それは白い航跡を引きながら、旗艦「大和」の右舷へと迫る。
執念の交錯
「魚雷接近! 面舵、回避!」
巨艦「大和」が激しく身をよじる。魚雷はわずか数メートルの差で艦尾をかすめ、遥か後方で水柱を上げた。
米艦上攻撃機隊、全32機。そのうち魚雷を放つことができたのはわずか5機。そして、その全てが烈風改と対空砲火によって仕留められた。海面には、米軍パイロットたちと、機体の残骸が虚しく浮いている。
烈風改が再び大和の真上を旋回し、勝利の合図として翼を左右に振った。
わずか30分の空戦で、米軍の反撃隊は組織的な戦闘能力を喪失。命からがら逃げ帰る機体は数えるほどしかなかった。
米艦上攻撃機隊の決死の突入を退けた日本連合艦隊。今度は、逆探知と偵察によって位置を特定した「米機動部隊」そのものを海に沈める、冷徹な反撃の刻がやってきました。
水平線の彼方へ —反撃の連合艦隊—
「敵位置確定! 真珠湾南西150キロ! エセックス級を含む3隻、輪形陣を組んで離脱中!」
旗艦「大和」の作戦室。海図に置かれた敵の駒が、逃走を示す進路を指している。 伊藤司令長官は静かに頷き、マイクを握った。
「全艦隊へ通達。一兵たりともカリフォルニアへ帰すな。反撃を開始する」
日本艦隊は不屈の精神でその猛攻を凌ぎきった。
「全艦、被害状況報告! 発艦準備急げ!」
「赤城」の艦橋で、謎の機動部隊の司令官が叫ぶ。彼の顔には疲労の色が濃かったが、その眼差しにはまだ戦意が燃え盛っていた。
飛行甲板では、激しい戦闘の余韻が残る中、熟練の整備員たちが迅速な作業に取り掛かっていた。激しい迎撃を終えた多くの艦載機が着艦した飛行甲板に、まるで嵐が去った後の静寂が訪れたかのようだ。しかし、その静寂は次の嵐の前の静けさに過ぎなかった。
ハワイの攻撃と敵機動部隊の迎撃で稼働可能な艦載機の数は大幅に低下していた。
ジェット推進機はエンジンの再整備に時間が必要で反撃には使えず、各空母の中ではその中で再出撃可能な機体の抽出作業と整備、武装を同時にしなければならなかった。
烈風改の機体には、弾痕が生々しく刻まれている。しかし、整備員たちは慣れた手つきで破損個所を応急修理し、弾薬倉から運び出された20mm機関砲弾をベルトリンクに繋ぎ、次々と翼内機関砲に装填していく。燃料ホースが接続され、高オクタン価の航空燃料が補充されると、エンジンが再び咆哮を上げる準備が整った。
一方、流星改の周りでは、さらに慌ただしい作業が繰り広げられていた。エレベーターが唸りを上げて下甲板から上がってくる。そこには、真新しい赤外線誘導弾、徹甲爆弾、そして九一式航空魚雷が所狭しと並べられていた。
「急げ! 次の攻撃まで時間がない!」
整備科士官の怒号が響く。流星改の頑丈な胴体下面には、最新鋭の赤外線誘導弾が搭載されていく。これは、アメリカ艦隊の煙突から出る熱を追尾し、命中精度を格段に向上させる切り札だった。別の機体の翼下には、敵空母の装甲甲板を貫くための徹甲爆弾、その向こうの機体には艦艇の喫水線を狙う魚雷が吊るされる。
作業は分単位、秒単位で進められる。整備員たちの手際の良い動きは、長年の経験と訓練によって培われたものだった。彼らは皆、自分たちの任務が、この戦いの行方を左右することを深く理解していた。
「赤城」の飛行甲板では、整備が完了した烈風改が次々と駐機位置に並べられ、翼を休めていた。その隣には、満載された武装を誇らしげに吊り下げた流星改が、今か今かと発艦の命令を待っている。 「加賀」「瑞鶴」「翔鶴」「大鳳」の各空母でも、全く同じ光景が展開されていた。どの艦の飛行甲板も、次の攻撃へと向かう熱気に包まれていた。
やがて、艦橋から発艦準備完了の信号が送られる。各空母の発艦指揮官が緑色の旗を大きく振る。
「第一波、発艦用意!」
エンジンが轟音を響かせ、プロペラが空気を切り裂く。排気管からは熱い炎が噴き出し、滑走路上に陽炎が揺らめく。
「発艦始め!」
指揮官の号令と共に、まず烈風改が次々と飛行甲板を駆け抜けていく。主翼がしなやかに撓み、機体はわずかな滑走距離で軽々と宙に舞い上がる。続いて、重々しい流星改が、巨大な爆弾や魚雷を抱えながら、力強く離陸していく。
「赤城」「加賀」「瑞鶴」「翔鶴」「大鳳」の飛行甲板から、発艦可能な機体を寄せ集めた55機の戦闘機隊と攻撃機隊が、次々と大空へと放たれた。編隊を組み、漆黒の夜空を切り裂いていく彼らの姿は、まさに嵐の前の静けさから解き放たれた猛き虎の群れだった。
水平線の彼方、アメリカ艦隊が待つ空域へと、日本の航空部隊は進撃を開始した。彼らの眼差しには、激戦を乗り越えた者だけが持つ、鋼のような決意が宿っていた。この攻撃が、太平洋戦争の趨勢を決めることになるだろう。
「見えたぞ」
先導する烈風改の風防越しに、水平線上に浮かぶ米艦隊の影が見えた。米軍は必死の上空防御を展開するが、先陣を切る烈風改が、圧倒的な速度で上空の護衛戦闘機群を制圧していく。
「流星改」の咆哮
「全機、攻撃開始!」
赤外線噴進弾は護衛艦艇群を屠り、空母甲板や防空兵器群を沈黙させる。
続けて800キロ爆弾を装備した流星改が躍り出る、米空母『ヨークタウンII』が回避運動を試みるが、流星改のパイロットは機体と一体化したかのような精密な操縦で、逃げ道を塞ぐ。
「墜ちろ!」
放たれた800キロ爆弾が、米空母の飛行甲板を真っ二つに叩き割った。内部の格納庫で誘爆が起こり、巨大な火柱が天を突く。最新型のエセックス級も、日本の進化した攻撃機の前には無力だった。
終焉の雷撃
トドメを刺したのは、海面スレスレを高速航行する流星の魚雷だった。 米空母の舷側を深く、残酷に貫く。
「命中……命中! 傾斜増大。沈没確実!」
海面に大きな渦を作りながら、アメリカ太平洋艦隊の誇りであった巨艦がゆっくりと横転していく。
勝利の残光
海面に点々と広がる米軍機の残骸と、立ち昇る黒煙。 再び静寂を取り戻した日本艦隊の上空を、悠然と旋回しながら降りてくる烈風改の翼には、秋の陽光が眩しく反射していた。
空母「赤城」の甲板に着艦したパイロットが風防を開けると、そこには勝利の確信と、ひとつの時代の終わりを予感させる冷徹な眼差しがあった。
ハワイは完全に封鎖された。今や太平洋に、日本連合艦隊の進撃を阻むものは存在しない。




