南方奪還フィリピン攻略 2-15 《帰還艦隊》攻撃部隊 フォート・マッキンリー、クラーク、スービックを爆撃する
バターン半島上空――高度9,000メートル。
米陸軍航空隊の迎撃戦闘機群を完全に排除し、蒼穹を制圧した新連合艦隊の航空大群。その先頭を切り、高高度を滑空するのは、艦上偵察機をベースに開発された特別仕様機『彩雲(空中前線管制型)』であった。
母艦の蒸気カタパルトから直接発艦可能なこの双発・3座の大型艦載管制機は、アナログ電子技術を集約した空中指揮所である。狭隘な後部キャビンには、緑色の光を放つCRTモニター、磁気記録データリンク、そしてパッシブ・レーダー波方位測定装置が明滅していた。
「こちら先行の彩雲偵察一番機。敵主要拠点の電波源および地上配置データを送信する」
後部座席のオペレーターが、ノイズ混じりの音声とともにデータ信号を受信。CRT画面の上に、ルソン島中部の地図と赤く点滅する敵目標の座標群が瞬時に描き出された。
「こちら、前線航空管制機。了解……データを受信した。直ちに各攻撃隊へ伝達する」
空中前線航空管制官は胸元のスイッチを切り替え、広域戦術データリンクの周波数を合わせた。
「各攻撃隊、通達! 『赤城』『加賀』隊はスービック海軍基地! 『蒼龍』『飛龍』隊はマニラ・フォート・マッキンリー基地! 『大鳳』『翔鶴』『瑞鶴』隊はクラーク空軍基地! それぞれの割り当て目標へ向かい、対空陣地、地上電探、滑走路、駐機場、司令部施設を完全破壊せよ!」
管制官は一呼吸置き、厳格なトーンで重要な制約事項を加えた。
「――繰り返す! 燃料タンク群および物資集積倉庫への攻撃は厳禁、または最小限に留めよ! あの莫大な石油と弾薬は、フィリピン制圧後に我々がすべて接収・利用する! 爆薬を無駄遣いして宝の山を灰にするな。基地設備と指揮系統のみをピンポイントで撃ち抜け!」
「了解! 各隊、攻撃を開始せよ!」
バターン半島上空で、数千機の翼で構成された巨大な雲が、三つの太い大蛇のごとく分離し、それぞれの目標へ向かって急降下を開始した。
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一、マニラ・フォート・マッキンリー ―― 司令部と電探のピンポイント粉砕
マニラ郊外、フォート・マッキンリー。
『蒼龍』『飛龍』の攻撃隊が雲を突き破って飛来した。主力攻撃機『流星改』のコクピットには、「TV照準装置(電子光学照準器)」の小型CRTモニターが設置されていた。機首下部の望遠カメラが捉えた白黒のリアルタイム映像が、操縦士の手元に映し出される。
アメリカの対空レーダーアンテナが回転し、高角砲が空を仰ぐ中、日本の攻撃機隊はレーダー波の発信源をパッシブ受信機で特定。
「敵電探、捕捉。TV照準器、ロックオン……発射!」
機体から離脱した精密誘導噴進弾が、吸い込まれるようにアメリカの長距離警戒レーダーアンテナと通信用ドームへ着弾。強烈な閃光とともに、アメリカ軍の目と耳が一瞬にして吹き飛んだ。
続いて、マッカーサー将軍らが避難した直後の地下壕周辺、ならびに参謀司令部棟がピンポイントで爆撃された。周囲に山積みされた莫大な物資集積倉庫には一発の弾丸も落とされず、司令機能だけが正確無比に破砕されていった。
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二、クラーク空軍基地 ―― 滑走路の沈黙と駐機航空機群の無力化
ルソン島最大の航空拠点、クラーク基地。
ここへ襲いかかったのは『大鳳』『翔鶴』『瑞鶴』から発艦した最大規模の攻撃隊であった。
駐機場に並べられたB-24とB-17の重爆撃機、整備または待機中の複数のP-51マスタング、P-47サンダーボルトが重爆撃機の向こう側に並べられている。そして、C-47大型輸送機。そして広大なアスファルト滑走路。
「滑走路破壊用特殊爆弾、投下!」
高度数千メートルから投下された特殊遅延爆弾が、滑走路の滑走路面に突き刺さり、深部で爆発。滑走路は巨大なクレーターの列と化し、離陸準備中だったアメリカ機は大空へ飛び立つすべを失った。間髪入れず、司令部や乗務員待機所に高級士官や操縦士などの人員の殺傷を目的とした対地ロケット弾の雨が降り注ぐ。基地の目と鼻の先にある巨大な航空ガソリンタンク群。そこへ向かって誤って旋回しようとした流星改に対し、上空の『彩雲(管制型)』から即座に警告が入る。
『二番機、そこのタンクに当てるな! 角度を変えろ!』
「了解、照準修正!」
パイロットは瞬時に機首を捻り、爆弾の着弾点をタンクの手前に設置された高角砲陣地へと滑り込ませた。タンク群は爆風の衝撃で揺れ動いたものの、炎上を免れ、そのまま無傷で保存された。
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三、スービック海軍基地 ―― 港湾防衛線の崩壊と帰還
『赤城』『加賀』隊が襲いかかったスービック海軍基地では、港湾を囲む対空砲陣地と沿岸要塞が激しい爆撃に晒されていた。
対レーダー・パッシブ探知機を積んだ流星改が、アメリカの火器管制レーダーの電波を逆探知。アンテナの基部へ誘導噴進弾を叩き込み、港の対空網を分単位で無力化していく。桟橋に並ぶ巨大な港湾クレーンや、巨大な重油貯蔵施設群には一切の手が出されず、港を守る対空砲座、防空陣地の主要部、そして警備司令部のみが精密爆撃で破壊した。
わずか三十分の間に、フィリピンにおけるアメリカの三大中核拠点——フォート・マッキンリー、クラーク、スービックの航空・対空・指揮機能は完全に沈黙した。
「全目標の無力化を確認。物資集積所および燃料タンクの被害、極小。作戦は完璧に成功した」
上空で旋回を続けていた『彩雲(空中前線管制型)』のオペレーターが、淡々と戦果を打ち電する。
「各攻撃隊、直ちに離脱せよ。針路、スービック沖。我らの母艦が待っている」
爆撃を終えた三つの航空隊は、燃え上がる敵基地をあとにし、夕闇の迫る空へと再び結集。バターン半島沖を破竹の勢いで進撃する新・機動部隊の空母群へと向けて、美しく乱れのない編隊を組み直し、帰路につくのであった。




