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待たせたな!  作者: 僧籍
第五部 悪鬼・羅刹

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悪鬼・羅刹 追撃戦、バイカル湖までシベリア鉄道を走れ 9-5 地上員誘導航空爆撃

挿絵(By みてみん)


横一特・第1挺進団の空地連携作戦


死守された鉄路と極寒の精鋭


バイカル湖の切り立った断崖をぬうように走る「環状鉄道」。その重要トンネル群を、ソヴィエトNKVD(内務人民委員部)の爆破工作から間一髪で死守した部隊があった。


海軍空挺の誇りを胸に抱く横須賀鎮守府第一特別陸戦隊(横一特)と、陸軍精鋭の第1挺進団である。


大胆不敵な夜間空挺降下作戦を見事に成功させ、トンネルの爆破装置を解体した両部隊は、息つく間もなく次の任務へと移行した。バイカル湖周辺に張り巡らされたNKVDの要塞化陣地、およびシベリアの空を監視する対空監視所の完全排除である。これが残っている限り、シベリア鉄道の完全支配も、後続の鉄道部隊の展開も望めないからだ。


---


横一特と第1挺進団の選抜部隊は、シベリアの厳しい自然条件の中、息を潜めて北側の険しい高地へと歩を進めていた。


膝を没する深い新雪と、その下に隠れた滑りやすい氷結した岩肌。一歩踏み外せばそのまま数十メートルの谷底へと滑落する過酷な斜面である。裏地が毛皮の白の防寒外套を身を包んだ挺身兵たちは、足元に装着した特製の竹製かんじきで確実かつ静粛に雪を踏みしめ、かんじきの爪を氷に打ち込みながら、一列となって斜面を這い登っていた。


先頭を行く第1挺進団の曹長が、白い息を吐き出しながら手信号を送る。全員がその場に低く身を伏せた。


頭上の針葉樹林の間を、強烈なサーチライトの光軸がゆっくりと交錯して通過していく。山頂のNKVD陣地から発せられる探照灯だ。光が過ぎ去ると同時に、海軍横一特の隊員が先回りして岩壁に打ち込んだハーケンと登山用ロープに手をかけ、かんじきを外して、滑り止めの手袋をはめた手で慎重に登っていく。


背中に背負うのは、近接戦用の百式機関短銃改と、白い防護カバーで冷気を防いだ暗号野戦無線機。極寒の風が皮膚を突き刺し、呼気が眉毛や防寒帽のフチで瞬く間に白い氷の粒へと変わる。それでも誰一人として音を立てない。陸海双方の空挺精鋭たちが長年の訓練で叩き込んだ、極限状態における無言の連携がそこにあった。


急勾配を登り詰めること三十分。樹木が途切れ、ゴツゴツとした岩肌が雪から露出する山頂直下の尾根筋に、潜入班は辿り着いた。


切り立った岩陰の吹き溜まりに身を滑り込ませた挺身兵たちは、肩で息を整えながら、防寒外套の雪を払い落とす。眼下を見下ろせば、冷たい月光の下、コンクリートの黒々とした影を晒すNKVDの要塞陣地と、鈍く光る対空監視所の電波探知機が、逃れようのない標的としてその全貌を現していた。


---


闇の中の観測班と精密座標伝送


極寒のシベリアの風が吹き荒れる岩山と針葉樹の密林の中に、両部隊の将兵が身を潜めていた。

彼らが身に纏うのは、1945年仕様の最新防寒戦闘服と軽量化された特殊野外装備。手に握るのは、近接戦闘で圧倒的な火力を誇る『百式機関短銃改』や『九九式短小銃』そして、最新の暗号野戦無線機である。


シベリア鉄道を見下ろす岩陰で、挺身観測班の将校が高性能な双眼鏡を構え、眼下の敵陣地を観察していた。


そこには、コンクリートで固められたNKVDの複層トーチカ陣地と、重機関銃や対空陣地を排した厳重な防衛線が構築されていた。さらに尾根の山頂付近には、日本軍機の接近を察知して本隊へ警報を送る対空監視所と大型電波探知機が鎮座している。


正面から突入すれば、いくら空挺精鋭といえども無用な血を流す。彼らが選んだのは、先進的な「地上員誘導航空爆撃」であった。


「目標、NKVD第3要塞陣地および山頂対空監視所。座標・ジュウイチ・ヨンジューハチ。……送信」


隠密潜入した横一特と第1挺進団の潜入班が、無線機で暗号化された精密座標を上空へ向けて打電した。


---


近接航空支援攻撃


数分後、雲を突き破って重厚なエンジンの轟音がシベリアの空を震わせた。


座標の受信し、高空で待機していた一式陸上攻撃機、四式重爆『飛龍』、そしてB-17、B-25からなる陸海軍混成爆撃機隊が、正確無比な照準線を描いてバイカル湖上空へと躍り出たのである。


「爆撃目標の座標の線に乗った! 爆撃開始!」


高空から投下された大型爆薬弾が、風を切る音とともに吸い込まれるように降下していく。


ドォォォォン――ッ!


一瞬遅れて、山頂と岩壁が巨大な火柱とともに吹き飛んだ。


空中炸裂と直撃弾の衝撃波が、NKVDの要塞陣地を破砕し、対空監視所のレーダー施設や通信アンテナを微塵に打ち砕く。山肌を揺らす爆発の連続音とともに、それまで強固にそびえ立っていたソヴィエト軍の防衛拠点が一瞬にして黒煙と土砂の山へと変貌した。


---


残敵掃討、完全制圧


「爆撃完了! 突入ッ!」


爆炎と煤煙が立ち込め、敵が恐慌状態に陥ったその瞬間、潜伏していた横一特と第1挺進団の兵士たちが一斉に跳び出した。


岩場を風のように駆け抜けた空挺兵たちが、崩れかけたトーチカの隙間へ躍り込む。


カカカンッ! カカカンッ!


『百式機関短銃改』の甲高い連射音が響き、混乱して小銃を構えようとしたNKVD兵たちを寸分の狂いもなく薙ぎ払う。逃げ遅れた敵が立てこもる地下掩体壕に対しては、破砕手りゅう弾が投入され、瞬く間に沈黙させた。


陸の第1挺進団と海の横一特による、鮮やかな山頂監視所の制圧と鉄路沿いの要塞破砕。陸海空挺の双璧による完璧な連携と、彼らの誘導による航空爆撃により、バイカル湖周辺のNKVD警備連隊および防衛陣地は、次々と攻略、排除されたのである。


---


トンネル群は無傷で守られ、周囲の脅威は完全に掃討された。切り立った崖の合間を縫う線路の上を、やがて威風堂堂とした北方防衛開放軍の重装甲列車と、後続の物資を満載した長大列車群が、誇らしげに汽笛を鳴らしながらウラン・ウデ、イルクーツク方面へと駆け抜けていった。

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