表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
待たせたな!  作者: 僧籍
2/8

逆転の咆哮

「全機、突撃トツレ!」


機動部隊司令官の号令とともに、蒼穹を埋め尽くした「烈風改」の群れが、獲物を狙うハヤブサのごとく急降下を開始した。 それまで大和をなぶり殺しにしていた米軍のF6Fヘルキャットが、次々と火を噴き、黒煙を引いて海面へ叩きつけられていく。烈風改の圧倒的な速度と旋回性能の前に、米軍パイロットたちは無線で悲鳴を上げた。


「ジャップの新型機だ! 速すぎる、背後を取れな……ッ!」


その悲鳴すら、烈風改の20ミリ機銃が切り裂く。 上空の制空権が瞬く間に塗り替えられる中、海面低く、死神の如き低空飛行で接近する一団があった。


艦上攻撃機「流星改」――。 魚雷を搭載可能であると共に、爆弾で急降下爆撃すらこなす「万能の魔鳥」が、米軍第58任務部隊の目鼻の先にまで肉薄していた。


米艦隊の壊滅


200キロ先、米空母「バンカー・ヒル」の艦橋では、ミッチャー提督が絶句していた。 レーダーは「あり得ない数」の反応で埋め尽くされ、目視できる距離には、すでに雷跡を引いた流星の群れが迫っている。


「迎撃しろ! 対空砲火、全門撃て!」


しかし、時空を超えて現れた機動部隊の「流星改」は、熟練の極致にあった。 また新型の金星七型エンジンを搭載し対空砲火の網を、それぞれの流星改が蝶が舞うような身のこなしで潜り抜け、次々と魚雷を解き放つ。


「放てッ!」


重厚な衝撃音が海に響く。バンカー・ヒルの右舷に三本、左舷に二本の魚雷が吸い込まれた。 巨大な水柱が甲板を突き破り、一撃でその航行能力を奪う。続いて空母「ハンコック」には、上空から急降下した流星改の800キロ爆弾が直撃。格納庫内の燃料と弾薬に誘爆し、艦体は巨大な松明と化した。


大和、再起動


「……信じられん。米軍の空母が、あれほど脆く……」


大和の艦橋で、有賀艦長は震える手で双眼鏡を覗いていた。 つい数分前まで自分たちを追い詰めていた世界最強の艦隊が、今や一方的に屠られている。


「艦長、ぼうっとしている暇はないぞ。我らも仕上げだ」


伊藤長官の声に、有賀はハッと我に返った。 大和の傾斜は応急注水で持ち直し、主砲の照準はすでに、炎上する米艦隊の残骸を捉えていた。


「目標、敵巡洋艦群! 全主砲、斉射!」


ズゥゥゥンッ!!


46センチ主砲九門が、大気を震わせて咆哮した。 放たれた一式徹甲弾は、数キロ先の海域を逃走中だった米軽巡洋艦を一撃で両断し、巨大な水柱とともにその存在を地図から消し去った。


空には日の丸の翼、海には不沈艦の巨砲。 かつて夢にまで見た「理想の連合艦隊」が、そこにはあった。


勝利の静寂


やがて、水平線の向こうに巨大な爆発の光がいくつも上がり、やがて静寂が訪れた。 第58任務部隊は、その中核となる空母のほとんどを喪失。生き残った艦艇も、散り散りになって敗走を始めていた。


大和の上空を、任務を終えた一機の「烈風改」が低空でパスしていく。 パイロットが風防越しに親指を立てるのが見えた。


大和の甲板では、血と油にまみれた水兵たちが、互いの肩を抱き合い、あるいはその場に泣き崩れながら、空に向かって精一杯に手を振って「ありがとう」と叫んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ