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待たせたな!  作者: 僧籍
第四部 北方防衛開放戦線

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清津の惨劇 悪鬼羅刹の蛮行 5-5 ソヴィエト軍航空隊 第12航空軍

挿絵(By みてみん)


大連のザバイカル方面軍の司令部に日本軍の大攻勢の情報が集まっている。アンドレイ・クラフチェンコ司令官は麾下の参謀団に航空索敵、地上快速部隊による偵察を厳重にし、如何なる兆候も逃さないように指示を出していた。


シベリア極東軍第一、第二方面軍の司令部からの通信が途絶えてから、対策に追われていた。参謀長に向かって切り出した。


「ウラジミール参謀長、君はこの状態をどのように考える。私はすでに日本軍の増援がウラジオストク方面より上陸をし、ハルビンへ向かって進軍している考えている」


ウラジミール参謀長はこれに返す。


「閣下、私もそう思います。さらに先の戦いのように旅順、大連からの上陸を視野に入れているかと思います。」


索敵班からの情報からその予測が正しいことが確定しつつある、しかし、どのようにして装備や人員にに劣る日本軍が逆撃を仕掛けてきたのか?その全体の総員と装備の情報は錯綜していた。そのため、敵軍の進軍のタイミングや攻撃規模が判断できないでいた。


続けて、クラフチェンコ司令官はセルゲイ・フジャコフ航空元帥に日本軍の攻撃にどのようにして対抗するかと尋ねようとした時、索敵担当の情報士官が慌てて、部屋に入ってきた。


「索敵機第一、第二、第三班より報告、ハルビンの現地司令部が陥落、日本軍はハルビン周辺を再占領し、シベリア鉄道(東清鉄道)とその支線(満州鉄道)を支配下に置きつつあります」


「索敵機第七班が黄海上に大規模な日本艦隊が出現したことを報告したのを最後に、通信が途絶しました」


司令部の一人が叫んだ。


「一体どうなっているんだ」


クラフチェンコ司令官はこう言った。


「日本軍がここに攻め込んで来るということだ。フジャコフ航空元帥、麾下のすべての迎撃部隊の準備をお願いします」


「了解した」


フジャコフ元帥は頷き(うなずき)航空参謀達に指示を出した。


さらに悪い情報が入ってきた。


「平壌方面より大規模な攻撃を受け、壊滅的な状態に落ちつつあるとの内容の通信が数多く繰り返されています」


クラフチェンコ司令官とフジャコフ元帥は視線を交わし、状況を認識した。


フジャコフ元帥は副官のパトリチェフ中尉に指示を出す。


---


大連航空基地


大連の司令部で朝鮮のおける、日本軍の攻撃を報告で受けたセルゲイ・フジャコフ航空元帥は旗下のすべての航空部隊に緊急出撃を命じる。


「第190戦闘航空師団と第245戦闘航空師団 Yak-9およびYak-3のすべての部隊を上空にあげろ」


「第248強襲航空師団と第316強襲航空師団 Il-2(シュトルモビク)もすべて発進だ!」


「第30、第54、第113爆撃航空師団 Pe-2とTu-2もすべてだ!」


「すべての戦闘機を上げろ、平壌方面へ移動しつつ、2機小編隊を組みつつ、各自で上空で部隊を集合させよ、次は攻撃隊の編成、発進準備も始めよ、輸送機、大型爆撃機は空中退避だ」


大連空港のソヴィエト軍航空隊に緊急発進の指令が届き、次々と戦闘機隊が発進していく。第190戦闘航空師団 最新鋭のYak-3とYak-9が、滑走路で発進の指示をする管制官の信号で飛び立っていく。整備員が帽子を振って送り出す。


ソヴィエト軍第12航空軍は平壌へ日本軍の迎撃に向かう。


一方のクラフチェンコ大将もウラジミールに指示する。


「旅順、大連の各部隊に最大の警戒態勢を指示せよ、警戒厳にせよ。索敵機を全方位に飛ばせ、特に黄海からの日本艦隊の艦艦動きに注意せよ」



---


大連・旅順方面からソ連軍戦闘機、攻撃機部隊が上空に現れる。日本軍新太平洋艦隊の哨戒にあたっていたフレッチャー駆逐艦のレーダーが大編隊を観測する。空母天城の空母艦隊航空指揮官 真壁少将は航空総隊長・浅岡中佐に向かって、上空警戒態勢の零戦六四型改の部隊に迎撃を指示をする。


南洋救出作戦から引き続き「葛城」「天城」航空総隊長を務める浅岡中佐。新たに雲龍型の新型空母「阿蘇、笠置、生駒」の各空母の艦載機隊の指揮官を束ねる。


「こちら、新太平洋艦隊航空指揮官 真壁少将、大連方面より、3つの集団を電探で観測している、一つは戦闘機部隊、もう一つは襲撃機の部隊、最も後方にいるのは中型の爆撃機だと思われるこれを撃破せよ」


「了解しました。各部隊聞いたか?これからソヴィエト軍の先陣の戦闘機部隊を蹴散らすぞ、ついて来い!」


---



ソヴィエト軍航空隊 第12航空軍


ザバイカル方面軍に配属された第12航空軍は、満州侵攻作戦において最も広大かつ困難な進撃路を担当した「空の主力」だ。


モンゴルの砂漠地帯から大興安嶺山脈だいこうあんれいさんみゃくを越え、満州中央部の新京(長春)や奉天(瀋陽)まで一気に突き進む地上軍(第6近衛戦車軍など)を、空から支え続けた。


司令官: セルゲイ・フジャコフ航空元帥


総機数: 約1,300機〜1,500機(作戦開始時。輸送機や予備を含めると約2,300機に達した)


特徴: 「超長距離進撃」を支援するため、燃料や水を運ぶ輸送部隊の比率が他の航空軍より高く、戦闘機も航続距離の長いモデルが優先配備された。


主要な部隊構成


第12航空軍は、主に以下の「航空師団」によって構成されていた。


■ 戦闘機部隊(制空・護衛)

第190戦闘航空師団: 最新鋭のYak-3およびYak-9を運用。


第245戦闘航空師団: 主にYak-9を配備。


役割: 関東軍航空部隊を無力化し、制空権を完全に確保すること。また、長距離を進む爆撃機や輸送機の護衛を担当した。


■ 強襲機部隊(地上攻撃・近接支援)

第248強襲航空師団: 「空飛ぶ戦車」Il-2(シュトルモビク)を主力とする。


第316強襲航空師団: 同様にIl-2を運用。

役割: 山岳地帯や砂漠を進む戦車部隊の「動く砲兵」として、行く手を阻む日本軍の陣地や要塞(ハルン・アルシャン要塞など)を直接粉砕した。


■ 爆撃機部隊(後方破壊・戦略爆撃)

第30、第54、第113爆撃航空師団: 双発急降下爆撃機Pe-2や、より新型のTu-2を運用。


役割: 日本軍の退路を断つため、鉄道網(東清鉄道)や橋梁、通信センターを破壊。新京や奉天といった主要都市への威圧爆撃も行った。


■ 輸送・連絡部隊(兵站の要)

第21輸送航空師団: Li-2(C-47のライセンス生産版)、C-47(米製供与機)を大量投入。


役割: 第12航空軍の真の功績。大興安嶺を越えて進む戦車部隊は常に燃料不足に陥るが、輸送機隊が前線の野戦滑走路へドラムガソリンを空輸し続けることで、電撃戦を可能にした。


運用された主要機体とその性能

Yak-9DD(長距離型): ソ連軍戦闘機としては珍しく、追加燃料タンクにより1,000km以上の航続距離を誇る。モンゴルから満州奥地まで、爆撃機の護衛をこなせる唯一の戦闘機だった。


Il-2 / Il-10: 23mmまたは37mm機関砲を装備し、日本軍の九七式中戦車や防空陣地を一方的に破壊した。ザバイカル方面軍の進撃路には強力な要塞が点在したため、彼らの役割は極めて重要だった。


Li-2 / C-47: この作戦の影の主役です。作戦終盤には、ハルビンや新京への空挺降下、さらには司令部要員を直接敵地に送り込む「空飛ぶ司令部」としても機能した。


---


日本軍北方防衛開放軍


決戦兵器:零戦六四型改(統合仕様)

戦闘機隊の主力として選ばれたのは、金星エンジンを搭載した零戦六四型(A6M8)の改良型だ。

零戦六四型改もまた、この新鋼材の恩恵を最大限に受けた。


搭載発動機:金星五四型(帰還鋼仕様)


主力戦闘機として選ばれた零戦六四型改もまた、金星五四型の主要部品を帰還鋼に置換することで、「量産型主力戦闘機」へと昇華された。

素材置換による耐久性向上: 金星エンジンの組み立ては、帰還鋼の採用に合わせて簡略化された。熟練工の調整に頼っていた動弁系部品を新鋼材の一体成型に変更し、未熟な工員による大量生産を可能としている。

統合兵站本部は、熟練工の技量に頼る「沈頭鋲」や複雑な曲面加工を簡略化し、スポット溶接が可能なこの代用鋼材を全面的に採用。



「軽量化は捨てろ。だが、新人操縦士を守る強度は一ミリも譲るな、エンジンは最適化によって出力が向上しているんだ」という号令の下、自動防漏タンクの周囲や座席背面には、ソ連軍の20mm機銃を跳ね返す厚手の防弾鋼板が「帰還鋼」によって安価に、かつ大量に供給・配置された。エンジンの金星五四型も、この新鋼材を用いた部品により耐久性が飛躍的に向上。低質燃料での稼働による故障率を劇的に低下させた。


「新しい操縦士に、格闘戦の神髄を教える時間はない。だが、この機体なら生きて帰ることができる」


統合兵站本部は、メーカー各社に防弾性能の徹底強化を命じた。自動防漏タンク、防弾ガラス、座席背面の鋼板。これらを標準装備としながらも、機体構造をボルト締めによるブロック化へ移行させ、生産コストを半分にまで圧縮。

エンジンの金星五四型は、低質燃料でも安定して作動するように調整され、未整備の戦場での稼働率を極限まで高めた。


帰還艦隊がもたらした未知の合金技術と、再編された統合兵站本部の執念が、既存の航空機も改良される。


統合兵站本部が主導するこの変革において、機体構造の「帰還鋼」と並び、心臓部であるエンジンの信頼性を劇的に引き上げたのが、《帰還艦隊》の技師たちがもたらした、ミクロの領域における化学的革命だった。


日本の航空機産業を根底から覆したのは、機体の「鋼」だけではありませんでした。エンジンの深淵、シリンダー内部で火花を散らす点火プラグという小さな部品にこそ、帰還艦隊がもたらした「素材革命」の真髄が宿っていた。


限界を超えた「スパーク」


当時の日本軍主力エンジン、金星五四型型や火星二五型は、高高度・高負荷運用において常に「失火」の恐怖と隣り合わせだった。従来のプラグでは電極が熱で溶け、セラミック(碍子)が振動と高圧で割れるという致命的な弱点があった。


統合兵站本部の命令により、各メーカーに伝達されたのは、《帰還鋼》でも採用された、帰還艦隊の技師たちが編み出した「ありふれた素材から生み出す超素材」の製法でした。


新型耐熱合金(電極):


希少な貴金属に頼らず、国内で入手容易なニッケルやクロムに特定の熱処理と微量元素の配合を施した特殊合金。極限の爆発的熱サイクルに晒されても、電極の消耗は従来の数分の一に抑えられた。


高結晶セラミック(碍子):


どこの山でも採れるような珪砂や粘土をベースにしながらも、特殊な触媒を用いた高温焼結技術により、ダイヤにも匹敵する絶縁性と耐熱衝撃性を獲得。これにより、高電圧をロスなく火花へと変えることが可能になる。


「高耐久度」のエンジンがもたらす戦術的優位


この新素材点火プラグの量産により、日本の航空エンジンは劇的な進化を遂げた。


全開運転の常用化: 以前ならエンジン焼き付きや失火を恐れて短時間しか出せなかった「離昇出力」を、長時間維持することが可能に。


低質燃料への適応: 添加剤技術と合わさり、不安定な燃焼下でも確実に着火。エンジンの「息継ぎ」を完全に追放しました。また、高高度の空域における性能も改善される。


整備性の極致: 「プラグ交換」は前線の整備兵にとって過酷な日常でしたが、新プラグは一度装着すれば数百時間は点検不要という、戦場での「放ったらかし」を許容するタフさを誇りました。


機能燃料添加剤の精錬


さらなるブレイクスルーは、燃料の質そのものを変えた「特殊添加剤」の技術でした。


当時の日本軍が直面していた低オクタン価燃料は、エンジンに異常燃焼を引き起こし、出力を制限する大きな要因となっていました。しかし、《帰還艦隊》がもたらした化学配合による添加剤は、この弱点を一掃しました。


アンチノック性能の飛躍: 粗悪な燃料であっても、添加剤を加えるだけでオクタン価が擬似的に引き上げられ、エンジンは設計本来の、あるいはそれ以上の高出力を発揮しました。


カーボン堆積の抑制: 添加剤に含まれる洗浄成分がシリンダー内部をクリーンに保ち、エンジンの「息継ぎ」を解消。未整備の戦場において、信頼性はもはや「祈るもの」ではなく「計算された数値」となった。


新人操縦士にとって、エンジンの信頼性は命そのものでした。素直な操縦性の機体に、決して止まらない心臓が備わった。この圧倒的な安心感が、彼らの練度向上を加速させ、これまでの日本軍には存在しなかった「大胆な低空侵攻」や「長距離進出」を可能にする精神的な支柱となった。

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