Японский чёрт (ヤポンスキー・チョールト) 悪鬼・羅刹 2-2 満州奪還・ソ連軍包囲殲滅作戦:『回天・通遼作戦』
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満州奪還・ソヴィエト軍包囲殲滅作戦 『回天・通遼作戦』
1945年9月。瀬戸内海の穏やかな海風が吹き抜ける呉海軍鎮守府。
今、最高機密たる大作戦会議は、赤レンガ造りの鎮守府庁舎二階の大会議室で執り行われていた。
磨き上げられた寄木細工の床に、天井の巨大なシャンデリアが柔らかな光を落としている。気高く重厚なマホガニーの長机の上には、満洲全土を覆い尽くすかのような巨大な軍隊の動きが、青い矢印で幾重にも描き込まれた大型地図が堂々と広げられていた。
大きく開け放たれたガラス窓の向こうには、陽光を浴びてキラキラと輝く瀬戸内の海原と、出撃の刻を静かに待つ艦艇の雄姿が一望できる。この圧倒的な安定的空間こそが、現在の日本軍の優勢と確固たる自信を象徴していた。
掛井道真大将と武田五郎総参謀長が策定した、満州奪還・ソヴィエト軍包囲殲滅作戦――『回天・通遼作戦』の最終会議。
室内には、すでに洋上で作戦行動に入っている新・連合艦隊の面々を除く、日本軍の至宝たる将星たちが居並んでいた。
沿海州から北満州を突くべく本国から集結した北方本国軍司令官・伊勢神忠雄中将。そして、フィリピンの地獄を生き抜き、高速飛行艇で瀬戸内海へと堂々たる帰還を果たした南方軍の歴戦の指揮官たち。彼らの顔に陰りはなく、窓から差し込む陽光を受け、闘志をみなぎらせていた。
■ 作戦概要
ソヴィエト軍の兵站線を物理的に切断し、満州全土に拡散したソヴィエト三方面軍を通遼周辺に追い込み、北方軍・南方軍・関東軍残存部隊による三方からの同時打撃で完全殲滅する。
通遼は長春から西へ300キロ離れた松遼平原の西の縁、ホルチン(科爾沁)草原と「黄金帯」西遼河沖積平原にある。
1. 北方本国軍:東・北正面「背後切断兵団」
司令官:伊勢神 忠雄 中将
進撃経路: ウラジオストク周辺への強襲上陸を皮切りに、沿海州から北満州へ進出。
任務: 東部から進攻した第一極東方面軍、および北部からの第二極東方面軍を「追撃」という形で背後から襲い、シベリア鉄道に繋がる兵站線を完全に封鎖。敵を南西(通遼方面)へと追い落とす。
(掛井構想:東正面・北正面の補給断絶)
* 進軍 ウラジオストク上陸後、沿海州の鉄道の要衝を破壊、中ソ国境を遮断。
* 武田の具体策 シベリア鉄道の極東方面、ハバロフスク橋の重要橋梁を戦略爆撃機部隊で破壊する。中央、東清鉄道の重要地点ハルビンを空爆後、空挺部隊と特殊部隊(横一特)で空挺作戦で占領。第一・第二極東方面軍、ザバイカル方面軍の弾薬補給を物理的に停止させ、彼らを「陸の孤島の飢えた軍隊」に変える。
* 第一段階:拠点の剥離と海上の沈黙
作戦は、まずソヴィエト軍の「手足」を切り落とすことから始まる。
ハルビン占領
北満の心臓部であるハルビンを奪還。これにより、ソヴィエト軍の北満における指揮系統と鉄道網を分断する。
ウラジオストク占領と赤軍海軍撃滅
太平洋艦隊の母港であるウラジオストクを陸海から強襲。ソヴィエト極東海軍を海に葬ることで、大陸への海上補給と、海路による撤退を完全に封じ込める。
2. 南方軍:西正面「退路遮断兵団」
司令官:掛井 道真 大将 / 総参謀長:武田 五郎 大佐
進撃経路:旅順、大連から上陸後、通遼方面へ北上。続けて第八方面軍 今村均大将によって、天津へ上陸し、南方軍本隊の西側から進軍。北京、天津へ迫る共産党軍を殲滅する。
任務:最も精鋭とされるソヴィエト後バイカル方面軍の背後を突き、外蒙古方面からの補給路を断絶。敵の西への退路を断ち、東(通遼方面)へ圧迫する。
(掛井構想:バイカル方面軍の退路遮断)
* 進軍 旅順、大連へ上陸後、北上し通遼に共産党軍を押し込む。
* 武田の具体策 新太平洋艦隊の砲撃、艦載機、基地航空隊、上陸軍によって旅順、大連を占領。最前線の平地に工兵隊が臨時滑走路を作り、海軍、空軍の航空機隊のよる「反復爆撃」を計画。後バイカル方面軍の機甲部隊に対し、燃料集積所を徹底的に叩くことで、敵を通遼へ追い込む。
第二段階:南の門の閉鎖
次に、ソヴィエト軍の「心臓」である不凍港を奪い返す。
旅順・大連占領
シベリア鉄道の終着点であり、ソヴィエト軍の巨大な兵站基地と化していた遼東半島を制圧。これにより、南からの増援と物資の流入を完全に遮断する。
3. 関東軍残存部隊:中央「鉄床部隊」
位置:朝鮮国境付近および満州中央部の要塞地帯。
任務:南北から追い込まれてくるソヴィエト軍を正面から受け止め、その進撃を停止させる「鉄床」の役割を担う。
(掛井構想:敵主力を通遼へ誘引)
* 任務 戦力の立て直し後、ソヴィエト軍を通遼周辺の湿地と平原が混在する地域へと猛烈な攻勢を行う。
* 武田の具体策 徹底した電波封鎖と偽情報の流布。ソヴィエト軍に「日本軍は大攻勢をかける」と積極的に発信させ、敵全力を一箇所に集中させる。
第三段階:通遼への「追い込み」
拠点を失い、補給を断たれたソヴィエト軍と共産党軍の残存部隊には、退路が一つしか残されないよう、意図的な「穴」が作られた。それが通遼であった。
「ハルビンから、ウラジオストクから、そして旅順から。あらゆる方向から圧力をかけ、奴らをこの『共産主義者を裁く処刑場』へと押し込む」
掛井大将の指が、地図上の通遼を叩いた。
■ 最終決戦:通遼包囲陣
掛井が描き出した必勝の図面は、広大な満州平原の中央に位置する通遼を巨大な「処刑場」にすることであった。
包囲網の形成:
北から: 伊勢神中将率いる北方本国軍が、ソヴィエト軍の頭上を押さえる。
南から: 掛井大将率いる南方軍精鋭が、敵の腹下をえぐり取る。
東から: 関東軍残存兵力が、死に物狂いの反撃で敵を押し戻す。
「敵は数に頼り、その歩みを速めすぎた。今や彼らの背後は空虚であり、喉元は我々の目の前にある。北方と南方の力を合わせ、この満州の地を赤軍の墓場とせよ。通遼にて、我らは勝利する」
最終局面:三軍統合包囲網
通遼に押し込められた敵勢力を待ち構えるのは、日本軍が大陸に展開する全戦力であった。
武田総参謀長は、決定事項を確認するような口調で付け加えた。
「北方本国軍、南方軍、そして関東軍。三方向からの包囲が完成した瞬間、通遼は巨大な圧力釜となります。補給のない敵軍に、冬を越す力はありません。我々はただ、図面通りにその円を閉じるだけです」
二人の視線が、地図上の一点、通遼で重なった。
そこは、かつてソヴィエト軍が勝利を確信して通過した通過点であり、今や彼らにとっての巨大な袋小路となろうとしていた。掛井の放つ重厚な威圧感と、武田の持つ冷徹な知性が、通遼という名のだれも抜け出せぬ特異点で火花を散らす。
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掛井大将は居住まいを正し、居並ぶ指揮官たちの顔を一人ずつ見据えた。
ウラジオストクへ進撃する伊勢神中将たち。
大連・旅順そして、天津・北京へ迫る敵を圧殺せんとする南方軍の将星たち。
敵の心臓部へ向けて放たれる大東亜の、いや、世界の情勢を完全に塗り替える逆撃の咆哮。その火蓋が、今まさに切られようとしていた。
掛井は深く息を吸い込み、大会議室の壮麗な天井を震わせるような、低く重厚な声を放った。
「諸君、では始めよう」
一瞬の静寂の後。
窓ガラスを激しく震わせ、呉の海原さえも揺るがすような、地鳴りのごとき唱和が炸裂した。
「――応ッ!!!」
陸海軍の垣根を越え、南方と北方の意志が完全に一つとなり、巨大な鉄槌と化した瞬間だった。
会議は終わり、命令は下った。陽光溢れる呉の地上で産声を上げた『回天』の奔流は、これより広大な大陸へ向かって、容赦なく解き放たれるのである。
Японский чёрт (ヤポンスキー・チョールト) 悪鬼・羅刹 終




