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第三幕

「君は、我々、裏野ハイツの住民の秘密を知りすぎてしまった」

「知ってしまった以上、生かしておく訳にはいかないんだ。悪く思わないでね」

「赦せないことをしてくれた。この怒りは万死に値する」

「誰にも言いません。せめて、命だけは」

「せめて気が付いていない振りをしていれば、幸せだったものを」

「恨むなら、己の好奇心を恨むんだね」

「これより、二〇三号室の鼠を駆除する」

「ひぃ。許してくれぇ」

  *

「いかがでしたか?」

「面白かったよ。ねっ?」

「作り物の世界だと理解していながら、つい、のめり込んでしまった」

「お楽しみいただけたようで、光栄に存じます。また、お越しください」

  *

「伏線となる出来事が随所に鏤めれていて、最後に回収されるところが爽快だったな」

「本当。住人がカルト教団の仲間で、大家さんが教祖だとはねぇ」

「美味しい話には、裏があるものだからな」

「公園でお婆さんが話しかけてきても、それが宗教勧誘だとは思わないよ」

「パンフレットを持ち歩いてる訳でもなく、怪しい商品を売りつける訳でもないと、ただ話し相手が欲しいだけに思うのが自然だ」

「お年寄りだから、甘く見てしまうところもあるもんね」

「一〇一号室の会社員も、一〇三号室の夫婦も、どこにでも居そうな雰囲気だった」

「傍目には幸せそうなのに、とんでもない闇を抱えていたよね」

「まぁ、あとで思い返せば、いくつも疑わしい点が見付かるが」

「深く気にしてたら、人間不信になってしまうよ。ひょっとしたら、このマンションにも」

「やめろ。縁起でもない」

「心配しなくても良いのに。突然いなくなったら、天井を剥がすように伝えるよ」

「主人公と同じ憂き目に遭って堪るか」

「僕も、勘弁して欲しいよ。でもさ、クライ・マックスの私刑は、鳥肌物だったよね」

「臨場感が半端なかったな。口の中に、本当に銃を突きつけられてる感覚がした」

「お隣さんが殺し屋だったとはねぇ。もしかしたら、この壁の向こうにも」

「隣は、専門学校の女子学生だ。美容師を目指してるから、鋏は持っても、銃は持たない」

「学生というのは、昼間に世を忍ぶ仮の姿。しかし、夜になると」

「他人の家を、怪談仕立てにして楽しむな。ワッ」

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