第二幕
「以上で、ブイ・アール機器の使用上の諸注意を終わります。もし、プレイ中に体調不良を感じましたら、決して無理な我慢をせず、速やかにその旨を伝えてください。すぐに私が参ります。ここまで、何か質問はございますか?」
「僕は無いよ」
「俺も、特には」
「そうですか。それでは、仮想現実の世界を堪能ください」
*
「裏野ハイツ、ですか?」
「そうなのよ。住み始めてから、かれこれ、もう二十年は経つかしら。時が過ぎるのは早いものね。まだ孫が、こんなに小さかった時分だから」
「これが、そのお孫さんですね?」
「そう。まだ赤ん坊のときの写真なんだけど、可愛いでしょう? 生意気な時期もあったけれど、もう、すっかり大きくなって、立派になったものよ。ちょうど、いまのお兄さんと一緒ね」
「いえいえ。それより、空き部屋があるという話ですが」
「そう、そう。お家探しの話だったわね。歳をとると、物忘れが酷くなるから嫌ねぇ。記憶や貯金は減るのに、診察券や出費は嵩むばかりで」
「年金暮らしというのも、大変ですね。家賃や間取りのほうは?」
「大家さんとは昵懇だから、いろいろと知ってるのよ。お家賃は四万九千円で、いまなら敷金は要らないそうよ。お部屋は、どこの部屋も同じで、板間が二部屋。お風呂場とお手洗い、それから洗面台が別々にあるの。奥のお部屋には、一人暮らしに充分な収納があるし、ベランダや駐車場もあるわ。洗濯機を置く場所が無いんだけど、近くにコイン・ランドリーがあるから、問題ないと思うの。どうかしら?」
「悪くない条件ですね。事前に拝見することは、可能ですか?」
「もちろんよ。もう三月も終わりに近付いているのに、お家が見つからないんじゃ、四月からのお勤めに差し支えるもの。まだ、お時間はお有り?」
「大丈夫です」
「そう。それなら、このままお家を見に来ると良いわ。実は、鍵を預かってあるの。どうかしら?」
「それは助かります」
「それじゃあ、ご案内するわね。こちらよ」




